TAJIHM の 兵庫の山めぐり <南但馬 
 
和田山    わだやま 809.1m 朝来市
 
1/2.5万地図 : 大野市場
 
【2009年9月】 No.2 2009-83(TAJI&HM)
 
    スリガ峯の尾根より  2007 / 10

 朝来市大屋町の和田地区は山あいの集落。南に須留ヶ峰が壁を作っており、背後は和田山が立ちはだかる。その二つの山を比べると、須留ヶ峰は兵庫50山にも選ばれている名峰だが、和田山ははっきりとした登山コースが無いためか、どうも地味な存在のようである。但し山上から見る須留ヶ峰の展望は一級で、1997年に登ったおりは、その雄大な展望が印象として強く残っていた。その和田山に立ってもう一度須留ヶ峰を眺めたくなったのは2009年の夏に入ったときだった。ただ2009年の梅雨は異常に長く、しかも週末の雨が多かった。そして確たる梅雨明けも無いままに8月に入ってしまった。8月はやはりアルプスを目指したく、そちらに関心が向かったため、8月末になって漸く和田山を目指すことになった。ところがまた天気の悪い週末になり、とうとう9月に入ってしまった。今度こそはと向かったのが5日の土曜日だった。その5日の天気も始めは晴れの予想だったが、直前になって曇りの予想に変わっておりちょっと躊躇させられたが、雨の予想でも無いので展望ぐらいはあるだろうと予定通り実行することにした。
 5日の空は播州南部こそ晴れていたが、奥播州の一宮町に入る頃には雲の多い空になっていた。そして大屋町に入ったときはすっかり曇り空だった。県道6号線を離れて和田集落を西に抜ける道に入ると、柳集落の手前で道は二手に分かれた。そこは左手、西方向のままに進んだ。少し走った位置に空き地があったが、そこは私有地のようだったのでそこには駐車せず、その先に見えた墓地の前に駐車とした。この日に考えていた登山ルートは、車道を西へと歩いて林道(古屋中の奥線)に入り、林道が北に向かうままに進んで林道終点へ。そこより尾根を北に登って山頂に立つルートだった。そして下山は地図の谷筋に付いている破線路を歩いて柳集落に下り着き、駐車地点へ戻ると周回コースとなる。その考えで西へと歩き出すと何軒か民家を見たが、総て廃屋になっていた。そのまま林道かと思っていると、その先にぽつりと大きな家が建っていた。飛び離れた一軒家のようだった。そこを過ぎると浄水場があり、そこより車道はダートの林道に変わった。そのそばの植林地に「古屋の小倉屋敷跡」と標識があったが、その名の通りの屋敷が建っていたのだろう。林道はすぐに荒れ出して、抉れた所も見られるようになった。もう四駆車以外の通行は難しいようだった。程なく林道は二手に分かれたが、そこにも「古屋の小倉屋敷跡」と標識があった。どうもよく分からない。そこは北へと林道を進んだ。林道はすっかり草深くなった所もあったが、概ね歩き易かった。但し車の通行している様子は無かった。緩やかな上り坂の林道を暫く歩いていると、また林道は二手に分かれた。ここで勘違いしてしまった。本来は左手の最高地点に向かう林道を終点まで歩いて、そこよりそばの尾根を山頂へと真っ直ぐ登って行く予定だったが、右手の東の方向へ進む林道を歩いてしまった。その林道は分岐点の位置より平坦なまま延びており、あまり高度を上げないままに終点となった。そこに着いて漸くおかしいと思い、地図を開いて間違いに気付いた。思わず焦ったが、地図をよく見ると近くの尾根も真っ直ぐ山頂へと続いており特に問題は無さそうだった。但し予定していた尾根よりは標高差にして100mは余計に登ることになるようだった。林道の先には細々とトラバース道が始まっており、始めにその道を歩いて行った。その植林の中を続く小径は数分も歩くと怪しくなったが、その辺りが山頂へと向かう尾根の位置でもあったので、そこより尾根登りを開始した。尾根はけっこう急傾斜だったが、下生えに煩わされることも無く適当な木に掴まりながら無理なく登って行けた。尾根は西側が植林で東側は雑木となっており、尾根筋は雑木の範囲だった。林道を歩いているときは少し蒸し暑さも感じていたが、尾根登りは木々に囲まれて涼しさがあり、休まず登って行けた。数十メートル登ると尾根の傾斜は少し緩くなり歩き易くなった。木々の切れ目より北西方向に尾根が見えたが、それは当初登る予定だった尾根のようで、その位置まで少し高度差があった。尾根はまた傾斜を増したが、下生えは少ないままなのでじっくりと登る感じは悪くなかった。