TAJIHM の 兵庫の山めぐり <北但馬
 
東床尾山    ひがしとこのおさん 838.9m 朝来市・豊岡市
1/2.5万地図 : 直見/出石
 
【2011年2月】 No.4 2011-24(TAJI&HM)
 
    作業小屋のそばより山頂を望む  2011 / 2

 東床尾山を雪山として登ってみたいと考えたのは2011年2月のこと。その東床尾山には雪の無い季節には3回登っているものの、一度も大カツラのある一般コースから登っていなかった。糸井渓谷からは93年4月に登っていたが、そのときは大カツラからのコースを知らず、単に地図を見て、らかんの谷から西床尾山、東床尾山と登って、下山は適当に尾根を下ってらかんの谷に下りていた。そこで雪山の東床尾山を登ろうと考えたとき、糸井の大カツラから始まるコースを登ることにした。向かったのは2月の最終土曜日。兵庫全域で晴れの予想だった。但し、但馬は午前は雲の残る天気とのこと。その天気予報通り、生野を通過する頃より上空に雲が広がってきた。この日の心配は糸井渓谷を通る床尾林道を、車でどこまで進めるかと言うことだったが、暖かい日が続いていたので、中程までは進みたいと考えていた。和田山町の県道104号線を西へと走って、糸井橋の交差点で糸井渓谷に通じる県道10号線に入る。それまで路傍に雪はほとんど見られなかったが、進むにつれて雪は少しずつ多くなってきた。それでも路面には雪のかけらも無かった。県道10号線が左に分かれて、最奥の内海地区へと入っても路面はきれいに乾いているのを見て、これは林道も少しは走れるのではと思っていると、林道に入った途端、路面は雪に覆われていた。林道は全く除雪されていないようだった。50メートルほど進んだものの、それ以上は無理となったので、駐車スペースのある林道起点に戻ってそこに駐車とした。結局、林道を起点から歩かなければならなくなった。上空は青空が広がろうとしており、確実に好天に向かっていた。スノーシューをザックに付けて始めはツボ足で歩いたが、僅かな雪でも靴が潜るので、少し雪が増えた位置からスノーシューを履いた。このままずっと白い道かと思っていると、小さな橋を二つ渡った辺りで、一度路面の雪は消えてしまった。陽当たりが良く、雪解けが早いようだった。そこでスノーシューを脱ぐことになったが、また雪の所が現れたり、また消えている所があったりを数度繰り返して、山中に入る頃にはずっと雪道が続くようになった。林道はずっと糸井川沿いを続いていた。その林道に沿って電柱も続くので、どの施設へかと思っていると、森林総合利用施設が現れて、そこまでだった。また雪面にはうっすらとトレースがあったので、東床尾山まで歩かれていると思っていたのだが、それも林道の途中で現れた不動の滝までだった。滝と言っても垂直に落ちる滝では無く、急角度で流れる渓流程度に見えた。その辺りで漸く林道の傾斜が増してきた。そして渓谷は右手から左手に移ったが、その辺りは激しい流れになっていた。その激流部を過ぎると、西床尾山への登山コースが始まっていた。時間に余裕があれば西床尾山へも回りたいと考えていたが、ここまでで1時間ほど歩いており、周回は無理ではと思えた。いっとき斜度を増した林道も再び緩やかになり、両側から迫っていた山裾が少し離れてくると、程なく大カツラへの道が林道から分かれた。そちらへの道も車が通れるようだったが、入口には車は遠慮していただきたい旨の標識が立っていた。その枝道の方向に沢も同じく曲がって続いていた。その枝道も緩やかで、分岐点から15分ほど歩くと、大カツラが見えてきた。そこは広々とした場所で、公園風になってトイレまで作られていた。大カツラの木は巨樹と言うよりもそこそこ大きな木が集団となっている姿で、説明板にはヒコ生えが育ってこの姿になったと書かれていた。ここまで歩き始めてから1時間と45分。1時間ぐらいでは着きたいと考えていたのだが、予想より大幅にかかってしまったことになる。もうここからは登山コースを辿るだけだと、沢にかかる小さな橋を渡った。そして渡った位置で登山口の標識を見たのだが、登山コースはすっかり雪に隠れており、どこが登山道なのかさっぱり分からなかった。コースは何となく沢沿いを北へと向かっているように思えたので、雪の斜面を歩いて堰堤を越えてみたが、やはりはっきりしなかった。そこで地図を取り出してコースを想定することにしたのだが、地図を見て近くの尾根を登って行く方が易しいのではと思えた。緩い尾根では無かったが、真っ直ぐに821mピークへ向かっており、西床尾山と東床尾山を結ぶ尾根に出られそうだった。そこで登山コースは諦めて、その北西に向かう尾根を登って行くことにした。急斜面を斜めに登って尾根を目指す。斜面の雪は柔らかく、スノーシューはけっこう潜ったが、一歩一歩をていねいに登って行った。尾根を辿れるようになると少しは歩き易くなったが、雪解けが進んでいるためか、ときおりぼこっと言った感じで雪を踏み抜くことがあった。そこは灌木が枝を広げており、何度か足を引き抜くのに苦労した。真っ直ぐに登らず、出来るだけ雪が締まっていそうな所を選んで登った。傾斜がきついので、木に掴まったり、ときおり足を止めたりと、足に負担がかからないように登った。東向かいの尾根には林道が付いており、それが始めは見上げる位置にあったのだが、登るほどに同じ高さになり、そして見下ろせるようになった。