入相山を登山対象と考えると、稜線の高坂峠まで車で来られるので、そこからだと標高差は280mしかなく、短時間の登山になってしまい、物足りないと言うことになる。下山に広域林道コースをとって周回としても、あまり代わり映えがしないように思える。その入相山を神河町側から眺めると、けっこう堂々とした姿をしているので、その姿に合った登山をしたいと考えた。そこで「粟賀町」と「生野」の地図を開くと、西麓の岩屋集落から岩屋峠までの道が目に付いた。峠まで林道と破線路が続いている。まずその道を歩きたいと考えた。また旧の県道8号線を歩いて高坂峠に出るのも悪くないと思えた。そうなると周回で歩けることになり、時間としても適度となるので、これを実行したくなった。向かったのは2012年11月3日の文化の日だった。播州南部はすっきりと晴れていたが、北に向かうにつれて雲が増えてきた。それでも青空も見られたので、雲の多い晴れと呼べそうだった。天気予報では午後は晴れてなっていたので、これから更に良くなって来るものと思われた。国道312号線を離れて県道8号線を東へと走って行く。根宇野集落の先で県道は越知谷への道と高坂トンネルへの道の二手に分かれるが、高坂トンネル方向へは岩屋橋を渡ることになる。その越知川に架かる岩屋橋を渡って右方向の岩屋集落への道に入ったとき、路肩が少し広くなっていたので、そこに駐車とした。まずは県道8号線を高坂トンネルへと歩いて行く。車の往来が煩わしいと思っていたのだが、通行料は少なく、あまり気にならなかった。20分ほど歩いて旧道に入った。その旧道の入口がなぜか塞がれていた。「松か井の水」へはこの道を通って行くことになるので、ちょっと訝しく思った。車は進入出来ないとあって、至って静かな道だった。以前にこの道を車で通行していたときは道幅の狭いことに神経を使ったが、ハイキングで歩くとなると、その道幅が良い感じに思えた。周囲の木立も自然林となり、雰囲気は悪くなかった。但し緩やかにくねくねと続くので、高坂峠までが長かった。途中で周囲は植林地になったこともあり、少々退屈して高坂峠に着いた。峠では地蔵さんに挨拶してから、登山コースに入った。始めは尾根筋を歩かず、尾根の西側に広がる植林地の中を登った。ちょっと風情の無い登山道だった。15分ほど登って尾根に出ると、そこに立つ標識には入相山まで715mと細かな数字が書かれていた。尾根歩きとなって少し冷たさのある風を受けるようになったが、弱々しく吹いていたため、あまり気にならなかった。少しは展望も現れて、木の間越しだったが、飯森山や千ヶ峰が眺められた。登るほどに周囲は雑木林となってきた。小さなピーク(750mピーク)を越すとき、また標識に山頂までの距離が書かれていた。あと300mほどmだった。もうそろそろ紅葉が見られる季節だったが、まだ周囲の木立はほんのり色づき出したところだった。その中にあって一本だけが赤くなっていて目に付いた。最後の一登りと言った感じで山頂に着くと、そこは以前と比べて大きく変わっていた。東側の木が伐られたようで、広々とした展望が現れていた。北東の竜ヶ岳から南東の烏帽子山までが遮るものもなく眺められた。それを見ながら昼休憩とした。但し山頂にも北からの冷たい風があったので、食後は日溜まりに入って寒さを避けていた。一休みを終えると下山に向かった。まずは稜線を南西へと歩いて行った。次に小さなピークを越すが、そこにも少し展望があって、今度は北西から北の方向が眺められた。小畑山の尾根だけでなくや千ヶ峰も見えていた。その先でも一つ小さなピークがあり、そこを越して下って行った所が大屋峠だった。そこからは西の斜面を下ることになる。地図では破線の道が描かれているのだが、踏み跡程度の小径が見えるだけだった。その木道を辿り出すも、すぐにあやふやになってしまった。そこで後は適当に下って行くことにした。周囲は植林地で、ときに木に掴まりながら下った。そのうちに登山道に出会えるものと思っていたのだが、作業道の跡のようなものは見えたものの、はっきりとした山道は見えなかった。そのうちに斜面は緩んで谷筋を歩くようになった。地図では林道が描かれているのだが、もう廃道となっているのか、荒れ地になっていた。そこからが大いに難儀することになった。ヤブになっているのは良いとするものの、イバラが多かった。それもトゲトゲしいイバラで、それを切り開きながら歩かなければならなかった。何度もイバラに引っかかって、服はほころびるやら引っかき傷を作るやらで、何とも厳しかった。下るうちに林道ははっきりするのではと期待したのだが、なかなか歩き易くならなかった。どうも林道は使われなくなってから久しいようだった。その林道の雑草が徐々に徐々にと減ってくると、イバラが消えてススキだけとなり、そのうちに雑草の生えていない部分が広くなってきた。漸く林道らしさが出てきたのは岩屋集落が近くなってからだった。手は傷だらけの上に両膝が痛くなっており、もうくたくと言った感じで岩屋集落へと入って行った。 |