宍粟市の中心は山崎町。その山崎町民の憩いの山は最上山と思われるが、その最上山に立ったとき、揖保川を挟んで東向かいになだらかな山容の山が見える。それが高取山で、兵庫みどり公社によってハイキングコースが整備されたことを知り興味が湧いてきた。ただちょっと低山だけに、天気の思わしく無いときに手頃に登る山の一つとして考えていた。その機会が巡って来たのが2008年4月中旬の土曜日だった。この日は播州の北部辺りより北の天気はどうも悪いようなので、昼どきを軽い山で過ごそうと考えた。そして宍粟市の南部までなら天気は悪くないであろうと考えて、この高取山を思い出したものである。
姫路の空は雲は多いながらも青空が見られたが、山崎町の空も同じぐらいで、雲間からときおり陽射しが現れていた。車を西麓の出石集落に進めるとあっさり觱篥神社の前に出て登山口を見たが、どうも車を止められる所が辺りに見当たらない。少し出石集落をうろうろして、結局は揖保川に近い路肩に駐車した。そこから觱篥神社までは数分の距離だった。境内には標識がありハイキングコースの説明板もあって至れり尽くせりで、ごくスムーズにハイキングコースの階段を登り始めた。コースは整備されてから時間が経っていないようで、階段の丸太が新しい色をしていた。最初のポイントが聖山城跡で、そこは小さく平らになっていた。その城跡に立つと北西の風景が眺めらられたが、そちらの空はすっかり曇り空とあって暗い風景になっていた。その聖山からは南東へ向かう尾根に沿って遊歩道が続く。ひたすらなだらかな道で、低木が主体の木立は新緑が始まったばかりで、淡い緑色が明るかった。その中に点々とコバノミツバツツジが咲いていた。歩くうちに陽射しも現れて、そうなると一気に木立に華やぎが出た。尾根が東に向きを変える位置まで来ると、「深呼吸の広場」まで斜度が増す。コースはここで一般コースと健脚コースに分かれるので、急坂の健脚コースを登ることにした。急坂と言っても手頃な登り易さだった。「深呼吸の広場」はベンチが置かれて小さく屋根が付いており、山崎の市街地が眺められる展望台になっていた。但し少し木立が視界を遮っていた。そこからは尾根歩きとなって緩やかに東の方向に向かう。尾根の遊歩道はゆったりとした道で歩き易く、またここは新緑とツツジがいっそう鮮やかだった。その様にこのハイキングコースでは一番雰囲気が良い所ではと思われた。右手には安志峠を通る国道29号線が見えている。そして前方には山頂も見えて来た。その尾根の途中には山頂まであと1.2kmと書かれた休憩ポイントも置かれていた。山頂が近くなってまたコースが二手に分かれた。やはり健脚コースと一般コースだった。ここは一般コースで山頂に近づいた。そして歩き始めてから1時間での山頂到着だった。昼どきの手軽なハイキングと考えていたが、その狙い通りに気楽に山頂に立てた思いだった。山頂には腰掛けが置かれており、手頃な休憩場所になっていた。その山頂は展望は良いとは言えなかったが、南に狭い範囲ながら瀬戸内海が見えていた。曇り空ながら南の視界は良く澄んでいるようで、海上に浮かぶ男鹿島がはっきりと見えていた。またその奥にはうっすらと山並みも見えており、どうやら四国の山並みのようだった。山頂では少し冷たい風を受けたが、気温は18℃とまずまずで、陽射しを受けていると適度な暖かさだった。それにしてもハイキングには手頃な山なのに、登り始めてから誰にも会わず、山頂もひっそりとしたものだった。その静かなことは有難いことなので、パートナーと二人してのんびりと昼どきを楽しんだ。この山頂を東の方向に少し歩くとそちらも開けており、そちらの方が展望は良く当田山が間近く見えていた。この山頂で30分ばかりの時間を過ごして下山とした。下山は始めに健脚コースで一気に下る。そして一般コースと合流してからは、往路のままに戻って行った。下山は青空の広がることが多くあり、すがすがしい新緑と鮮やかなツツジを愛でながらの散策気分だった、そしてこの下山でも誰一人として会わずに静かなまま高取山ハイキングを終えた。それにしても高取山は市街地の近くにあってハイキングとして手頃な山なのに、週末にもかかわらず誰にも会わなかったと言うことは、どうも宍粟の人は山が身近すぎるのか、山歩きに関心のある人は少ないのではと思ってしまった。
(2008/4記)(2018/12写真改訂) |