この雰囲気の登りで山頂までと思っていると、アセビが現れて雑然としてきた。ちょっと歩き難いと思っていると、長くは続かずまたスムーズに歩けるようになった。程なく左手、西の方向に展望が現れた。一帯は伐採後の荒れ地のようで、藤無山までの尾根が眺められた。曇り空は続いておりその雲は低いようで、藤無山にはガス雲が少しかかっていた。もう尾根は近くなったようで、尾根は緩やかになってきた。そして害獣避けネットが現れた。そのネット沿いを歩き出すと、続けて二体の鹿の白骨帯がネットに絡んでいるのを見た、まだ毛が付いているところを見ると、そう以前でも無い死骸のようだった。ネット沿いは次第に灌木ヤブとなり、途中からはイバラも混じって俄然歩き難くなった。これはかなわないと思っていると、程なくすんなりと歩けるようになってひと安心だった。そのとき右手数メートルの位置に林道が来ているのを見た。地図に載っていない林道で、ちょうどその位置が林道終点だった。ずいぶん高い位置まで来ている林道で、これなら山頂との標高差は20mも無いのではと思われた。その林道を横目に尾根を歩き出すと、またヤブになってきた。先ほどよりもきつそうだった。山頂まで300mほどの距離が残っておりそれをヤブコギしたく無く、そこで一度林道に下りることにした。林道への下り易い位置を探すと、結局、林道に出会った林道終点位置に戻ることになった。林道は山頂のそばを通り山稜に沿って北東へと延びていた。そこで山頂に近い位置まで歩き、そして山頂方向へ斜面をムリヤリ登った。軽いヤブコギ程度で尾根に出ると、そこはヤブの様子は無く、普通の雑木の尾根だった。その着いた位置よりほんの僅か北に歩いた位置に三角点が置かれていた。歩き始めてから2時間半かかっており、予定していたよりも少し時間がかかったのはヤブの誤算が大きいと思えた。山頂は一見雑木が雑然としていたが、適度な木陰があり程良い風が吹き抜けていた。疲れた体を休めるには良い感じになっていたが、いざ休んでみると少々小バエがうるさかった。ただ遅めの昼食をとるうちにハエは減って、くつろげる雰囲気となった。そこで風の涼しさに誘われて、暫しの昼寝を楽しんだ。その山頂で楽しみにしていたのは須留ヶ峰の展望で、その方向は南東だった。三角点の位置より東に少し入ると、そちらは若木の植林地になっており、そこから須留ヶ峰方向の展望が得られた。ただ須留ヶ峰の山頂はガス雲がかかったり消えたりを繰り返していた。そこで展望を忘れて昼寝としたのだが、その間に空は明るくなっており、気が付くとほぼガスが消えようとしていた。そこでじっくり展望をと植林地に立ってみたところ、大きな木は5m以上ありなかなかすっきり見えなかった。そこで手頃な木に登ってみると、漸く大杉山から須留ヶ峰、スリガ峰と続く尾根が一望出来た。こうして二度目の和田山もひとしきり山頂を楽しんだところで下山に移った。下山は前回に歩いた柳集落に至る柳川沿いの小径を目指すことにした。地図では山頂の北東辺りの肩を通って東の谷筋を続く破線の道である。ただ山頂の様子が新しい林道が出来て変わってしまっているため、慎重に下ることにした。始めに林道の終点位置まで戻り、そこから東、そして北東方向へと向かえる尾根を下って行き、その途中から左手の破線路のある谷に下りて行くことにした。そこでまた林道に下りて、林道終点まで歩いた。そして尾根の起点に取り付いて尾根下りを開始した。この尾根は植林地になっていたが、けっこう急傾斜の上に、手入れが悪いのか荒れ地になっておりヤブっぽくなっていた。もう役に立たなくなったネットが尾根に残っており、そのネット沿いを右に左にと歩き易い所を歩いた。そして尾根を三分の一ほど下った辺りで、尾根を離れて左手の谷へと向かった。破線路のある谷である。その途中で土砂崩れを起こしている所があり、広く山肌が抉られていた。その縁を歩くようにして下っているうちに沢に合流した。枯れ沢でその中を下って行く。やがて左手の沢と合流したが、そこに小径は見えなかった。もう予定の破線路に出ているはずなのだが、どうも小径は沢が荒れて消えてしまったのかもしれなかった。もう適当に歩くしかなく沢の中を歩いて行った。水の流れが見られるようになっており、歩き難い所は縁を歩いたり、ときにそばの樹林帯を歩いたりして下って行った。助かったのは沢がいつまでも緩やかだったことで、高巻きをする所も無く沢歩きとしては易しいと言えた。下るうちに東向かいの山の斜面が近づいて、周囲に植林が見られるようになった。そして漸く踏み跡程度の小径が現れた。辺りは植林地とあって薄暗く、その中を小径は次第にはっきりしてきた。ほぼ柳集落が近くなったとき、真新しい堰堤が現れた。その頃には沢そばの道は林道に変わっていた。天気は沢沿い歩きで苦労しているうちに回復しており、堰堤を見る頃には青空が広がっていた。そして林道を歩き始めると須留ヶ峰がすっきりと眺められた。柳川沿いの林道はすぐに生活道路となって柳集落へと入って行った。
