多可町の加美区(旧加美町)は千ヶ峰を始め、篠ヶ峰、竜ヶ岳と700〜1000mの山に囲まれて、そちらの山々に目が向きがちになるが、その前衛峰として500m以下の手頃な山も幾つかあり、軽い登山も楽しめる地域である。2008年10月に入った最初の土曜日に大井戸山を登ったが、下山を終えたときは12時と午前で終わってしまった。そこで午後も軽い登山を楽しむことにした。持っていた地図は「丹波和田」で、大井戸山の周辺を眺めたとき、大井戸山の南に見える410mピークが手頃そうに思えた。それが打越山だったが、山頂への道は書かれておらず、どのルートを登るかは地形で判断するしかなかった。そこで一番緩やかな南からの尾根を歩くことにした。その麓の箸荷(はせがい)集落に入ると、感じの良い神社の前に出た。地図ではその神社の辺りから山裾に取り付くのが一番無難そうだった。その神社は大歳神社で、駐車スペースが神社の前にあり、そこに車を止めた。神社の境内に入ると、細かな粒の砂利が敷き詰められており、そこにきれいに箒目が付けられていた。その神社の裏から山裾に取り付いた。特に小径は見えないものの植林が主体の木々は空いており、下生えも少なく適当に登って行けた。一帯には雑木に混じって点々と杉の大木が見られたが、多くの木で樹皮が剥がされていた。南尾根へと近づくと、その尾根にコンクリート製の建物が見えてきた。それは配水池で、そこに立つと、別の方向からちゃんとした登山道の付いているのが分かった。そこからは細々とながら尾根道が続いていたので、後はその小径を辿るだけだった。風が緩やかに吹いており、その涼しさの中で緩やかな尾根を登って行くのはいたって気楽と言いたかったが、残念なことにクモの巣が多く、それを枝で払っていないとすぐにひっかかった。また雑木に切れ目が無く、展望は現れなかった。山頂が近づくと周囲の木々は雑木から植林へと変わり、そのまま山頂だった。一帯の植林は枝打ちされており、手入れは悪くなかった。その植林に囲まれた山頂で目を惹いたのは三角点で、無傷の三等三角点(点名・打越山)は新しいのか大理石の艶やかさを失っていなかった。その山頂も展望は開けておらず、一帯を少し探ってみたが、植林の間を通して近くの尾根が見えるに止まった。その特徴の無い上に展望も無いとあって、ちょっと期待外れだったが、こういう山として納得するしかなかった。それでも少しは展望を得ようと、山頂を東のなだらかな方向へ少し歩いてみた。結果としては少し空いた所より南は妙見山辺りが、北は間近に大井戸山の山肌が眺められたが、すっきりとした展望は現れなかった。下山は登ってきた道を引き返すことも考えたが、地図を見ると北の方向の鞍部に破線路が書かれていたため、その道で麓に下りることにした。その鞍部につながる尾根に入ると、特に小径は無かったが適当に下って行けた。そして鞍部に着いて小径に出会い、その道を西へと歩いて行った。そのまま麓に下り着けるものと安心していたのだが、どうも道を知らぬ間に外したのか、不確かになってしまった。それでも一帯の木々は空いており、適当に麓を目指すと、あっさりと墓地に出た。そこからは小径があって、無事杉原川沿いの車道に出た。後は車を置いている箸荷集落へと、ちょっと残暑を感じる中、車道を歩いて行った。車道からは打越山が良く見えており、それを見ながらこの登山はピークハントで終わってしまったと、少し物足りない気持ちが起きたのは否めなかった。
(2008/10記)(2021/12改訂) |