大屋町の山を幾つか登っているうちに、大屋町の中央辺りで小ぶりながら独立峰の様相を見せている山が気になってきた。周囲に1000m峰があるので見過ごされがちだが、登る距離も手頃でどのような展望が広がっているのだろうと興味が湧いてきた。そこで、1997年の梅雨の晴れ間の日に訪れた。大屋町和田地区の柳集落へ入り、集落内を通る道が林道となって山中に向かい始める辺りに駐車した。前日に台風7号が通過したが、この台風一過で雲は少し多いながらも、空は澄み切っていた。地図では破線路で描かれている林道を歩き始めた。この林道は程なく終わり、後は沢に沿って続く登山道を歩いた。十分な道幅だったので、どうもこれは今この山で伐採作業が続けられているために作業道として整備されたものと思われた。その作業に従事している人にこの山が「和田山」と呼ばれていることを教えてもらった。道は緩やかで、右手の北東側は杉の植林帯、左手は雑木林が続いていた。道は山頂近くまではっきりと続いていたが、最後は少し傾斜がきつくなって、少し不確かになってきた。しかし一帯は疎らな雑木林で、登るには問題なかった。歩き始めて1時間半近くかかったが、いたって楽な感じで山頂に着けた。山頂一帯は高い木が疎らに生えているため展望はさほどではなかったが、静かな落ち着いた雰囲気が漂っていた。その木陰が涼しく、気持ちの良い風も渡っており快適だった。昼食はその山頂で過ごしたが、今少し展望を得ようと稜線を尾根のままに北東方向に歩いてみた。すると程なく伐採地が現れた。そこが素晴らしい展望地だった。正面は南東方向となるが、須留ヶ峰がこれ以上の見え方は無いと言うほど大きく聳えていた。その左手には御祓山も覗いている。北は杉ケ沢高原の向こうに妙見山、その左を見ると瀞川山から鉢伏山、氷ノ山のスカイラインが広がっている。氷ノ山が意外と近くに見えた。この展望を楽しんでいたが、氷ノ山から瀞川山一帯を厚い雲が覆い出したと思うと、その雲が徐々にこちらに近づいて来た。そして上空を黒々とその雲が覆ったと思いきや、小雨が降ってきた。そのまま佇んでいると、どんどん降りが強くなり、あわてて雨具を着込んで木陰に避難した。午前の天気とは大きな変わりようである。ただ通り雨らしく強い降りは長くは続かず、程なく小降りとなってくれた。それを待って下山とした。同じ道を辿ったのだが、道がしっかりしていたので、下山も楽々と下って行けた。
(2001/12記)(2004/4改訂)(2021/10写真改訂) |