林道は峠を越えて但東町へと通じているようだった。尾根の傾斜はときおり緩むものの、概ね急角度で続いていた。次第に雪が増えたのか、雪を踏み抜くことは少なくなってきた。左手にも821mピークに向かう尾根が見えており、それと合流すると緩やかな斜面となり、一面真っ白になった所も現れて、雪山らしくなってきた。少し登ると雪に埋まった避難小屋が現れた。床嶺の家と呼ばれているようだが、既に倒壊しており、屋根だけが雪の中からかろうじて見えていた。新築のきれいなときを知っているだけに、残念な姿だった。そこまで来ると北東に真っ白なピークが見えていた。それが東床尾山の山頂のようだったが、少し離れて見えていた。今少し歩かなければならないようだった。そのそばが大カツラから通じている登山コースの合流点だった。こちらは南東尾根を登ったが、登山コースもさほど離れていなかったようである。その合流点の先が一段高くなっており、樹林帯になっていた。そこが821mピークで、主尾根に着いたようだった。主尾根は西床尾山からのコースでもあるのだが、そこにはトレースは見なれなかった。てっきりトレースが付いているものと思っていただけに、少し意外だった。尾根の雪は締まっており、スノーシューは僅かしか潜らないので、尾根の緩やかさと共に、けっこう歩き易くなったと言えた。ここに来れば目印テープも付いていた。もう山頂まで気楽なものだった。山頂へは小さなピークを一つ越すことになる。緩く下って緩く登り返す。そこに作業小屋が建っており、そのそばに立つと、真っ白な東床尾山の山頂がすっきりと眺められた。その姿に東床尾山を目指して良かったと思えたが、意外なことにその北西面にはほとんど雪が付いていなかった。北風で雪が飛ぶのと夕陽が当たるためか、雪解けが速いようだった。山頂へは雪のプロムナードだった。一歩一歩を楽しむようにして近づいた。そして遮るものの無い展望の広がる山頂に立った。雪山の山頂に立つのは、何度味わっても良いものである。ただこの日残念だったのは、視界がうっすらしていたことだった。3週間前にも近くの高竜寺ヶ岳を登っていたが、そのときも春霞の強い視界で展望を十分に楽しめなかったが、どうも但馬の雪山では澄んだ視界との巡り合わせが悪いようだった。ただ3週間前ほどひどくは無く、少し離れた粟鹿山も何とかその姿を認めることが出来た。ひとしきり展望を楽しんだ後は、地表の現れている北西面で少し遅い昼休憩とした。北西に円山川流域の広々とした風景を眺めながらだった。足下に出石の町並みが見えていたが、雪は見られず、春の暖かさに包まれているようだった。西の空はモヤが強いようで高い峰々は見えないものの、円山川のそばに佇む来日岳は目を凝らして何とか見えていた。山頂では30分ほど過ごして、14時が目前となったときに下山開始とした。主尾根にトレースが無かったことで、もう西床尾山へ回ることは考えず、登ってきたルートをすんなり引き返すことにした。それが避難小屋のそばまで来て、大カツラへのコースが分岐するのを見たとき、登山コースで下ろうとの考えが頭をよぎった。そこで登山コースに入ってみたものの、雪のために判然としなかった。目印テープも見えないので無理はしたくなく、あっさりと尾根に戻った。そして自分のトレースが付く南東尾根へと向かった。下りは順調そのものだった。急坂の雪山はトレースがあれば、何の気兼ねもなくずんずん下れる。前方には木立の隙間から鉄鈷山の尾根が見えていた。尾根を下りきって大カツラのそばを通ると、後は林道歩きを続けるだけだった。自分のトレースをただ辿って歩いて行くが、少々退屈なことだった。これも雪の山頂を踏むための代償だと考えて黙々と歩く。その林道の雪もこの日だけでけっこう少なくなったのか、最後はツボ足のトレースがあったことで、こちらもスノーシューを脱いでツボ足で歩いた。それにしても今回で4回目の東床尾山だったが、また糸井の大カツラから始まる登山コースを歩かずに終わってしまったようだった。次はいつになるか分からないが、一度は登山コースなりに東床尾山、西床尾山を歩いてみようと思いながら、駐車地点に近づいた。
(2011/3記)(2020/6改訂)
<登山日> 2011年2月26日 9:48床尾林道起点スタート/10:31森林総合利用管理施設の横を通る/10:51不動の滝/11:16林道分岐点/11:33〜38糸井の大カツラ/北西に向かう尾根を登って行く/13:03避難小屋/13:19作業小屋のあるピーク/13:32〜58山頂/15:13〜22糸井の大カツラ/15:35林道分岐点/16:11森林総合利用管理施設/16:46エンド。
(天気) スタート時は少し雲が見られたが、大カツラに着く頃には雲一つ無い快晴の空となる。但し山頂から見る視界はうっすらとしており、近くこそまずまず見えていたが、遠方は判然としていなかった。気温は木陰で5℃ほどだったが、山頂では10℃近くあった。風はほとんど無く、陽射しの中で暖かく過ごせた。
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林道が雪で覆われていたため起点から歩き出す ツボ足では歩き難くスノーシューで歩いて行く 林道は一部で雪が消えていた
     
