石堂丸山は県南西部にあって、一帯は播磨自然高原として開発され、広々と別荘地が広がっている。国道2号線からも、その別荘の風景を目にすることが出来る。別荘地なので総てが個人の所有地として区画されていると言うことで、なかなかその中にある石堂丸山を訪れる気は起きなかった。ただ石堂丸山と言う名には興味があった。そこで一度は山頂に立ってみるかと軽い気持ちで向かったのが2004年1月10日のことだった。訪れるとすれば車道が山頂そばまで付いているので、ごく簡単に登ることが出来るが、それでは味気ないので、違ったアプローチは無いかと考えて決めたのが、岡山県側の三石からのルートだった。地図を見ると石堂丸山の南麓に「深谷(みたに)の滝」があり、そこから続く尾根を登って行くことにした。備前市の名所となっている深谷の滝は一帯が公園となっており、そこの駐車場に車を止めた。滝はすぐそばに見えていたが、冬場とあって水量はいささか乏しく、寒々とした姿だった。手頃な道は付いていないかと辺りを見ると、うまく滝の右手に続いていそうな小径が見えたので、それを登ることにした。道は思った通り滝の上に出て、その先も細々と続いていた。一部でシダが道を隠していたが、歩き難いほどでも無かった。道なりに登ると右手の尾根に向かい出したので、そこで山頂方向を目指して真っ直ぐに山肌を登ることにした。少しヤブコギ気味となったが、無理なく登って行けた。やがて傾斜が緩くなると、程なく山上の別荘地の道路に出た。少し歩くと石堂丸山の丸やかな山頂部が見えて来た。その山頂近くまで家が建っていた。安心してそちらに向かって行くと、道は次第に下り坂になってきた。行き着くか不安になり、そこで庭に出ていた別荘の人に聞いてみると、やはり違っていた。別の道から遠巻きに近づくのが正しいようだった。地図を見ても山上には縦横に道が走っており、ずいぶん分かり難かった。私有地のため適当に山中に入る訳にもいかないので、教えていただいた通り歩くことにした。一度戻って西側から近づくと、山頂近くではラセン状に道は付いており、山頂とは数十メートルと離れていない位置まで続いていた。その終点からも小径が付いており、道路終点から1分ほどで山頂に着いた。山頂はやや灌木が茂っており、周囲は雑木が取り囲んで展望は無かった。ただその中心の二等三角点(点名・三石)は傷一つ無いきれいのものだった。辺りもゴミは無く、訪れる人の少ないことを窺わせた。まずはその静かな山頂でひとときを過ごした。なお、山頂の少し南に開けた所があり、そこに一体ぽつんとあった石仏が、陽光を存分に浴びていたのが印象的だった。展望に関しては車道から雑木の切れ目を通して時々眺められたが、この日はモヤの強い空で、薄ぼんやりとしか見えず、遠くはモヤに溶け込んでいた。ところでこの別荘地帯については、少し寂れた印象を受けた。所有者の名前だけで家屋の建っていない所が半分ほど占めているように思われたし、廃屋になっている家を何軒も見た。ただ新たに建てられている家も数軒は見かけた。下山は登りで歩いた谷とは西隣となる谷を下った。ケモノ道程度の道が続いていたが、その途中で小ぶりな滝と出会った。深谷の滝よりも更に水量は少なかったが、この滝の中ほどを一度横切ることになり、水量の多いときは結構スリルがあるのではと思われた。そのまま下って行くと、やがて深谷の滝の上に出て、登りで歩いたコースに合流した。
(2004/1記)(2022/2写真改訂) |