2008年12月に入っての最初の週末に宍粟市南部の山、宮山に登ったのだが、その山頂近くからは播磨丘陵が広く眺められた。その展望の中にきらりと光って見えたのが大型放射光施設のスプリング8だった。そのスプリング8に目を凝らすと、後にすっきりとした山が見えていた。方向からするとどうやら白旗山のようだった。白旗山はどうもイメージの掴みにくい山だったのだが、その整った姿を見て、急に登ってみたいと思えてきた。それと同時にもう少し近くからも眺めてみたいとの気持ちも起きてきた。そこで、まず白旗山を間近で見る山に登った後、白旗山を登ろうと決めた。そこで「二木」の地形図を開いて目にとまったのが、白旗山の東に対峙する四等三角点(点名・大杉野)を持つ無名の山だった。普通なら見過ごしてしまいそうな特徴に乏しい山なのだが、白旗山を見る山として考えると、木々にじゃまをされなければ、尾根を歩いている間、けっこう間近に白旗山が眺められそうだった。その376mピークを登ると決めると、次はどこから登るかだったが、低山だけにどこからでもアプローチ出来そうだった。そして駐車地点の事も考えて西麓の野桑神社からが適当と判断した。
向かったのは年の瀬も近づいてきた23日の天皇誕生日だった。国道373号線を北へと走り、上郡橋の交差点で県道28号線に入る。左手に白旗山に続く尾根を眺めながら走っていると、富満高原に向かう道が分かれた。その県道449号線に入ると左前方に白旗山を、右前方に376mピークにつながる尾根を見ることになった。車道は二つの山の間を抜けるのだが、二つの山が接近し出したとき、右手に野桑神社が現れた。神社の前が少し広い路肩スペースとなっており、そこに車を止めた。上空はまずまず晴れており、白旗山が西に明るく見えていた。まずは尾根を目指して、野桑神社の裏から適当に登り始めた。一帯は雑木林で適度に空いており、下生えは少なかった。おかげで無理なく登って行けた。人に歩かれることが少ないのか、足元には落ち葉が積もっており、鄙びた山ならではの穏やかさがあった。少し急な所もあって、木に手をかけたりしながら登って行く。振り返ると、木立を通して本村集落が見えていた。20分ほど登って尾根に着く。地図を見ると近くに346mの標高点の付くピークがあり、その位置がこの山では白旗山に一番近そうだった。少しは白旗山が見えるかと、近づいてみることにした。尾根には小径が続いており、ごく普通の感じで進んで行けた。そのピークに着くと、少し木が茂っていたが、白旗山の山頂が覗いていた。木に登れば今少し良く見えるかと手頃な木に足をかけると、山頂部のみだがすっきりと見え、その姿を目に焼き付けた。そこからは少し戻って、北東に向かう尾根に入る。尾根には変わらず小径が続いており、アップダウンは少ないとあって楽に歩いて行けた。350mピークからは尾根の方向は北西に変わるが、その位置からは南向かいの尾根が眺められた。尾根を少し南へと下ると更にすっきり見えて、その南向かいの尾根で一番高いピークはどうやら三濃山のようだった。北西へと向きを変えた尾根を歩き出すと、足元にシダが見られるようになり、次第に足元を隠すようになった。ただシダは膝丈までで、小径もはっきりしているので、少し押しのける感じで歩いて行けた。尾根は次第に北向きに方向を変えると、左手に木立を通して白旗山が覗くようになった。尾根が鞍部へと緩やかに下り出したとき、シダ帯を抜け出した。そして地表が広く現れた所に出た。そこは木々も疎らになっており、その先にすっきりと白旗山が姿を見せていた。両翼を伸ばした白旗山は堂々としており、まさに絶好の展望地だった。その願い通りの眺めに足を止めずにはおられず、そこで昼休憩をすることにした。少し冷たい風があったが、陽射しを受けていると気にならず、白旗山の姿を飽かず眺めていた。昼食を済ませると、後は尾根なりに登って三角点ピークに向かうだけだった。もうシダは無く、ごく自然な雑木林が周囲を取り巻いている。その木々を通して、山頂となる三角点ピークが右前方に見えて来た。山頂が間近になると尾根は直角に曲がり、最後に急坂があって山頂に着いた。その山頂がけっこう寒かった。それまでも少しは冷たい北風を受けていたのだが、そこはまともに受けることになり、パートナーはあわてて南面側に逃げてしまった。こちらはその冷たい風を我慢しながら、山頂の佇まいを眺めることにした。三角点回りに少しシダが見られたが、全体として灌木林の印象だった。その灌木に南側は閉ざされていたが、北は木々の空いた所もあって、少しは展望があった。北西に見えるピークは船岩のようで、北にはなだらかな尾根が広がっていた。目立つピークも無く、一番高い辺りが点名・楠山のあるピークのようには思えた。その山頂からの白旗山はと言うと、もう木立を通して輪郭を見るだけだった。この風景を寸時眺めていたが、身にしみる寒さには勝てず、こちらもパートナーのいる南側の陽当たり場所へと逃げ込んだ。一休みを終えて後は下山だったが、まずは東へと尾根なりに歩き、その先から始まる南東尾根を下って行くことにした。尾根道は続いており、これまで歩いて来た道と同様に、さほど下生えも無く、けっこう歩き易いと言えた。山頂を越えたことで東の展望も現れ、北東に大型放射光施設スプリング8がけっこう大きく見えていた。南東尾根は北風を受けることもなく、陽射しを浴びているとうっすらと汗さえ浮かんできた。ときおりすっきりとした展望もあり、三濃山の尾根が良く見えたりもした。鄙な山にしては歩き易く、そして展望も得られて、ちょっと得をした気分だった。その気楽さが尾根なりに何も考えずに歩くことになった。結果として南東を意識して下らなければならないところを、南へと下って急尾根に入ってしまった。気が付いたときは、目的の尾根は少し離れて見えており、戻るには面倒な距離になっていた。そこでその先はどうなるのか分からなかったが、小さな山でもあるのでそのまま下ってしまうことにした。急坂のままに植林地へと入り、最後は沢のそばに下り着いた。その沢がヤブであれば面倒だったのだが、里山は有り難いもので、小径がその沢に沿って続いていた。おかげでごく気楽に鞍居川そばに出ることが出来た。中村集落に入ると、そこには近畿自然歩道が通じており、その自然歩道を歩いて県道449号線へと入る。もうそこからは駐車地点までは500mほどの距離となっていた。
(2009/1記)(2014/7改訂) |