雪彦山と言えば、大天井岳の姿が思い浮かぶ。この大天井岳だけを目指せば1時間ほどで山頂に立てるので、急峻な姿にしては短い時間で山頂に立てる山と言えそうだった。ただその短い時間でひたすら一所懸命に登ることになり、ロープ場、クサリ場、手を使っての岩場登りもあって、けっこう中身は充実している。2010年正月休暇の最終日は、この大天井岳に向かった。ちょっと食べ過ぎですっきりしない体に活を入れたいと思ったとき、大天井岳が思い浮かんだものである。
よく晴れた空の下、いつもの通り賀野神社へと車を進めた。この日はパートナーは仕事始めとあって、単独行動となった。賀野神社の駐車場には数台の車が止まっていたが、入れ替わるように立ち去った。初詣に来ていたようだった。この日はいつものコースを写真を撮りながらのんびり歩く予定だった。いつものコースとは、賀野神社から歩き出して坂根の登山口に下りる。その後は登山コースのままに登って、出雲岩経由で山頂に立つ。そして山頂で昼を済ませて、下山の最短ルートとなる虹ノ滝コースを下って林道に出る。そして賀野神社に戻るというコース設定だった。よく晴れている割には冷え込みは少なく、少しひんやりとしている程度の中、林道歩きでスタートする。登山口までゆっくりと30分かけて下りた。登山道を登り始めると、以前のままの佇まいだったが、コース標識や目印が増えていることに気が付いた。少し赤矢印が目立ち過ぎるきらいはあったが、多くの人が登る山だけに仕方のない事と言える。陽射しの当たる尾根を登っているうちは、木陰に僅かに雪を見るだけだったが、出雲岩が近づいて陽射しを受けにくくなると、登山道上にちらほら雪を見るようになった。出雲岩を過ぎると山かげを登るようになったため、白さが目立ってきた。但しうっすらと積もっているだけなので、特に気になるほどでも無かった。覗き岩を過ぎると陽射しを受けて岩場を登るようになり、気持ちよく登って山頂へ。写真を撮りながらゆっくり登ったので、登山口から山頂まで70分かかっていた。これだけゆっくり登れば足に疲れは無く、いたって気楽だった。天気は良く、まだ正月休暇の人も多いと思われたので、そこそこ人と会うと思っていたのだが、登る途中で人を見かけることは無く、山頂でも一人を見るだけで、何とも静かなものだった。大天井岳に立てば、南に広がる展望を見るのが楽しみとなるが、この日の視界は少しうっすらとしており、瀬戸の島が薄ぼんやりと見えるにとどまった。ところでこの山頂に立つまでは、下山のコースは虹ノ滝コースと考えていたのだが、山頂にあった案内板に書かれていた新しい登山道が気になった。それは虹ノ滝コースの少し北に作られたもので、「新下山道」の名が付いていた。少しある雪を見て、虹ノ滝コースのクサリ場は注意せねばと思っていたのだが、この新下山道に興味を持って、これを下ることにした。山頂の雪は多い所で10センチほどあり、これが北側では少し凍り気味になっていた。そこは急斜面の下りだったため慎重に下ったが、特にアイゼンを必要と感じるほどでも無かった。急斜面を下りきると、その先は雪道ながらごく普通に歩いて行けた。尾根の縦走コースを辿って行くと、程なく新下山道の分岐点に着いた。大きな案内標識があったので、見落とす心配は無かった。この下山道は支尾根に付いており、ごく無難に下って行けた。急傾斜の所にはロープも張られており、虹ノ滝コースと比べると、かなり楽と言えそうだった。分岐点から20分ほどで沢そばに下り着いた。後は沢沿いの道を7,8分下ると、虹ノ滝コースに合流した。新下山道は地蔵岳に立ち寄る楽しみは無いが、多くの人は大天井岳の山頂が目的なので、下山は楽に下れる新登山道が主流になっていくのではと思われた。後は林道に出て、数分歩けば賀野神社だった。この日の登山を振り返ると、やはり山頂が近づいたときの岩場登りは面白く、また新登山道を歩くという新鮮さも味わえたのは良かった。大天井岳登山はやはり楽しかったの思いで帰路についた。
(2010/1記)(2020/8改訂) |