紅葉期に波賀町に入って上野集落を過ぎると、その先で野原小学校が近づいて来るが、その背後の尾根が美しく色付いて目を楽しませてくれる。そして漸く波賀町の核心部に近づいたことを実感させてくれる。地図で見るとその尾根を含めて一帯の尾根は阿舎利山から派生しているように見えるが、マンガ谷川がその一帯を分離しており、目立つピークは無いものの一つの山域と言えるかもしれない。その中で野原小学校の背後の尾根にある794mピーク(点名・小林)からその北東のピーク(点名・マンガ谷)を2004年11月20日に訪れた。朝から快晴の空が広がる絶好の日だった。国道29号線は野原小学校の先で大きくカーブを描き、北に向きを変えるが、その方向に入ってすぐの辺りで山裾に墓地が見えた。そのそばには林道も見えていた。その林道を100mほど進むと、路肩に広く空き地が出来ていたのでそこに駐車とした。小学校背後の尾根を登って行く予定だったが、駐車地点よりその尾根の方向に向かう小径が見えたので、それを辿ることにした。歩いて行くと、道そばには以前に何かの設備があったのか、その痕跡のようなものが幾つか残っていた。揖保川に平行して小径は続いており、川岸を見ると木々が鮮やかに色付いていた。小径は尾根に近づいた辺りで怪しくなったため、尾根方向に向かって適当に斜面を登って行くことにした。斜面は疎らな雑木林で、やや急坂と思える程度で登って行けた。少し登ると山道に出会った。その道も北から来ており、どうも先ほど歩いていた小径から分かれていたようだったが、気付かなかった。その道を歩き出してすぐに尾根に着いた。そこには送電塔が建っており、道は巡視路だったようである。そこはまずまず展望が開けており、大甲山が間近に見上げるように迫っていた。足元に野原小学校、そして振り返ると、遠くには三室山も頂を見せていた。そこからはピークまで南西尾根をひたすら登るだけだった。その南西尾根も疎らな雑木林で、良い雰囲気で登って行けた。紅葉は終わりかけていたが、ときおり鮮やかなカエデも目に付いた。200mほど登った辺りで尾根の傾斜がきつくなってきた。そして大きな岩がせり出しているのが見上げられた。その岩場を巻くのに少々手間どったが、いざ大岩の上に立ってみるとそこは見事な展望台だった。視界を遮る木々は無く、南東から北西までがくまなく見えていた。足元に引原川が逆光に光っており、そして東山に黒尾山、大甲山など波賀町南部の高峰が一望だった。思いがけない出会いにうれしくなり、暫しのときを岩場で過ごした。その先はもうきつい坂は無く、のんびりと登って行けた。何度か来た台風のためか、北側の植林地では倒木が目立った。おかげで北の展望もあって、三室山がすっきり眺められたりもした。そして794mピークが近づくと、なだらかに開けた所があり、そこでも一山から東山がすっきり眺められた。この眺めで尾根の位置がよく認識も出来た。その先は植林帯で、程なく着いた794mピークはすっかり植林に囲まれていた。狭いピークで、三角点は落ちた杉の枝にほとんど隠されていた。ピークに立ったと言うだけで、特に印象に残るものではなかったが、そこまでの尾根歩きで十分にお釣りが来る思いだった。昼どきになっており、794mピークでハイキングを終えても良かったが、始めの予定通りの904mピーク(点名・マンガ谷)まで足を延ばすことにした。そして一時間ほどかけて904mピークに着いたのだが、これは少々退屈な尾根歩きだった。もう一帯はほとんど植林地で、その中をひたすら歩くだけだった。着いた904mピークも794mピークと同様、すっかり植林に囲まれていた。ただこの尾根歩きにも見所はあり、ちょっとしたブナの巨木に出会ったり、晩秋の味覚と言えるクリタケに出会ったりもした。904mピークからは東に少し歩けば林道に合流出来るので、その林道で戻ることも考えたが、今一度、展望の大岩の上に立ちたく、往路を辿って戻って行った。
(2004/12記)(2013/4改訂)(2022/3写真改訂) |