山崎断層は宍粟郡山崎町の南部を東西に貫いており、地図で見ると南北に走る尾根が、その位置でずれていることがよく分かる。その断層上を中国自動車道が走っている。この自動車道の北側は次第に山が高くなって1000m峰へと続くのだが、その南は準平原と言うか、目立って高い山は無い。その中にあって三日月町の高丸山は500mを越す標高で、周囲の山並みから一段高くなっている。ただこの山は独立峰の風貌では無く、一帯が周囲より高くなっていると言った風で、三角点ピークの高丸山を始め、同程度の高さのピークが周囲に幾つかある。この高丸山をよく眺められる所はないかと地図を見ていたところ、高丸山の東に、500mに近い三角点ピークが目に付いた。点名も「雨ヶ岳」とあり、いっぱしの名前が付いている。ただ山頂近くまで林道が付いており、この雨ヶ岳だけを目指すのは面白く無さそうである。そこで雨ヶ岳だけでなく雨ヶ岳から尾根を北へと向かい、本郷峠を越してその先の四等三角点(点名・青木)まで歩くことにした。この尾根を歩いている間に高丸山を眺められるのではと考えてのことだった。
訪れたのは2005年2月12日のこと。この日の朝は雲は多いものの青空が広がっていたため、山崎町内は厳しく冷え込んでいた。雨ヶ岳までは林道を歩くつもりだったので、県道53号線を青木集落の位置で離れると、菅野川を越して中国自動車道を潜った。そして林道入口そばに駐車した。林道はよく利用されているようで、荒れた風は無く気楽に登って行けた。登るほどに梢越しだが北向かいの篠の丸が望めるようになった。標高も500mぐらいになってくると一帯は平坦となって、むしろ山裾を歩いているような風景になった。林道も地図に載っていない枝分かれ道があって、なだらかな地形と共にどの道が山頂方向に向かっているのか、分かり難くなってきた。そのうちに道が消えてしまった。どうやら主道を離れていたようだった。ただ雨ヶ岳は一帯の最高点なので、方角を定めて高い位置を目指して行く。そのうちに尾根を歩くようになったが、倒木があってけっこう歩き難かった。程なく左手に本来歩くべき林道が見えて来た。ただ出会ったと思うと、ほぼ終点だったらしくその道も消え尾根は傾斜を増して来た。山頂への最後の登りだろう。尾根にはケモノ道程度の岨道がありそれを辿った。倒木がある上に少しヤブっぽくなっていた。それでもさほど苦労も無く、歩き始めてから1時間少々で山頂に着いた。そこは雨ヶ岳と名は付くものの、雑木にすっかり占められて展望は無し。少々期待外れであった。後は北への尾根歩きで展望が得られることを期待するのみ。北へと尾根を歩き出すとアカマツが多く、一帯はマッタケ山かと思われた。アセビの木も目立った。木々は適度にばらけており下生えも少なく、ときおり灌木の小枝が煩わしくなる程度で歩き易かった。ただ相変わらず展望は悪かった。一度、期待した西への展望で無く、北の方向が僅かに望めた。雨ヶ岳から20分ほど歩いて次の483mピークに着いた。更に20分ほど歩いて470mほどのピークに着くと、そこは南からの別の尾根が合流していた。そこより西方向に木々を通して高丸山が見えていたが、間に450mほどの別の尾根があって、高丸山をほとんど隠していた。もう展望に関しては期待せず、予定通り点名・青木まで歩くことに専念することにした。もう昼時になっていたので、その470mほどのピークで昼食を済ませた。上空は雲が増え、陽射しはほとんど現れなくなっていた。食後、再び北へと歩き出したが、一度別の尾根に入り込んでしまった。そこは一帯の植林がすべて倒れているという凄まじい倒木風景だった。すぐに元の尾根に戻り、程なく本郷峠に着いた。ここで地図で破線で示される折橋集落からの道が来ていることを確認する。その本郷峠からは尾根は急坂となり、数分も登れば三角点(点名・青木)に着いた。そこも植林に囲まれて展望は無かったので、少しは風景の変化を求めたく今少し歩くことにした。そこでこの先の490mを越すピークまで足を延ばして終わることにした。実はここからが本日で一番苦労した所で、まず450mを越す辺りまで高度を稼いだときに現れたのが倒木地帯で、一帯の木が総てなぎ倒されていた。そこを乗り越えて何とか目的の490mピークに着いたが、そこも植林に囲まれて展望は無し。結果として終始展望の無い尾根を歩いたことになった。そして引き返すことにしたが、ここで大失敗をしてしまった。引き返すとき、一度尾根を南東方向から北東方向に折れないといけないのだが、何も考えずに尾根なりに下ってしまい、気が付いたときは、南の大内谷方向に100m以上は下ってしまっていた。そこで山肌を斜めに横切って戻ることにしたのだが、尾根に近づいた所でこれまでにない倒木地帯に出会ってしまった。尾根までの総ての植林が折り重なるように倒れているのである。これを何十本と越えて行くのはまさに災難で、この日一番の厳しさだった。30分で戻れると考えていた本郷峠までに、1時間以上はかかってしまった。そして漸く折橋集落への山道を辿れると喜んだのもつかの間、その山道にも幾本もの倒木があり、道を辿れない所もある始末で、これまた一苦労だった。この日に出会った倒木は前年の台風被害によるものと思われたが、いかに被害が甚大だったかを、歩いたことで身にしみて知らされた。それにしてもこの日の登山は、目的だった高丸山の展望はすっきりとは叶えられず、ただただ倒木との格闘に終始してしまった。
(2005/8記)(2012/9改訂)(2022/8写真改訂) |