2003年のお盆休暇は、仕事があったりお盆行事があったり、また天気が思わしくなかったりと、なかなか山に向かえなかったが、16日になって漸くフリーとなった。さあ山へ行こうと考えたが、南の空こそ晴れ間が多かったが、北の空がどうも怪しかった。全日の天気予報では晴れとなっていたので、幾つかのプランを持って北へと向かった。播但道を走っていると、けっこうクリアな視界にうれしくなったものの、やはり北の空は雲が厚かった。どうやら播但国境で天気は大きく変わっているようだった。そこでプランの一つである大嶽山から598mピーク(点名・大河)へと歩くコースをこの日の登山と決定した。このコースは前年の1月にもプランしていたが、そのときは大嶽山こそ登ったものの、その後の尾根歩きで手こずって、598mピークは断念したものである。またその日はモヤがきつく、薄ぼんやりとした視界には鬱屈とさせられた。その日と比べると、この日の空は雲が厚いながらも視界は澄んでおり、展望を楽しめそうだった。駐車地点は前回と同じく、桜華園の駐車場とした。始めは桜華園に入り、園内を最短距離で抜けて行く。前回と比べると桜華園がすっきりしている印象を受けた。どうやら夏草刈りが行われたようだった。刈られた草を見ると、けっこうワラビが多いことに気付いた。道端にはまだ芽を出したばかりのワラビも見かけられた。桜華園の上部にある東屋で一息入れる。上空こそ澄んでいたが、東の空には雨雲が広がっていた。笠形山はと見ると、雨雲に隠されていた。その雨雲がこちらへと更に広がろうとしていた。この辺りで天気が悪くなるとは、ちょっと予想外だった。桜華園を抜けて林道に入る。例の電動ゲートを抜けると、後は大嶽山まで緩い林道を登るのみだったが、上空には早くも雨雲が広がってきた。とにかく大嶽山の山頂には立つことにした。林道は山頂間近の稜線の位置まで続き、その先は小径となって山頂へと向かう。最後は急坂になって山頂に立つ通信設備の前に出た。山頂で展望が良いのは少し南に下った位置だと分かっていたので、すぐに向かった。そのときマムシと出会って、少々驚かされた。展望地に着いてみたものの、もう雨が視界を閉ざそうとしていた。近くの尾根もうっすらとしか見えず、これでは前回と変わらないと思えた。そうするうちに霧雨が降って来た。大嶽山からは林道を北へと歩いて598mピークへ向かう予定であったが、このまま天気が悪いようだと、この日の登山はここまでとの考えもよぎった。ただ霧雨以上の雨にはならないようなので、598mピークに近づく林道の入口辺りで様子を見ることにした。林道上にビニールシートを敷いて、ふて寝のように寝ころんでいた。その辺りは涼しさがあり、寝ころんでいるうちにまどろんでしまった。目を覚ますと30分ほど経っており、霧雨は止んでいた。空も徐々にだったが、黒雲が薄れようとしていた。その空を見て、予定通りに598mピークを目指すことにした。林道は598mピークへと続く尾根の東側を、稜線に近い位置でほぼ並行して続いているが、真新しい林道だった。前年の登山では林道を歩かず尾根上を歩いたため、ヤブに悩まされて、結局は中間点の425mピーク辺りで断念してしまったのだが、今回は林道を歩いて行くことにした。林道歩きは易しく、また林道を歩いて分かったことだが、けっこう展望が良かった。北東には高畑山を、また東向かいに見えるのは笠形山の前衛峰だった。そして南東には初鹿野山へと続く尾根が一望だった。そちらにはまだ雨雲がかかっていた。林道は598mピークが近づいた辺りで、尾根を越す道と、そのまま北に続く道とに分かれたが、そこは尾根を越す方に進んだ。適当な所で山肌に取り付くつもりだった。その道は尾根を越した位置で、また二つに分岐した。一つは尾根の西側を南へと戻る方向に延びていた。そちらには入らず、北西方向に続く林道を進む。歩くうちに西側に展望が開けてきた。大嶽山からこちらへと続く尾根が見えており、その右手に見えるのは七種山塊の北辺当たりと思える尾根のようだった。その辺りが598mピークを目指すには手頃な位置と思えた。また山肌も取り付き易そうだったので、漸く林道を離れることにした。取り付き地点は疎らな雑木林で、傾斜は緩かった。支尾根には害獣避けネットがあり、それに沿って登って行った。次第に傾斜がきつくなってきた。この日は気温は高くないものの湿度はけっこう高く、大いに汗をかかされた。薄暗くなった雑木林を、木に掴まりながら登った。南北に延びる主尾根に達すると、そこから僅かな距離で三角点の位置に着いた。蒸し暑さでなかなか息が治まらないので、三角点のそばに寝ころんで、暫く死んだように寝ていた。息が落ち着いたところで、周囲を眺めた。三角点の周囲は植林や雑木が囲んでおり、展望は悪かった。ただ植林はまだ大きくなっていなかったため、登り易そうに見えた。そこで手頃な木に取り付いて4メートルほど登ると、展望が開けてきた。そこから見えたのは市川の西に広がる山並みだった。1年越しで漸く立った598mピーク(点名・大河)からの展望を噛みしめた。下山は歩いてきたコースで戻ることにした。林道に戻ってきたとき空を見ると、青空が見られるようになっていた。視界も再び澄んだ感じになっていた。帰りの林道では、その澄んだ視界の下、くっきりとした東の山並みを眺めながらゆっくりと歩いた。そして大嶽山に続く古い林道に合流すると、再び大嶽山に向かった。汗のかき通しですっかり疲れた体だったが、山頂展望を楽しみたいと、その思いだけで登って行った。視界が良くなったからと言って、取り立てて有名山が見える訳ではなかったが、大嶽山の山頂に立って展望を得たことで、この日の登山は良かったと思うことが出来た。これで十分の思いだったが、この日の澄んだ視界を本当に楽しんだのは、この後の下山で電動シャッターを過ぎてからのことだった。そこは桜華園の最上部となるが、東の山並みを遮るもののなく眺め渡すことが出来た。北東の高畑山から南西の神前山まで飽かずに眺めていた。その展望に満足すると、後は桜華園内の遊歩道を一気に下って、麓へと下りて行った。
(2003/8記)(2012/10改訂)(2020/10改訂2) |