播州と丹波を分ける尾根には、篠ヶ峰を始めとして700mから800m台の尾根が続くが、竜ヶ岳の北となる鳴尾山に注目してその山頂を目指したのは1997年7月半ば。少しモヤがかっている程度でまずまずの晴れの日だった。加美町鳥羽集落の奥を進み、林道に入ってすぐの所の堰堤手前に駐車した。鳥羽峠から鳴尾山を目指す予定で林道を歩き出したのは9時半過ぎのこと。しかしその林道は鳥羽峠へ向かうものでは無く、鳴尾山の北側の尾根に向かうものであった。地図をよく確認しないままに登って行ったため、林道が続き過ぎることに違和感を感じないままにどんどん登って行った。そして山稜近くなった所で害獣避けネットに行く手を阻まれた。そこで林道を離れて、斜面を適当に登って主稜線に出た。まだ道の間違いに気付いていないため、鳴尾山は北に有ると思いこんでおり、そこより北を目指した。間もなく展望の良い場所に出たが、そこから北に見えたピークを鳴尾山と思って、そちらに向かって進んで行った。途中で舟坂峠を越すのだが、その頃になって地図とは違う不自然さを感じていた。しかしとにかくそのピークまではと進んで行った。やがて着いたそのピーク(669m標高点)には共同アンテナの設備が有り、展望も少し有って近々と三国岳が見えていた。そのピークには当然三角点は無いのだが、鳴尾山と勘違いしていたため、暫く三角点探しをしてしまった。その捜索に疲れてしまってピークで昼休憩とした。
休憩中にそのピークに疑問を持ち、ここは鳴尾山の南ではないかと更なる勘違いをして、休憩後更に北に向かってしまった。 主尾根はほぼ植林帯で展望は無し。進むほどに尾根の方向が東に向かい出したので、その方向も間違いと気付き、地図をじっく
りと見直した。その時点で漸く現在地を把握すると共に、離れてしまった鳴尾山との距離に唖然とした。それでも当初の目的通り、鳴尾山を目指すことにした。黙々と辿った道を戻り、引き返し地点より2時間かけて山頂に着いた。もう16時前になっていた。最後はほとんど足は上がらない状態になっていた。山頂は大きく育った植林帯のため、展望は悪かった。時間が遅いことでもあり、少し休んで早々と鳥羽峠を目指して下山した。順調に下っていたが、最後に来て更なる大トラブルを起こしてしまった。峠手前で尾根は二手に分かれており、峠に向かうには南南西尾根を辿るのが正しいのだが、もう一つの南尾根を下ってしまい、加美町とは反対側の氷上町に向かってしまった。
慎重に下っていたつもりでも、少し焦りがあったのだろう。気が付いた時はほとんど氷上町側の沢に近い位置まで下りていた。疲労が大きいので、ひとまず沢まで降りて水を飲んで休憩とした。体力的にはほぼ限界だったが、最後の一がんばりと峠を目指して登り返した。植林して間がないイバラの混じった草付きの急斜面だったが、その草を掴んで少しずつ登って行った。少し登っては休憩をとることの繰り返しで、峠に着いた時は生き返った心地がした。後は鳥羽集落に至る林道を目指して道の無い尾根を下るのだが、地形的にはそう難しくは無かった。駐車地点に戻った時はすでに19時過ぎで、辺りはもう薄暗くなっていた。ちょとした思い違いで、結果として12時間ばかりをこの低山でうろついてしまうという、とんでもないハードな一日となってしまった。
(2021/10追記)本文中の669mピークは、現在は四等三角点(点名・山寄上山)が設置されており、標高は667.0mとなっている。また最遠地点となる690mピークも現在は四等三角点(点名・郷附上)が設置されており、標高は695.3mとなっている。
(2003/7記)(2018/4改訂)(2021/10写真改訂) |