たつの市を流れる揖保川の西岸には新龍アルプスとして的場山から祇園嶽まで5kmほどの尾根が続くが、登山の対象として見ると色々とコースが選べて、ロングコースとしてもショートコースとしても楽しめる。2009年8月の最終土曜日は29日。この日は梅雨が戻ったのではと思えるようなどんよりとした曇り空で、蒸し暑さも梅雨どきと変わらなかった。このような日は休養に努めるのが良さそうなのだが、パートナーに誘われてしまった。そこで近場で無理なく登れる山として亀山を思いついた。この亀山を登るとなると、一番簡単なのは大手道コースとなるが、この日の蒸し暑さを考えると他の選択肢は無かった。その大手道コースの登山口がある馬立の墓園公園へと近づくと、入口に大きなネットが作られていた。道路の部分は開けられていたが、以前は無かったはずなので、それだけ害獣被害が増えているようだった。暑い最中とあって墓地には人影は無かった。コースはごく単純で、墓地から始まる登山道をひたすら西へとあるいて主尾根を目指すだけだったが、始めに山神社のそばを通って古墳群の中を歩く。いかにも古墳らしい姿の小さな土の盛り上がる風景が広がっていた。その中の登山道を歩くて行くも、どうも小石が多くあり、以前よりも荒れてきた印象だった。その先で上り坂がきつくなってシダの茂った中を登るようになったが、その頃は空が薄くなって陽射しが現れており、蒸し暑い中で直射光を受けることになった。これはけっこう厳しい状況で、たちまち体がだるくなってきた。はやバテてきたようだった。歩度を落としたが、どうも足が上がらなくなってきた。幸いだったのは露岩の目立つ尾根を登るようになって風が出てきたことで、その風には涼しさがあった。そこで木陰のある岩場を見つけてひと休みとした。そしてまた登り出したところ、すぐにだるくなった。そこで再びひと休みとする。その点々とある露岩地は展望も良く、揖保川沿いの風景が望めることになった。ただ湿気をたっぷり含んだ空気のために、薄ぼんやりとしか見えていなかった。その休憩を繰り返すうちに体が蒸し暑さに慣れたのか、だるさが消えてきて遅いながらも足を止めずに登れるようになった。そして一時間かかって主尾根に出た。ずいぶん時間がかかってしまったが、後は尾根が緩やかなこともありスムーズに歩いて行けた。その頃には空は再び曇り空になっており、薄暗い中での尾根歩きだった。主尾根に出てからは20分で山頂到着となる。木陰のある佇まいは以前と変わらなかったが、東に開ける展望が狭くなっているようだった。どうもこのような低山は草木の生長が早いようだった。展望を楽しむ天気でも無かったので、休むことに徹することにした。山頂は麓と比べると4℃は低く、またここでも涼しい風が吹いていた。手早く昼食を済ませると、木陰で昼寝を楽しむことにした。涼しい中で昼寝を出来るのは良かったのだが、どうも大型のアリが多くおり、それが何匹も体の上に上がって来るのには少々閉口した。また空が一段と暗くなってきて、そのうちにポツリポツリと雨粒が落ちてきた。これはかなわないと思っていると程なく止んだが、その後はときおり雨粒が落ちてくるかと思うと逆に陽射しが現れたりと、空は小刻みな変化をした。うるさいアリは人間に飽きたのかあまり寄って来なくなり、そうなるとのんびりと昼寝を楽しめた。空は次第に回復しているようで、薄曇りから薄晴れへと良くなり、陽射しが山頂に広く当たり出した。それをしおに下山とした。昼寝のおかげで体はリフレッシュしており、ごく気楽な下山だった。視界もいくぶん良くなっており、東向かいの鶴觜山の尾根がすっきり見えるようになっていた。その下山では駐車地点の墓地に戻る前に山神社に立ち寄り、そこから改めて鶴觜山の屏風岩の風景を眺めた。心も体もすっきりしており、蒸し暑い中での登山だったが、登って良かったの思いを持つことが出来た。
(2009/9記)(2019/10写真改訂) |