暮坂峠から北に延びる尾根については香寺町史「村の記憶」に詳しく書かれているが、尾根の北端のピークは地形図では無名ながらも、地元の香寺町では棚原山と呼ばれており、恒屋地区から登山道が続いている。この棚原山には過去に二度登っていたが、山頂から北の坂地峠へと続く道は歩いていなかった。そこで恒屋コースの登山道と併せて周回で歩くことにしたのは、2012年3月の第一土曜日のことだった。この日の空は薄ぼんやりとしており、北部の天気も悪そうだった。そこで姫路市内で軽いハイキングを楽しむことにした。昼どきの2〜3時間程度でと考えたとき、棚原山を周回コースで歩くことを思い付いたものである。
姫路市南部は陽射しが現れていたが、北に向かうにつれて雲が増えてきた。雲は薄ぼやけて形のはっきりしないもので、小粒な雨をぱらつかせたりしていた。塩田温泉に入り、塩田交差点で右に折れて、温泉街の細い車道に入った。小さな温泉なのですぐに通り抜けると、その先は林道塩田線で、上り坂が始まった。坂地峠に出るとそこに登山口標識を見たが、それを横目に香寺町側に少し下ったとき、路肩の広くなった所が現れた。峠付近で車を止めたいと考えていたので、そこに駐車とする。その頃には雨はぱらつかなくなっていたが、空はガスに覆われたようにすっかり灰色だった。まずは林道塩田線を香寺町側へと下って行くと、ツボサカ精工のそばを通って中村集落へと入って行った。その集落内を通って恒屋地区に入ると、「棚原登り口」の標識が現れた。それに従って再び山の方へと近づいて行く。上り坂が始まって、方向は南となった。程なく墓地が現れて、そのそばより右手の山中の方向に小径が分かれた。よく見ると小径に少し入った位置に標識があって、「棚原1.8km」と書かれていた。その辺りは雑草が茂っており、ちょっと見落としそうだった。小径が棚原山への登山道だった。登山道は始め倒木があったりしてヤブっぽい感じだったが、登るにつれて歩き易くなった。送電塔の建つ位置を過ぎると、ごくなだらかな道として続いた。「自然歩道」と名も付いていた。歩くうちには陽射しが現れることもあって、そのときは程良い暖かさとなった。登山道の傾斜が増して、そこを登りきると尾根に出た。そこで八葉からの道と合流した。そこから山頂まで400mだった。北西方向へと登って380mピークを越す。そして少し下って登り返した所が山頂だった。石造りの小さな祠がある山頂は、笹が広く刈られており、休むのに手頃な感じになっていた。ちょうど陽射しが現れて、暖かく過ごせることになった。ただ残念なのはこの日の視界で、春霞なのか薄ぼんやりとした視界で、風景を楽しむとはいかなかった。また以前よりも周囲の木立が生長しており、眺望は狭まったように思えた。まずは陽射しを受けながら、のんびりと昼どきを過ごした。山頂で30分ほど休んだ後、北へと下山を開始する。こちらは少し幅のある登山道で、始めは落ち葉の積もった道だった。その北コースでは北の展望を少しは期待していたのだが、むしろ展望は悪いと言えて、木立の隙間から大倉山が見える程度だった。下るうちにごく普通の山道となり坂地峠に下り着いた。30分とかかっていないので、この北コースが棚原山への最短コースと言えそうだった。その坂地峠から駐車地点までは1分の距離だった。昼休憩を除くと、ざっと2時間程度のミニハイキングだったが、自然歩道の雰囲気の良さと歩き易さ、また山頂の優しげな佇まいの中で過ごせたことで、良いハイキングだったと思いながら峠を後にした。
(2012/3記)(2020/10改訂)(2023/6写真改訂) |