六甲山の地図を眺めていると、中腹と呼べそうな辺りの小ピークにも山名が付いているので、一度その低山巡りをするのも面白いのではと思えた。そこで半日程度のプランを立ててみた。それは阪急岡本駅を起点とするもので、まずは保久良神社経由で金鳥山に立つ。そこかえあは更に北へと歩いて風吹岩を通り、その先で打越峠へと向かうコースに入る。横池、雌池のそばを通って打越峠へ。峠からは七兵衛山をピストンする。打越峠に戻ると西に向かう登山コースに入り、コース途中で打越山、十文字山に立つ。そして甲南大西校舎へと下りてくるプランだった。
阪急岡本駅の北口を出たのは2015年2月の第一土曜日のことだった。北口は裏口と呼べそうなごく小さな改札口で、すぐに住宅地の細い道を歩くことになった。保久良神社は北東方向なので、そちらを目指して適当に歩いていると、通りに保久良神社の方向を示す標石が現れた。それに従うように東へと歩くと、問題なく保久良神社に通じる車道に出てきた。後はその道を北へと歩いて行く。緩やかな上り坂を歩いて天王橋のそばを通ると、舗装路ながらも林道を歩く雰囲気となった。道沿いに点々と桜の木が植えられており、桜の季節では楽しく歩けそうだった。南の方向に展望が現れると、神戸の海が朝日に光っていた。遠くは大阪の高層ビルも見えていた。車道の終点が保久良神社で、あちらこちらに朝の散歩を楽しむ人を見かけた。境内の一角にきれいなトイレがあり、その先より金鳥山への登り道が始まっていた。その易しい道を登って行く。そこも桜の木が多く植えられていた。保久良神社から金鳥山までは150mほど登ることになるので、次第に坂がきつくなってきた。その坂を登りきると広くなだらかになった所に出た。その一体を金鳥山と呼んでいるようで、展望もあってそこからは広く神戸の市街地や海が眺められた。その金鳥山の最高点はどこかと今少し登山道を辿ると、一番高いと思われる方向に小径が分かれた。その小径に入るとすぐに休憩出来る所が現れ、その近くで山名標識を見た。山名の確認を終えると主コースに戻り、次は風吹岩を目指した。陽射しを受けて明るい登山道を歩いて行く。ほぼ緩やかな道を歩いて行くと、岩場のある広くなった所に出た。そこが風吹岩で、主コースにある展望地とあって、何人かのハイカーが一休みしていた。気温は2℃ほどで風は無し。陽射しを受けていると、あまり寒さは感じなかった。その風吹き岩の先で打越峠への道が分かれたので、そちらの小径に入った。小さなピークを越えて横池に近づくことになったが、その小ピークを越えるときに六甲の尾根が眺められて、六甲最高峰も望まれた。程なく横池のそばに出ると、横池はいかにも山中の小池と言った佇まいで、湖面にはうっすらと氷が張っていた。次に雌池に向かうとき、湖畔を離れるコースに入ると、その途中からも六甲最高峰が眺められた。雌池のそばに出ると、雌池は横池よりも一回り小さな池で、横池と同様に湖面はうっすらと氷が張っていた。その雌池からは打越峠へと向かうのだが、そこで道誤りを犯してしまった。雌池の先で暗い谷コースをどんどん下っていたところ、あまりにも下りが続くので漸くおかしいと気付いた。地図を見ると八幡谷を下っているようだった。そのまま下るとハイキングが終わってしまうところだった。少し戻って案内図を改めて見ると、そこから西へと始まる道が通行不能であることを示していたが、その道なら戻らずとも近づけそうだった。そこで通行禁止コースを歩いて打越峠に向かうことにした。その道はいかにもマイナーな道で、他のコースがよく踏まれているのに対して、鄙な山を歩いている雰囲気となった。高度は上げずトラバース道として続いていた。そして南から来る広い登山道に合流したが、結局のところ危険個所は無かったので、通行禁止の理由がよく分からなかった。合流地点からは北へと上り坂になった。雌池からはほとんど下り坂だったため、上り坂は少々疲れる思いだったが、休まず登って打越峠に着いた。雌池を離れてから70分以上経っていたので、ちょっと時間がかかり過ぎだった。そこからは七兵衛山へ向かうのだが、東へと歩くとすぐに分岐点が現れた。歩き易い道で、6分も歩けば七兵衛山のピークに着いた。山頂は有志によるものか休憩出来るようになっており、市街地への展望もあった。そこからは打越山へ向かう予定にしていたのだが、どこで道誤りをしたのかをどうしても知りたくなった。そこで一度雌池にまで戻ることにした。七兵衛山からは登ってきた道を戻るも、途中で分岐した右手の道に入ると、七兵衛峠のそばに下りてきた。後は東へと歩いて雌池を目指す。そして雌池が間近になったときロープを掴みながら下ったのだが、最後は左手に折れて雌池に出た。そのポイントで道誤りを犯したことが分かった。雌池から打越峠に向かうには右手に曲がらなければならないところを、真っ直ぐ南へと歩いたことが原因だった。それにしても、そこにこそ標識が必要ではと思われた。改めて打越峠へと向かった。六甲山への主コースの一つとあって、打越峠に着くまでで10人以上のハイカーとすれ違った。このコースでの雌池から打越峠までの所要時間はたった14分だった。打越峠からは西へと打越山に向かった。道なりに歩いていると南西へと向かい出したが、途中で大きく曲がって北へ向かうようになると、程なく打越山に着いた。そこはコース途中の小さなピークで、あまり山頂らしさは無かった。それでも山名標識があり、ベンチもあって休めるようになっていた。打越山でこの日三つ目のピークだった。そこからは西岡本を目指して下山に向かうのだが、その途中にも山名の付くピークがあり、それが十文字山だった。十文字山へは案内標識に従って歩いた。途中で北へ向かったりもしたが、道なりに歩いていると、いつしか南に向かっていた。展望のほとんど無いコースで、すれ違う人も無かった。急坂も無く淡々と緩い道を歩いて行ると、小さなピークのそばを通った。そのピークの先で左手に風変わりなモニュメントを見た。説明板を見ると、仏舎利塔のようだった。仏舎利塔はフェンスに囲まれており、中に入ることは出来ないようだった。地図を見るとその位置で十文字山を過ぎたことになるので、先ほどのピークが十文字山ではと思えた。そこで引き返して改めてそのピークに立ってみたが、山名標識は無く、雑然とした雰囲気だった。神戸市街に近い山なら標識の一つも付いていると思っていただけに、少々意外だった。これで四つのピークを踏んだので、後は下山するのみ。車道に出て道なりに下ると、高台の住宅地に出てきた。そこからは階段を下ったりと適当に電車沿線となる南の方向へと歩いた。その帰路では阪急岡本駅に向かわず、JR摂津本山駅をゴールとした。摂津本山駅に着いてハイキング終了としたが、この日に歩いた山の姿を眺めたくなり、そこで七兵衛山の山頂から見えていたコープリビング甲南店へ寄り道することにした。その屋上に上がると、十文字山こそ確認出来なかったが、金鳥山も七兵衛山、打越山も一つの山として眺められた。やはり山名の付く山は、それぞれに存在感を持っていると思いながら暫し眺めていた。
(2015/3記)(2020/9改訂) |