 二度目の和田山登山だったが、どうもコースを変えたこともあり、また山頂そばまで林道が出来ていたり沢の様子が変わっていたりして前回とはすっかり印象が違っていた。まるで初めての山を登った印象だった。そしてこの日のコースはけっこう厳しかったこともあり、和田山は気を引き締めて登る山だと印象を改めた。但し一つの山を登り終えた満足感を十分に持つことが出来た。その気持ちに浸っていると、駐車地点に戻って来たときに気分が暗転した。ちょっと足に痒みがあると足下を見ると、ズボンのすそに血が付いていた。慌てて裾をめくると、足首に山ヒルが貼り付いていた。よく見ると他にも二匹が貼り付いており、また貼り付いていた跡もあり、足は血だらけ状態だった。宍粟の山に登るときは注意しているのだが、朝来の山に登るとあってこの日はスパッツを付けていなかった。ちょっと手抜かりをしてしまったと自分の至らなさに何とも情けない気分になってしまった。
(2009/10記)(2021/10改訂)
<登山日> 2009年9月5日 10:20スタート/10:35最奥の民家/10:48林道分岐点/11:16林道終点/11:22南尾根の登りを始める/12:47〜14:00山頂/14:56広い沢に合流する/15:35〜38林道終点/16:00エンド。
(天気) 曇り空の下を歩き出す。気温はふもとで24℃。少し蒸し暑さがあった。登るほどに気温は少し下がって、蒸し暑さは消える。山頂の気温は22℃。涼しい風があって、ちょうど良かった。昼の空はほぼ曇り空だったが、一部で青空も覗いていた。高い山にはガスがかかったり消えたりしていた。下山中より天気は良くなり、ふもとに下りてきたときはほぼ晴れの天気になっていた。
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西へと続く車道歩きでスタートした 「古屋の小倉屋敷跡」の標識を見た 車道は林道となったが、すぐに荒れ出した
もう一度「古屋の小倉屋敷跡」の標識を見た 標識を近くに寄って眺めた ひたすら林道を登って行く
林道はごく普通に歩けるようになっていた 西に展望が開けると、尾根にはガスがかかっていた 林道の終点に着いて、違う林道を歩いて来たと気付いた
引き返さず、そばの尾根を登った 傾斜はきつかったが、自然林が優しかった 尾根の途中で枯れた松の大木を見た
西に展望が現れて、藤無山を見た アセビが増えてきた 尾根筋にネットの残骸を見た
尾根の間近に林道を見た そこは林道の終点位置だった 林道を横目に尾根歩きを続けた 銅山がはっきり分かるようになった
尾根のヤブがきつくなり、結局林道に下りて、林道歩
きで山頂に近づいた
林道の途中から尾根に戻り山頂に着いた 少し雑然と
した雰囲気だった
山頂の三等三角点(点名・和田山)を見る

山頂近くから見る
須留ヶ峰はガスが
かかったり消えた
りを繰り返してい

山頂で休むうちに
陽射しが現れた

(←)
林地の手頃な木に
登って須留ヶ峰を
眺めた

 (→)
  眺めるうちにまた
  ガス雲が現れた

下山は一度、林道
を終点位置まで歩
いた

林道からは北東に
御祓山が姿良く眺
められた
御祓山を大きく見る 尾根を下るうちに、建屋山にガスがかかり出した 須留ヶ峰にもまたガスがかかってきた
尾根を離れて崩壊地をムリヤリ下った 沢に出るも、沢沿いに小径は見えず沢の中を歩いた 石がごろごろした中に水の流れを見るようになった
植林地に入って漸く小径が現れた 沢沿いを緩やかに下って行く 沢の名は柳川だった 水がきれいだった
沢沿いの道は、林道に変わってきた 堰堤が見えてくると須留ヶ峰の上空は青空だった まだガス雲が須留ヶ峰の山頂にかかっていた
堰堤そばを通り過ぎたとき、堰堤を振り返った 後は舗装林道を歩いて柳集落へと向かった 柳集落内を抜けて、駐車地点へと近づいた