洲本市内から見る先山はどっしりとした富士山型で、淡路富士の名に恥じない美しい姿をしている。ただ先山は登山としてよりも山頂にある淡路三十三カ所霊場第一番札所の千光寺が有名で、参詣目的で訪れる人がほとんどではと思われる。その参詣のために山頂のそばまで自動車道が通じている。この先山を純粋に登山目的で訪れることにしたのは02年2月のことだった。この先山だけではごく簡単な登山で終わってしまうと思われたので、午前を淡路島中部の山、妙見山で過ごした後に、午後のハイキングとして訪れた。
洲本市の下内膳の集落を抜けると、車道は千光寺への参道につながっていた。参道には丁石が置かれており、二丁目を過ぎたとき参道は淡路鳴門自動車道の下をくぐった。その地点を過ぎた辺りの道そばに駐車とした。歩き始めるとすぐに三丁目の丁石を見た。まだ車道と言えそうな道幅で続いていたが、程なく車止めが現れて、その先は進入禁止になっていた。緩い坂であったが、やがてその車道は終わり、そこからは立派な階段道が暫く続くことになった。やや急坂だった。こういう階段道はけっこう歩き難いので、どうしても道脇の階段になっていない部分を登ってしまう。それが終わって漸く登山道と呼べそうな土道に変わった。昔からの参道らしく、よく踏まれた歩き易い道だった。土道に変わってから周囲は鬱蒼とした照葉樹の森が囲むようになった。薄暗く展望は全く無い。この森はその日の午前に登った妙見山に似ていたが、妙見山よりも立派な大木が多いようだった。昔から千光寺の森として大事にされてきたのであろう。丁石はどんどん進み、十丁目を過ぎると急尾根となり、登山道はつづら道になって急坂を続いていた。そして上内膳からのコースと合流すると、程なく東ノ茶屋の前に出た。茶屋はその日は閉まっていた。そしてその前から始まる石段を登って千光寺の庫裏の前に着いた。その先を少し登った所に展望所があり、そこより更に石段があって十七丁目の山頂部に着いた。そこは山頂にしては広い境内で、本堂を始め仁王門、三重宝塔、鐘楼堂などがあり、歴史の重みが感じられた。暫しこの寺域の静かな佇まいの中で過ごした。
なお、この山頂部の境内から展望を得ようとしたが、周囲を高木が囲んでおり、ほとんど展望は得られなかった。 展望は石段を下りて、改めて展望所で得ることにする。だが展望所とは名ばかりで、周囲の木が育ったためか、けっして展望が良いとは言えなかった。木立の空いた所より南西に諭鶴羽山が望める程度だった。それもこの日はモヤの強い視界だったため、ごくうっすらとしか見えなかった。どうも先山は山頂に立って展望を楽しむ山では無く、あくまでも千光寺参詣としての山のようである。下山は登りと同じコースを下る。道中はやはり展望に乏しく、何とか木に登って淡路島南部の山並みを眺めてみたが、その程度の見え方は階段道で見える風景とさほど変わりは無かった。その階段道から改めて南の山並みを眺めて、この日の登山を終わりとした。下山後は西淡町阿那賀地区へ向かい、鳴門海峡を望む道の駅に立ち寄って鳴門海峡の風景を楽しんだ。そして一夜を過ごすべく、近くの丸山集落の民宿へと移動した。
(2002/2記)(2008/12改訂)(2020/11改訂2) |