七種山系の薬師峰を易しく登ろうとすれば、東麓側にある野外活動センターからのコースとなるが、楽しく登ろうと考えたとき地獄鎌尾根を登りたくなった。その地獄鎌尾根を含めて周回で登ろうと薬師峰に向かったのは2016年1月のことだった。県道67号線を走って前之庄に入ると、村上ファームに通じる車道に入った。住宅地を抜けるとファームが現れたが、ファームの施設は車道の両側にあり、何やら工場内に紛れ込んだ雰囲気となった。村上ファームを通過するとその先は林道だった。林道はすぐに荒れてきたので、適当な駐車スペースを見つけてそこに駐車とした。地獄鎌尾根を目指すには明王寺池側から尾根に取り付くのが一般的なようだったが、その為には一度村上ファーム方向に戻り、ファームを通り抜けなければならない。ただファームは季節柄、家畜のインフルエンザに神経をとがらせていると思われたので、そこを歩いて行くことは躊躇された。そこで間近の斜面を適当に登って尾根に出ることにした。その辺りから尾根までの標高差は150mほどで、傾斜も少しきつい程度だった。登り始めると樹林は疎らになっており、無理なく登って行けた。小径は見えなかったので登り易そうな所を選んで登ると、十数分で尾根に出た。ゆったりとした尾根で、合流した位置は小さなピークの手前だった。それを越した先が下りになったことで地図上の位置がはっきり掴めた。地獄鎌尾根の手前にある300mほどのピークを越えたようだった。その下りで前方に大きく見えたのが薬師峰だったが、その上空には雲が広がっていた。この日の天気予報は曇り時々晴れとなっていたので、ときおり陽射しが現れる程度ではと思って先へと進んだ。緩やかな尾根で、所々でシダが増えたものの道ははっきりしており、けっこう気楽に歩いて行けた。左手には木々の間から明神山が端正な姿を見せていた。その尾根の様子が変わったのは地獄鎌尾根の一端に着いたときで、そこからは展望の尾根歩きとなった。左手には明神山の尾根が雄大に眺められ、上り坂になると背後に低山群が広がってきた。うれしいことに天気予報に反して雲はどんどん少なくなっており、前方の薬師峰の上空は青空が広がっていた。それと共に気温も上がって10℃を越えてきた。ときに地獄鎌尾根の名と結び付けられる荒々しい岩場を登ることがあったが、岩は足がかりが良く、慎重さは必要とするものの楽しく登れた。岩場では手がかりの少ない所にはロープが張られていたので、雨の日でない限り、危険と言えるほどのことは無かった。その岩場はずっと続くのでは無く、途切れたかと思うとまた現れるの繰り返しで、縦走路が近づく辺りまで続いた。そして登るほどに背後の風景がどんどん広がった。縦走路に出ると、ようやく標識が現れた。左手は七種山に向かう道で、右手が薬師峰だった。近くに十字峰と呼ばれる550mピークがあったが、七種山方向だったので立ち寄らないことにした。合流地点と薬師峰山頂との標高差はまだ100mほどあったので、上り坂が続いた。ときおり右手が開けて瀬戸内海の光っている様が眺められた。ロープの張られている所もあったが、無理なく登って行くと縦走路に出てから20分少々で山頂到着となった。山頂手前に置かれた祠を覗いてから山頂に立った。こぢんまりとした山頂は陽射しをたっぷり受けて明るかった。陽射しで辺りの空気は暖められており、春ではと思える暖かさだった。温度計を見ると17℃を指していた。その山頂に人影は無く、パートナーと二人きりで昼どきを過ごすことになった。昼食を済ませると展望を楽しむことにしたが、山頂からの展望は樹木の生長により年々悪くなっているようで、雪彦の尾根も笠形山も木に登らないとはっきり見えなかった。それでもこの日の視界は十分に澄んでいたので、どの山もくっきりと見えていたのは良かった。この日は周回コースで歩く予定だったので、山頂の休憩を終えると東方向へと下り、そしてすぐに分かれた板坂峠へと続く東尾根コースに入った。そのコースの途中で村上ファームに通じるコースに入るのだが、470mほどのピークに立ったとき、そこから右手に歩き易そうな尾根が分岐していた。地図を見るとその尾根を下っても問題無さそうだった。そこでその支尾根へと入った。始めは地図の通りに緩やかな尾根で、気楽な下りだった。但し目印テープは全く見なかった。下るうちに尾根は不確かとなり傾斜も増してきたが、ヤブ尾根では無かったので歩き易そうな所を選んで適当に下った。そして沢筋に下り着くと、沢沿いをこれまた適当に歩いた。小石が多くあって歩き難かったが、沢筋は緩やかだった。ときに小径になった所が現れたり、沢を二度ほど横切ったりした。その沢沿い歩きを15分ほど続けると、あやふやな林道が現れた。もう使われていないと思える林道だったが、あるくほどにはっきりしていた。そして左手から別の林道が現れて合流した。後はごく普通の林道歩きだった。合流地点から5分ほど歩くと駐車している車が見えてきた。無事、周回コースとして歩けたようだった。
(2016/2記)(2020/5改訂) |