湯舟山は遠阪峠にごく近い位置、兵庫京都県境上の山であり、山頂は若干京都府側にあるように見えるが、兵庫県の山と言っても問題は無さそうである。その湯舟山を登ろうと「矢名瀬」の地図を眺めると、南麓側を走る国道427号線が県境尾根と接する位置があった。小峠と呼ばれる所で、そこをスタート地点とすると山頂までは手頃な距離に思えた。
向かったのは2023年4月の第四土曜日のこと。朝から快晴の天気だった。北近畿豊岡自動車道を山東ICで降りると、遠阪峠を通る国道427号線に入った。峠越えの国道ながら急坂も無く遠阪峠を越すと、程なく小峠に着いた。まさに国道は尾根に接していた。そこに2台は止めることが出来ない狭い駐車スペースがあり、幸い車は止まっていなかった。おかげですんなりと駐車が出来た。後はひたすら県境尾根を北西へと歩くだけだった。気楽な県境尾根歩きと考えていたのだが、それは大間違いで尾根はいきなり急坂の痩せ尾根だった。木に掴まりながらの登りで、少々危険な感じすらあった。更にその急尾根の途中には国道側の斜面で大規模な法面工事が行われていた。そこは足下が脆く細心の注意を必要とした。その工事部分を過ぎると危なさは無くなり、単なる急尾根登りとなった。それもすぐに尾根は緩んで易しく歩けるようになった。尾根は自然林の所もあったが植林地が多いようで、展望の無い尾根歩きだった。傾斜もまた増して、しっかり登る感じが続いた。前方にピークが見えるとそこが山頂かと思って最後のひと踏ん張りとばかりに登ったが、そこは一つ手前の580mピークだった。その辺りまで来ると自然林は多くなっており、その自然林が新緑の盛りだった。目の覚めるような瑞々しい青さが目を楽しませてくれた。相変わらず展望は無かったが、山頂が近づくと樹林の切れ目が現れて、少しだが北の山並みが望めた。山頂に着いたのは10時42分で、歩き始めてから1時間少々がが経っていた。山頂は少し開けており北東方向に展望があって、夜久野町の山並みが望めたが、兵庫の山は見えなかった。三等三角点はアセビの木の間に隠れるようにしてあり、近くの木に付けられていた山名標識は「夫婦岩」とあり、それは点名で湯舟山の名は無かった。この日は寒い日で山頂の気温は12℃だった。それでも陽射しの下では十分に暖かかった。一休みを終えると、北尾根を少し下ってみた。すると期待通りに展望が現れて、西の方向に兵庫の山が眺められた。建屋山の後方にはうっすらと氷ノ山が望めた。山頂を含めてだがその辺りも植林が多く、幼木の頃は素晴らしい展望地だったのではと思えた。山頂に戻ると下山は県境尾根を南西へと歩いた。そして次の550mピークより南へと丹波市と豊岡市との境界尾根を下った。その先が遠阪峠だった。県境尾根よりも木々は空いており、無理なく下って行けた。そのまま登坂峠に下り着くものと考えていたのだが、尾根なりに下ったために最後は南東方向へと向かうようになり、ごくスムーズに国道のそばに下り着いた。そこは国道がヘアピンカーブになっている近くで、遠阪峠からは丹波市側に200mほど離れた位置だった。後は国道を東へと歩いて小峠に戻るだけだった。緩やかな下り坂とあって歩くのは楽だったが、国道を走る車は少なくなく車に注意しながら戻ることになった。
(2023/5記) |