森林総合利用管理施設が見えてきた 林道は糸井川に平行して続く 不動の滝は緩い傾斜で、あまり滝らしくは無かった
   
山かげを歩くようになると雪の量は増えてきた 山肌の雪は少ないようだった 山裾が離れて広々とした所を歩いて行く
   
前方に県境尾根が見えてきた ベンチのそばから大カツラへの道が分かれた 沢も大カツラコースに平行する
   
空はすっかり青空だった 「糸井の大カツラ」のそばに着いた 大カツラは幹が何本も集まる姿だった
    
この橋を渡れば登山口だった 橋は先客が渡っていた ウサギの足跡だった 登山コースが分からず、斜面を登ることにした
    
急斜面を斜めに登って尾根を目指す 尾根に取り付くと、歩き易い所を選んで登った 東向かいの尾根を見ると、林道が走っていた
    

 尾根はけっこう急傾
 斜で続いた


   自然林の尾根をひた
   すら登る
    
西を見ると、西床尾山が頂を見せていた 西隣の尾根と合流すると緩やかになった 前方に雪面が広がる風景となった
    

 程なく倒壊した避難
 小屋が現れた 北を
 見ると東床尾山の山
 頂が覗いていた

      東床尾山の山頂は真
      っ白だった
      
    
その先で糸井の大カツラからのコースが合流した 821mピークに着いて主尾根に合流する 山頂へは小さなピークを一つ越すことになる
     
山頂手前のピークには作業小屋が建っている 山頂は目前 白い道をゆっくり登った 山頂に一歩一歩近づくのが楽しかった
    

 すっかり白い山頂に
 立つ


   山頂の一角に山名標
   識を見る
      

 山頂に立って
 南西に西床尾
 山を見る

  作業小屋付近を
  見る 雪は多く
  は 無かった
    

 山頂に立って北の
 尾根を見る

 うっすらとした見
 え方だった
    
上の写真の法沢山を大きく見る 上の写真の高竜寺ヶ岳を大きく見る 上の写真の東里ヶ岳を大きく見る
   

 山頂に立って南東
 から南にかけてを
 眺める
    
上の写真の三岳山を大きく見る 上の写真の粟鹿山を大きく見る 山頂の南斜面は雪が厚く残っていた
   

 昼の休憩は北西斜面
 でとった その一帯
 はすっかり雪が解け
 ていた

   有子山の左手に出石
   市街の一部が見えて
   いた
   
下山を始めて作業小屋の近くに戻ったとき、南
東に鉄鈷山の尾根を見た
大カツラへのコースが分岐したとき、一度そち
らに入ったが、コースが分かりづらく断念する
すんなりと登ってきた南東尾根ルートで引き返
すことにした
急斜面は下山となると早かった 前方に鉄鈷山を見ながら下る 最後はいっそうの急斜面だった
    
足下に登山口に架かる小橋を見る 午後の光に包まれた大カツラを見る 自分のトレースをただ追うだけだった
    
沢の流れが速くなると、不動の滝は近かった この帰路では森林総合利用管理施設に立ち寄った 駐車地点が近づくと、陽の光は赤みが増してきた