大撫山は車道しか歩いておらず、ハイキングしたとは言えなかった。その大撫山をハイキングコースで紹介しているのがガイドブック「佐用ハイキング」だった。その紹介コースを歩こうと向かったのは2024年6月下旬、梅雨の晴れ間と言える日で、雲は多いものの青空の広がる日だった。ガイドブックに従って、大木谷にあるゴミステーションの駐車スペースに車を止めた。その駐車地点の近くに「大撫山」の標識があり、スムーズにハイキングコースに入った。民家の間を抜ける小径を歩いて山中へと入って行く。始めは愛宕山への登りだった。釈迦堂が現れたが、朽ちようとしていた。登山道は緩やかな上り坂だったので易しく登って行けると思っていたところ、途中から倒木が増えてきたため、けっこう歩き難くなってきた。愛宕山の山頂は樹林に囲まれており薄暗かった。単なる通過点の感じで愛宕山を越すと、南へと緩やかに下った。程なく作業道に出ると標識に従って左手に向かった。暫く作業道を歩くも、標識に従うと作業道を離れて南へと斜面を登ることになった。植林地の斜面だったが、左手には笹ヤブが見えており、登るうちに笹ヤブが尾根筋にも広がってきた。その笹ヤブに突っ込むと、すぐに抜け出した。そこはもう山頂に近い所で、山頂に広がる西はりま天文台の一角だった。芝地を抜けると車道に出た。もうハイキングと言うよりも公園の散策だった。ごく緩やかな坂道を歩いて山頂到着となった。天文台は二棟あり、それぞれは北館と南館の名が付いていた。どちらの建物にも近い位置にピークがあり、そこに三等三角点(点名・大撫山)を見た。この日は大勢の小学生が見学に訪れており、どちらの建物も大賑わいだった。見学は自由だったので、小学生に混じって二館の内部を見学した。古い方の北館には口径60センチの望遠鏡があり、南館には「なゆた望遠鏡」の名が付く口径2メートルの望遠鏡があって、どちらも間近で眺めることが出来た。二つの建物で1時間ほど過ごすと、下山もガイドブックのコースを辿ることにした。天文台を巡るようにして西から南、東、そして北へと歩くと、管理棟のそばを通って宿泊施設のロッジのそばに出た。その先は作業道で、標識は田和坂峠を指していた。易しく歩いて行けると思っていると、作業道は次第に草ヤブになってきた。倒木も多くあり、どうやら手入れをされずに放置されているようだった。草ヤブ歩きは楽しいとは言えず、ただ道なりに歩いて行くだけだった。その作業道の草ヤブが減ってくると、往路コースに合流した。愛宕山の近くまで歩くと、愛宕山には向かわず作業道歩きを続けた。その作業道は林道に合流すると、乙大木谷へと向かうようになった。林道を下るうちに大木谷の棚田が眺められるようになった。町道に合流するとそこから駐車地点まで300mほどの距離だった。町道からも棚田風景は眺められ、集落と相まって日本の原風景を見る思いだった。
(2024/7記) |