鳴尾山を初めて登ったのは1997年のことだが、そのとき尾根を勘違いして大きく道誤りをしたのが強烈な印象として残っており、山に関してはどうも印象は薄かった。その鳴尾山登山から20年も経つと記憶はほぼ残らないまでになってしまった。そこで初めての山を登る気持ちで向かったのは2018年3月の中旬のことだった。多可町加美区に入ると鳥羽地区まで進んで鳥羽公民館に車を止めた。鳴尾山を西側から登る場合は二つの林道を利用すれば周回で歩けるので、左回りで歩くことにした。鳥羽集落を抜けて林道に近づくと、入口は害獣避けゲートで閉ざされていた。そのゲートを抜けると林道はすぐに二手に分かれたので、予定通り右手の林道に入った。暫くはただ林道のままに進むのみだった。周囲は概ね植林地で、道そばにはミツマタの木が多くあり、黄色い花を咲かそうとしていた。林道は終始緩やかで、一部はコンクリート舗装もされており易しく登って行けた。その林道は地図では標高500m辺りで終わることになっていたが、延伸されたようでその先も続いていた。その時点で地図を見ておれば主尾根を目指していたのだが、何気なく林道歩きを続けてしまった。もう林道とは呼べず作業道と言った方が相応しい道で、通行する車は無いのか道の中に灌木が育っていた。どこまで道は続くのかと思っていると、程なく作業道は終点となった。そのときになって漸く地図を見ると、主尾根の位置から離れてしまっていることに気付いた。これは失敗したと、すぐに引き返した。地図の終点位置まで戻らず、途中で斜面に取り付いた。けっこうな急斜面だったが、そこは植林地になっており踏ん張るようにして登ると、支尾根を辿れるようになった。支尾根歩きとなっても急傾斜だった。その急坂を登りきった所が710mピークだった。もうその先に急坂は無く、緩い尾根となって主尾根と呼べる播州丹波間の境界尾根に合流した。それにしてもそこまで展望は全くと言ってよいほど無かった。主尾根歩きに移ると展望を探りながら歩いたが、やはり植林や雑木に遮られて展望は現れなかった。その辺りよりうっすらとながら雪を見るようになった。雪は1センチ程度で歩く妨げにはならなかった。どうやら前日の雨は山の上では雪になっていたようだった。ただ雪よりも風の冷たさが身に凍みた。温度計を見ると3℃まで下がっていた。進むうちに木々の隙間からちらりと三国岳や粟鹿山が望めるようになった。快晴の下でくっきりとした姿だった。これだけクリアな視界なら展望の良い山を登っておくべきだったと少々悔やまれた。とうとう展望の得られぬまま山頂到着となった。その山頂も樹林にすっかり囲まれていた。そこは陽射しが無かったので、少し戻って日溜まりを見つけると、そこで休憩とした。気温が低いとは言え、陽射しを受けているとさほど寒さは感じなかった。山頂で30分ほど過ごすと、境界尾根を西へと下って下山することにした。但し舟坂峠までは向かわず、途中で林道へと繋がる尾根を下る予定だった。その山頂から西へと延びる尾根がはっきりしておらず、適当に西方向に向かうと急斜面を下ることになってしまった。その下っているときに正しい尾根を左手に見たので方向を修正した。そのトラバース中に樹林の切れ目が現れて、少しだけだが三国岳や粟鹿山の姿を木々に邪魔をされずに眺めることが眺めることが出来た。尾根に出ると、後はひたすら西方向に下るだけだった。途中で上り坂があり、700mピークを越した。その先で境界尾根となる北西の尾根には入らず、西へとひたすら下った。そして予定通り林道に下り着いた。そこは林道の終点位置だった。その林道も往路で歩いた林道と同じく概ね植林地の中を歩いた。整然と杉の美林が続く風景も悪くなかった。林道を40分ほど歩くと害獣避けゲートが現れた。それは朝に通ったゲートだった。後は鳥羽集落を抜けて車を止めている鳥羽公民館へと向かうだけだった。
(2018/4記)(2020/3改訂) |