白旗山山頂に植わる桜の木を見て、花の季節に一度訪ねてみたいと考えていた。三度目となる白旗山は、その桜を目指して2004年4月初めに訪れた。この日、白旗山の南登山口となる本村集落へと向かっていると、鞍居川沿いの桜並木は八分程度の咲き具合で、あと2、3日で満開を迎えそうだった。林道入口にある害獣除けゲートの手前に車を止めて、歩き始めた。沢沿いの林道は、足を慣らすのに適度な距離で、おそよ20分で林道終点となった。細野コースとの合流点となる峠に着くと、新しい道標を見た。来るたびに道も良くなっており、ハイキングコースとして整備されているようだった。そして山頂へと尾根歩きに移った。低山だけにすぐに山頂部が近づいてきた。登山道も城跡に相応しい雰囲気を持ってきた。辺りにはツツジの花がちらほらと見えており、中には満開に近いものがあり、尾根を彩っていた。もう遊歩道を歩いているような気楽さだった。ただ天気は下り坂なのが気がかりだった。歩き始めたときにはまだ青空の方が多かったのだが、どんどん雲が広がってきて、山頂が近づいた頃はほぼ曇天の空に変わっていた。そしてモヤが強くなっていた。櫛橋丸に立ったものの、近くの山でも輪郭程度しか見えなかった。そこで山上からの展望は諦めて、休まず山頂の本丸跡を目指した。林道終点の位置から30分ほどで山頂に着く。城跡らしく広場になった山頂には2、3人のハイカーを見るだけで、予想していたほどの賑わいは無かった。また十数本ある桜の木は、なるほど五分咲き程度とまずまずの咲き具合だったが、期待したほどの春の華やぎは感じられなかった。天気のせいもあるが、桜の木もどうも弱っているようで、全く花を付けていない木も何本か見かけられた。イメージしていたのは豪華に咲いた桜の木の下で大勢の人が花見をしている光景だったのだが、ちょっと違っていたことになる。暫くすると中高年の10人ほどのグループが着き、桜の木の下で車座になって花見を始めた。それでも桜の木が寂しいこともあってイメージほどでは無かった。その間にも空の雲は黒さを増し、今にも雨が降るのではと思えるほどになってきた。風も強くなって嵐の前触れの様相だった。グループもその空を見て、長居はせず下山してしまった。静かさの戻った山頂だったが、こちらも切り上げることにした。下山は櫛橋丸跡の尾根を通らず、尾根のそばを通るエスケープ道を歩いた。下山が終えて車のそばに戻ったときに、ぽつりと雨が降ってきた。車を走らせて上郡の町に入った頃には、はっきりとした雨に変わっていた。
(2004/4記)(2009/1改訂) |