安富町の名坂に位置する大谷山には北斜面を林道が走っており、地図を見ると林道は山頂近くまで続いていた。その林道を辿れば気軽に山頂に立てるだろうと向かったのは2018年9月のことだったが、林道はイバラ混じりのヤブとなり、しかもそこは山ヒルの巣窟でもあって、山頂近くまで歩いていたものの降参とばかりに退散したものだった。その大谷山の山頂にやはり立ちたいとの思いは消えず、約半年後の2019年4月に改めて大谷山を目指した。前回と同様に西麓の末広集落側から林道を歩いて行くことにした。但し林道は最後まで歩かず、途中で離れて北面側の支尾根を登る予定だった。
この日は快晴で播州各地で桜の開花が進んでいた。安富町に入り林田川に架かる角屋橋を渡ると、川に近い位置に見たゴミステーションのそばに車を止めた。前回と同じ場所だった。その辺りの桜の開花も七分咲きまで進んでいた。まずは林道を目指して歩き始めた。前回で林道までの道順は分かっていたので、すんなりと林道へと入り害獣避けゲートを抜けた。暫くは林道歩きで高度を稼いで行く。登るうちに林道は舗装路からダート道に変わった。展望も少し現れて北へと続く尾根が眺められた。林道歩きで山頂から見ると北西の位置まで来たとき、右手に作業道が分かれた。北尾根を登るつもりだったが、予定を変更して作業道を歩いて近づくことにした。西斜面の中間辺りまで来たとき、西尾根に出るべく斜面に取り付いた。ネットが張られており、ネットの途中に付けられていた扉を抜けて植林地に入った。若木の植林地だったがそこにイバラや倒木が多くあって、けっこう苦労して尾根に近づいた。尾根に着くとそれは山頂から真っ直ぐ西へと延びる尾根で、後は尾根をただ登って行くだけだった。尾根筋にはネットが張られており、それに沿って登った。植林はまだ数メートルの高さだったため地表の陽当たりは良いようで、イバラが下草としてけっこう育っていた。そのイバラを避けながら登った。展望はどうかと思っていたのだが意外とあり、西には水剣山と黒尾山の並ぶ姿が眺められた。そのうちに北の方向にも展望が現れて、そちらに見えたのは氷ノ山だった。少しうっすらとした視界だったため薄ぼんやりとした姿だったが、まだまだ白いかった。概ねヤブっぽいまま尾根登りが続いて、尾根の傾斜が緩んで490mピークに着いた。そこから緩やかに下って緩やかに登り返すと山頂だった。サンチョウモヤブっぽさは変わらなかった。その山頂には三角点があるはずだったが、すぐには見つからなかった。地図を見ると山頂の真ん中に記号が付いていたので丁寧に探すと、漸くの思いで三角点を見つけたが、すっかり松の落ち葉に隠されていた。ヤブっぽい山頂ながらも展望はあって、尾根の途中から眺められたのと同じく、西から北にかけてが眺められた。また氷ノ山も同じく望めた。これで大谷山に思いを残すことは無くなり、山頂で手短に昼食を済ませると下山に移った。下山は最短距離で林道に出るべく、まずは東へと尾根筋を歩いた。そちらはイバラの上に倒木も多くあって一段とやっかいだった。そこを越すと多少は歩き易くなり、鞍部に着いた位置から北の斜面に入った。始めこそイバラを切りながらだったが、少し下ると作業道に出会った。その作業道は横切って更に斜面を下ると、地形はごく緩やかになった。そこに踏み跡程度の小径を見たのでそれを辿って行くと、スムーズに北へと下るようになり、ごく無難に林道に合流した。後はひたすら林道歩きで戻るだけだった。前回に歩いているだけに距離感も分かっており、ごくのんびりと下りを続けた。そして林道に出てから37分でゲートの位置に戻ってきた。朝からの好天は続いており、明るさに包まれた末広集落へと入って行った。
(2019/5記) |