播州の名峰の一つとして明神山は必ず名前が上がるかと思われる。以前は目印がほんの僅かにあるだけで、名前の割りにはあまり登山道は整備されていない印象だったが、それがここ10年ほどで一気に様相が変わってきた。AからEまでのコース設定がされ、特にA,B,Cの3コースは登山道がすっかり整えられて、格好のハイキングコースと言えそうだった。それと共に訪れる人も増えて、誰かは登っている人気の山になっている。その人の多いことで雪彦山と共に少し距離を置くようになってしまったが、静かに味わえさえ出来れば、楽しい山の一つである。この明神山を急に登りたくなったのは2008年11月の勤労感謝の日だった。この日は午後のひとときに置塩山の城跡ハイキングを楽しんだのだが、山頂の本丸跡が好展望地になっていた。そして北の山並みを眺めたとき、そこにすっきり見えていたのが明神山で、小槍を従えた端正な姿に、久々に登ってみたくなった。そして翌24日は月曜日ながら振替休日で引き続き休みだった。その24日は昼前から雨が予想されていたが、その降り出す前にこの明神山を登ってしまおうと決めた。天気の悪さと早朝とで登る人はまず居ないのではと考えてのことだった。
24日は午前6時半には自宅を離れていた。空はどんより曇り空だった。ただ東の空は朝焼けで、赤くなっていた。早朝とあって道路は空いており、7時前には「夢やかた」に近い駐車場に着いてしまった。そこには既に車が1台止まっており、そばにテントが張られていた。遠来の山口県からで、聞くと播州の山行とのことだった。ただまだ登山準備に入っておらず、こちらがお先にとスタートする。岩屋池への道を進み、特に考えることも無くCコースに入った。この明神山には標識が親切過ぎるくらい付いているので、地図は「前之庄」を用意していたが、形だけになりそうだった。このCコースはすぐに登り坂となり、登山道のままに登って行く。空模様はどう見ても雨空だったが、まだ2,3時間程度なら持ってくれそうだった。少し登ると岩場が現れた。大雌岩の名が付いており、親切に岩を登って行くポイントに黄色い丸印まで付けられていた。また何合目の標識も付けられており、五合目、六合目と進んで行く。展望が開けることもあり、東に七種山の尾根が望まれた。暗い風景ながらけっこうくっきりと見えており、ときおりある低気圧が来る前の澄んだ空のようだった。急坂(がまん坂)があって登り切ると、標高515mの地蔵岳に出た。ここで七合目だった。もう山頂が間近に見えていた。このCコースは急坂や岩場も現れるが、登り易いことに変わり無く、2年前の登山になるが、奥三河の明神山も同じような雰囲気で登ったと、急に思い出した。そのときも思ったが、このようなやや急坂をコースのあるままにスムーズに登って行くのはスポーツ登山と言えそうで、自然林に包まれてのんびり登る登山とはまた違ったおもむきだった。八丁坂と名付けられた急坂の途中で八合目を見、山頂が間近になって九合目、そして山頂には8時を10分過ぎた時間に到着となった。途中の展望地でゆっくりしたので、このCコースを純粋にスポーツ登山として登れば、1時間とかからず山頂に立てそうで、やはり明神山は小ぶりな山と言えそうだった。それまでも誰とも会わなかったが、山頂も無人で朝の静けさの中にあった。その山頂が以前の記憶と比べてすっきりと更に整備されていた。木立が切られたようで、一段と展望が良くなっていた。ただ以前には無かった展望図が置かれており、少し煩雑な感じもした。そして中央の三角点は一角が大きく削られて無惨な姿になっていた。尾根の途中でも思ったことだが、この日の視界は良く澄んでおり、七種山だけで無く、雪彦の山並み、北西には宍粟の山並み、西を見ると那岐山もうっすらと見えていた。姿良し、展望良し、そして登山道は歩き易い上に時間がかからない。明神山は人気の要素が揃っているようだった。山頂に佇んでいたのは30分ほど。下山は一番楽なコースと言えるBコースを下ることにした。こちらも良く整備されていた。以前は山頂直前の坂は滑り易くて注意が必要だったが、フィックスロープがきちんと張られており、その急坂をごくスムーズに下って行けた。尾根が緩くなるといっそう気楽なもので、すたすたと言う感じで下って行く。ただそのとき思ったのは、登山道がどうも固すぎることだった。それだけ多くの人が歩いての結果なのかと考えたが、それだとオーバーユースぎみになっているのかも知れない。このBコースは途中に展望岩があって岩屋池の風景が眺められたが、尾根としては展望は良いとは言えなかった。A,Bコースの分岐点を過ぎると、途中からは植林地をひたすら下ることになり、雰囲気としてはAコース、Cコースよりも劣るのではと思われた。どうも歩き易さと距離の短さで一番歩かれているのではと思ってしまった。岩屋池が近くなる頃に、細かな雨が降ってきた。岩屋池を過ぎてコテージ村が見えてくると、あちらこちらで野焼きの煙が上がっていた。雨は小雨となって降り続く気配を見せており、その中を薄く煙のたなびく風景を見ながら、駐車地点へと戻って行った。
(2008/12記)(2019/8写真改訂) |