2008年12月の登山は、徐々に白旗山に近づいていたようなものだった。12月の最初の週末に宍粟市の宮山を登ったが、その山頂そばからは白旗山がすっきりとした姿で見えていた。その姿に急に白旗山へ関心が向き、次は白旗山を間近で見ようと、東向かいの点名・大杉野を持つ尾根を歩いた。それが23日で、いよいよ白旗山の姿に魅了された。そこで仕上げとばかりに白旗山を目指したのは5日後の28日だった。その白旗山を登るのは四度目となるので、登山コースはちょっとひねって周回で楽しむことにした。登りこそ南東麓にある本村集落からのハイキングコースを歩くものの、下山は登山コースで無い北尾根を適当に下ろうと考えた。そこで駐車地点は東麓を流れる大冨川に近い位置にすることにした。
5日前と同じく県道28号線を本村集落の先で離れて、富満高原へ向かう道に入る。左手を大冨川が流れており、少し進むと川に架かる大和谷橋が見えてきた。その辺りは広い路肩スペースが続いており、適当にその一角に車を止めた。大和谷橋を渡って本村集落に入って行くと、近畿自然歩道に合流した。近畿自然歩道はそのまま白旗山へと向かうので、そこはまだ集落内の道だったが、もう登山コースに入ったようなものである。詳しい案内板も立っていた。本村集落を抜けると害獣除けのゲートが道を塞いでいたが、今は車が入っているようで、ゲートは開いた状態になっていた。その位置で近畿自然歩道の向きは北西となり、白旗山の西の谷に沿うようになった。空は雲の多い晴れで、5日前とほぼ似た空になっており、陽が現れると暖かく、雲に隠されると寒々とした。ゲートを過ぎても近畿自然歩道は車が通行出来る林道として続いていた。周囲は植林地だったり雑木林だったりと、ごく普通の里山の風景だった。次第に道は緩い勾配で登り坂となり、程なく林道は終わった。そこからは登山道となったが、少し石がごろごろとしており、歩き易いとは言えなかった。峠に着いて赤松側からの登山道と合流した。そこからは近畿自然歩道とは離れることになり、北東方向へ向かう尾根を登って行く。ようやく山登りの感じが出てきた。落ち葉の積もった所もあって、その風情は悪くなかった。まずはごく一般的なハイキングコースを登っているので、気楽なものだった。15分ほど登るともう山上の城跡に近づいた。北へと急坂を一気に登ると、城跡の一角、櫛橋丸跡に出た。そこは小さなピークと言える所で、北風を強く受けることになった。ちょうど陽が陰っていたこともあって、寒さがちょっと身にしみた。ただそこは少し展望があったので、一休みとする。
展望は西の方向が良く、そこにすっきりと見えていたのは船岩と八塔寺山だった。八塔寺山は近くからではその姿を掴みにくい山なのだが、ここからだと姿良く見えていた。その展望を楽しむ間に陽が射してきた。昼休憩は山頂の本丸跡でと考えていたのだが、そちらは誰か来ていそうに思えたため、静かなのを幸いにこの櫛橋丸跡で昼休憩とした。その昼休憩を終えて本丸へと向かう。少し下って二ノ丸跡へと近づく。空は徐々に青空が広がっているようで、陽射しの現れているときが長くなっていた。その冬の陽射しを受けて、二ノ丸跡に広がる雑木林が明るく照らされていた。目に優しい光景だった。本丸跡が間近になると、賑やかな声が聞こえてきた。着くと5,6人の学生グループが休んでいた。兵庫の低山としては珍しい光景だったが、それだけ白旗山がポピュラーと言うことだろう。その白旗山山頂は4年以上ご無沙汰していたが、久々に見る山頂は以前よりすっきりしている印象を受けた。どうやら少し木が切られたようで、東に広く展望が現れていた。北東に細い帯となって光っているのは播磨科学公園都市のスプリング8だった。そして南東には三濃山も見えている。他にも北東には櫛橋丸跡からも見えていた八塔寺山も眺められて、どうやら白旗山は展望の山に変わったようだった。その展望を楽しんでいる間に学生グループは下山して、静かな山頂となった。そして誰もいなくなったところで、改めて山頂の佇まいを眺めた。城跡らしく平らに開けた山頂は適度な広さで、そこに立つ桜の木を眺めていると、やはり城跡には桜の木が似合っていると思えた。それにしてもどうして名のある山には登頂記念のプレートを付けたがるのだろうかと、山頂のあちらこちらにあるプレートを見ての疑問だった。中には杭で立っているものもある。これが姫路城の本丸に付けられておれば当然ゴミとして処分されるのではと思ってしまった。ひとしきり静けさを楽しんだ後、下山に向かった。下山は三ノ丸から北へと延びる尾根を下って行く。登山道の無い尾根だったが、踏み跡程度で小径が続いていた。灌木にもさほどじゃまをされず下って行くと、送電塔のそばに出た。その先も尾根の小径は続いていたが、そちらへと下ってしまうと駐車地点とはかなり離れてしまうので、そこからは真東へと小さな尾根に入った。その支尾根にははっきりとした小径こそ見えなかったが、尾根の木立は空いており尾根なりにスムーズに下って行けた。ふもとが近づくとやや急坂となりシダ地も現れたが、特に煩わしくも無く下って、無事にふもとに下り着いた。やはり里山だけに最後は害獣除けフェンスを越えることになり、そして県道449号線に出た。後はその車道を歩いて駐車地点へと戻るだけだった。白旗山となるとなぜか登山道ばかり歩いていたが、他の尾根にも適度な歩き易さがあって周回コースとして楽しめることが分かったのは、この日の収穫だった。
(2009/1記) |