岡山県の和気郡、兵庫県の赤穂郡と佐用郡、その三つの郡が接する三郡境の近くに三角点ピークがあることは知っていたが、その名が空山であることを知ったのは、ガイドブックの「佐用ハイキング」を見てだった。名前を知ると登ってみたくなり、そこでガイドブックに紹介されている空山橋からのコースで訪れることにした。向かったのは2015年6月の第二土曜日で、雲が多いものの薄い青空の広がる日だった。国道373号線を北上すると、旧上月町円光寺で県道368号線に入った。県道の道幅は細く、車のすれ違いが漸く出来る程度だった。県道は秋里川沿いに続いており、その道路脇には点々と幟が立っていた。この先に花しょうぶ園があるようで、そこに誘う幟だった。それを目当にする車なのか、前後に車を見た。中才地区を抜けた先で現れたのが空山橋だったが、更に車を進めると、西新宿地区への道が右手に分かれた。その道路の先に花しょうぶ園があるのだが、予想通りに前後の車はそちらに向かった。こちらは更に直進し、左手に寝釈迦像が現れたのを見て、その前の広場に車を止めた。下山は少し先の岡山県境辺りに下りて来る予定だったので、寝釈迦像の位置がスタート地点として手頃ではと思えてのことだった。始めに空山橋まで県道を歩いた。その細い県道を通る車が意外と多かった。溜め池が現れると、その先が花しょうぶ園への分岐点だった。少し立ち止まっていると、兵庫側から来た車も、岡山側からの車も総て花しょうぶ園へと向かって行った。どうやらテレビか新聞に紹介されたようで、けっこうな人気ぶりと思えた。空山橋に着くと、渡った先で右手の荒れ地に入り、林道に出た。もう車の通行は無いようで、草むした林道だった。それが空山林道で、空山池まで通じているはずだった。林道は沢に沿ってごく緩やかな道として続いていた。季節がらウツギの花がよく咲いていた。進むほどに緑が濃くなってきて、森林浴の気分で歩いて行った。空山池に着いたときは、空山橋から30分近くが経っていた。空山池は少し大きめの溜め池で、落ち着いた佇まいを見せていた。林道は空山池の手前を通って更に西へと延びていたが、地図には描かれていなかった。その空山池の東側のピークが空山だった。空山は空山池との標高差は60mでしかなかったので、池から見る姿は単なる丘だった。その空山への道は池のそばからだったが、標識があったので簡単に分かった。登山道は以前からあったものでは無く、最近になって斜面を切り開いて作った感じがあった。少し登ると尾根を伝うようになり、三郡境からの道が合流して北へと向かうと、山頂への杣道が分かれた。その杣道に入ると、ほんの一登りと言った感じで山頂に着いた。山頂は三角点を中心に切り開かれているものの、周囲はびっしりと樹林が囲んでおり展望は無かった。昼どきになっていたことでもあり、その展望の無い山頂で昼食をとった。一息つけると次は歩いてきたコースを少し引き返して、三郡境への道に入った。そちらもごく緩やかな道で、空山池からの道に比べて幾分歩き易く、以前からあった道ではと思えた。雑木の中を歩いて行くと、石積みのある所に出た。そばには地蔵さんも立っていた。そこが三郡境で、そこからは北西方向へと県境を歩くことになった。緩やかに下って行くと、三郡境から10分と歩かず林道に下り着いた。林道と言うよりも作業道と呼ぶのが相応しい簡単な作りの道だった。後は北の方向へとひたすら作業道を歩くことになった。ときおり枝道が分岐するも、大平峠の標識が示す方向に歩いた。緩やかな下りが続くうちに、樹間から大ぶりの山が眺められるようになった。その方向からして八塔寺山ではと思えた。そのまま歩いて行くと県境近くに出るものと思っていたところ、何と寝釈迦像のある広場の近くに出てきた。どうやらすんなり作業道をあるけばそうなるようだった。別に県境に行くのが目的でも無かったので、県道を長く歩かずに済むのはかえって好都合だった。昼食どきを入れても3時間弱のハイキングだったが、展望が少なかったのは少々残念だった。また全体としてマイナーな雰囲気であったことは否めなかった。それでも空山池の静かな佇まいを眺められたのは良かったの思いで駐車地点に戻ってきた。
この帰路では西新宿の花しょうぶ園に立ち寄った。そこは有料施設(一人500円)で、元は棚田だったと思える所だった。ショウブはちょうど見頃を迎えており、何種もの色鮮やかなショウブの花が園内を埋めていた。それを眺めながら散策路を歩いたが、なぜか斜面に咲いていたササユリの方に感動してしまった。
(2015/6記)(2020/10改訂) |