梅雨の最中であっても山に登りたい気持ちは緩まず、その空の具合で色々なプランが浮かんでくるものである。2008年6月は週末になると天気のくずれることが多く、そこで近場の範囲で以前から気になっていた低山を登ったのだが、それがいずれの山も少なからずヤブがあって、ヤブコギ登山をしてしまった。そして最終週も曇りときどき雨の予想と聞いてまた近場で楽しむことにしたが、さすがにパートナーが少しは軽いハイキングをしたいと言い出した。そこで空の具合と歩き易さを考えて、七種山塊の主峰、七種山を思い付いたものである。そしてコースも午後からの天気の悪化を考えて昼には終わる予定として、オーソドックスに南麓の作門寺山門からのコースで登ることにした。
雨こそ降らないものの何時雨が降ってもおかしくない梅雨空の下を山門前に着いた。車道はその先も暫く続いて七種神社の近くまで行けるが、歩くことが目的なので山門前の駐車スペースに車を止めた。他にも2台止まっており、ちょうど親子連れが車を離れようとしていた。すっかり暗い空の下、ゆっくりと歩き始める。暫くはコンクリート舗装の車道を歩いて行く。その途中で雌滝と出会ったが、滝は暗い中でしっとりと落ち着いた感じで見えていた。どうも滝は明るい空の下よりも、暗い中で水流を見るほうが雰囲気があるようだった。その車道の終点まで来ると、そこからは滝見物コースと呼べそうな七種神社の参道が始まるが、それとは別に左の山肌に向かって滝見コースが始まっていた。但し落石の危険につき立入禁止となってロープが張られていた。いわゆる登山道の一部が崩壊しているようだった。その滝見コースに興味が湧いて、崩壊箇所さえ注意すればと、急な思い付きながらそちらを登ってみることにした。そのサブコースに意外と手こずらされた。始めこそ普通に登っていたのだが、登山道は放置されていたことによって雑草の生えるままになっていた。しかも雑草の多くがイバラとあって歩き難さはこの上なかった。なるほど崩壊箇所があり倒木もあったが、そのことよりもイバラをいかにかき分けるかに悩まされることになった。これでは四週続けてのヤブコギ登山と言えそうだった。そのイバラヤブをハサミで切りながら進んでいるとき、後ろでパートナーの悲鳴があがった。振り返ると突然ハチに射されたとのこと。何とも厳しい登山になってしまったが、それでも途中の滝見台で七種滝を遠望出来たり、隠れ滝を訪れたりとコースとしては悪くなかった。これが元の通りの遊歩道であればと少々惜しまれた。道なりに進んでいたところ、コースは二手に分かれていたのか、七種神社には向かわず北の尾根へと向かっていた。その頃にはイバラは無くなっており、ごく普通に歩けるようになっていた。細々と続く小径を進むで尾根が近づくと、傾斜が少しきつくなってきた。そこを一気に登って尾根に出た。その頃には小雨が降り出しており、一休みしたところで雨具の上だけ着て尾根歩きを始めた。その尾根到達点は山頂から西に300メートルほど離れた地点だった。もう尾根の小径を辿るだけだった。さほどアップダウンの無い尾根を歩くうちに尾根の方向は南東となり、山頂が近づいて来た。小雨はその頃には止んでおり、どうやら降ったり止んだりを繰り返すようだった。山頂が間近になると尾根の傾斜は増し、七種神社からのメインコースと合流するとその先が山頂だった。そこには他に人影は無かった。山頂に久々に着いてその様子が以前の記憶と少し違っていた。明るくなっており、どうやら北側の木が切られたようだった。その北側はこの日はガスのため、ほとんど視界がきかなかった。残念だったが次回に期待することにした。昼休憩はいつもの通り山頂そばのつなぎ岩でとることにした。そのつなぎ岩は絶好の展望地なのだが、ガスが前面に広がっており、左手の七種槍がうっすらと見えるだけだった。つなぎ岩にとどまっていたのは20分ほどで、また小雨が降り出したのをしおに腰を上げた。下山は七種滝から七種神社へと向かうメインコースを歩くことにした。山頂こそ誰もいなかったが、この下山では5,6人のハイカーとすれ違った。やはり七種山は雨の日でも誰かは登って来るようだった。そして七種神社が近づいたとき、子供の声が聞こえて来た。その七種神社に着いてみると、神社の中で20人ほどの子供が雨宿りしながら昼食の最中だった。どうやら七種滝まで遠足に来たようだった。他にも滝見物だけの人が数人おり、七種滝はけっこう人気の場所のようだった。その賑わいも滝の周辺だけのことで、滝を離れて車道歩きを始めると、聞こえて来るのは沢音だけとなった。それを聞きながら小雨の中を駐車地点へと戻って行った。
(2008/7記)(2021/12改訂) |