金山の名は知っていても、丹波にあってはごく小粒な山なので、そのうちに訪れようかと思う程度だった。その金山が兵庫百山に選ばれたことで、ちょっと興味が出てきた。ガイド本の「ふるさと兵庫100山」を読むと、奇岩の鬼の架け橋があって、展望も良さそうだった。訪れたのは2010年3月の最後の土曜日だった。姫路からだと国道372号線を走って、古市で国道176号線へと入った。篠山川を渡った辺りから前方に注意していると、小ぶりながらすんなりとした姿の山が現れた。それが金山のようで、間近まで来ると登山口の案内標識が現れた。その標識に従って国道176号線を離れると、すぐに追入神社の前に出た。登山口とは少し離れていたが、その神社の北側に車を止めるスペースがあったので、そこから歩き出すことにした。歩き始めて数分で、大乗寺への道が左手に分かれた。その分岐点に金山の案内板が立っていた。金山への登山口は大乗寺の手前と、車道をまっすぐ北へと歩いた先にある追入神社からの二カ所となっていたが、大乗寺側から登ろうと、左手の車道に入った。気温は少し低めながら空は穏やかに晴れており、ハイキング日和と言えた。苗木畑のそばを通っていると山門が現れて、次に大乗寺と思われる建物が見えてきた。その大乗寺が間近になったとき、右手の山裾に登山口の標識に立っていた。それに従って登山道に入ると、程なく植林の中を登り出した。道はつづら折れで続いており、無理なく登って行けた。ただ植林地内とあって特に風情も感じず、黙々と登って行くだけだった。その植林も途中からは雑木に変わって林は明るくなってきた。道ばたにはときおり標識が立っており、山頂までの距離では無く、小野の架け橋までの距離が書かれていた。暫くつづら折れ道が続いた後、北へと尾根を辿るようになった。尾根は緩やかになったが、また周囲に植林が見られるようになった。程なく十字路となり、そこで東から追入神社からのコースが合流した。ただ道の様子からして追入神社コースの方が主流のようで、大乗寺側からの道がむしろ合流する形だった。その先に共同アンテナが立っており、そこを過ぎると少し開けた所に出た。石垣も見られてもう城跡の一角に出たようだった。そこからは北へと登って、5分も歩けば山頂の周回コースの起点に出た。左手の道を辿れば鬼の架け橋が近いようだったが、まずは山頂へと真っ直ぐに続く道に入った。その道を数分も歩けば山頂だった。さほど疲れも感じず、ごくあっさり着いたという印象だった。山頂は金山城跡の本丸跡で、広く平らになっていた。ただし周囲を木々が囲んでおり、展望は良いとは言えなかった。北向かいの譲葉山が少し見えるのと、途中でも見えていた南の方向の風景、国道176号線の風景と三田市との境界尾根だった。その山頂に立つのはこちらとパートナーの二人のみで、他に誰もおらずひっそりとしていた。その山頂ののどかな雰囲気に誘われて、ビニールシートを敷いて休むことにした。陽射しが暖かく風も無いとあって、休憩には絶好の雰囲気だった。早めの昼食をとり、ついでに横になって体を休めた。何となく一時間ほど過ごして漸く腰を上げた。鬼の架け橋へと北西方向に下りて行った。数分も下れば大きな岩が点々とある所に出た。そこに鬼の架け橋があった。落石が岩にひっかかって橋のようになっているのだろうが、意外と小ぶりな姿だった。それも左の岩が大き過ぎるためにそう見えたもので、奇岩には違いなかった。近づくとその岩の架け橋の下からは国道176号線が見えていた。その架け橋も面白かったが、架け橋を支える左の大岩に興味を持った。その上に立つといかにも展望が良さそうに見えた。少し登り難かったが、大岩の上に立つと期待通りに大展望が広がっていた。前面に対峙するのは譲葉山で、その右手奥には妙高山、左には石戸山から高見城山の尾根と、丹波北西部の山並みが一望だった。この大展望はこの大岩の上が一番かと思ったのだが、他にも点在する岩の上に立つと、更なる展望があり、西の方向もすっきりと望めた。但しこの日の視界は少しうっすらとしており、遠方がうっすらとしていたのは残念だった。また空も昼前と比べて薄雲が広がろうとしていた。この金山は鬼の架け橋の位置だけでなく、山頂も木々が無ければ丹波の森街道を足下に周囲360度の展望が得られて、物見の山として城が作られたことに納得する思いだった。鬼の架け橋での展望を十分に楽しんだところで、山頂には戻らず、下山として南へとトラバース道を歩いた。そして山頂からのコースと合流して下山の途についた。下山は追入神社に至るコースを下った。こちらは大乗寺からのコースと違って道幅があり、ゆったりと下って行けた。周囲の木々も自然林が多く、落ち着きのあるコースだった。尾根を離れてから15分ほどで園林寺に着くと、そこからは参道の雰囲気となって追入神社のそばに下り着いた。その辺りは数台の車なら止められそうで、金山をさっと登るのならこの追入神社側からピストンすれば、ごく簡単なハイキングとして楽しめそうだった。麓に下り着いて仰ぐ空は薄曇りになっており、青空は見えなくなっていた。後は追入集落を抜ける道を歩いて、駐車地点へと戻って行った。
(2010/4記)(2021/10改訂) |