利神山への登山自粛を求める標識を見たのは2007年のことだったが、それは山頂に広がる利神城跡の石垣が崩壊の危険性があるためだった。佐用町の名所としてそのうちに修理されるものと思っていたのだが、どうもその便りは聞かなかった。14年経って2021年春を迎えたとき、山頂の本丸跡に立つ桜を見たくなった。登山道がまだ通行禁止なら、封鎖をされてない限りは自己責任で登ることにした。向かったのは3月の最終日のこと。春爛漫の暖かい日だった。但し空は快晴ながらも少し黄色っぽくなっていた。どうやら黄砂の影響が少しあるようだった。宿場町平福に着くと、平日であることでもあり、道の駅「宿場町ひらふく」の駐車場に車を止めた。道の駅にも桜の木があり満開だった。その道の駅には展望台があり、その上に上がってみると利神山がすっきりと眺められることになった。山頂の桜も見えており、そちらも期待通りに満開のようだった。石垣はと見ると、どうやら補修されているように見えた。始めに平福の景観地区へと入った。以前よりも更に町並みは整えられてきているように見えた。佐用川に架かる天神橋を渡ると、川沿いの土蔵風景を眺めた。そこも以前よりも垢抜けしているように見えた。智頭鉄道の方向へと農道を進むと、その線路の下を潜ることになるが、そこは以前のままにゲートがあり、まだ通行止めのようだった。但しゲートには鍵はかかっていなかったので、スムーズに通過出来た。ゲートの先には一軒の民家があるのだが、民家は廃屋になっていた。その廃屋の前を通って線路沿いの小径を進むと、自然と登山道に入った。登山道は以前のままで、荒れた感じは全く無かった。おかげでごく気楽に歩いて行けた。最初に佐用川の風景を楽しめた。尾根筋に入ると真っ直ぐ山頂へと向かうようになり、途中パイプで作られた階段を登ると、見覚えるある石室が現れた。周囲は植林地になることもあった。その尾根の中で見覚えのある石室になった祠が現れたが、中を覗くと何も無かった。その先は尾根の傾斜が少し増してきたが、ゆっくり登れば問題無かった。周囲はいつしか自然林になっており、その落ち着いた雰囲気の中で山頂へと近づくと、城跡に入ったようでパイプの階段が現れた。それを登った先で一気に山頂風景が現れた。誰もいないと思っていたのだが、石垣には足場が組まれて大勢の人が修復作業にかかっていた。これでは山頂に立つのは無理かと思えたが、作業者に石垣には近づかないように山頂に立って桜を見たいと伝えると、あっさりOKとなった。但し本来は入山許可証が必要のようだった。幸いに登山道は石垣のそばを通っていなかったので、作業のじゃまにならないように歩いて、無事山頂到着となった。山頂となる本丸跡には作業者はおらず、以前のままの長閑な風景で、桜はまさに満開だった。その桜の木の下で早めの昼休憩とした。その休憩後は360度の展望を楽しんだ。そして20分ほど休んで12時になったタイミングで下山開始とした。修復作業も昼休憩に入ったことで行われておらず、誰もいなくなった城跡を通り抜けて尾根道へと入った。そして登山口へと戻って行った。
ところで石垣の修復作業をしている人に工事期間のことを聞いたのだが、はっきりとした返事は無かった。その石垣のことだが、麓から見たときは新たに石垣を積んでいるように見えたのだが、近くで見ると違っていた。新しい石垣に見えたのはバラスが入った袋で、それが積み上げられていた。どうやらその上に更に表土を載せるようなので、工事はまだまだかかるのではと思えた。
(2021/5記) |