2012年の新緑の季節に入ったとき、東床尾山から鉄鈷山までを歩こうと考えた。どうせ歩くのなら周回でと考えて、次のルートで計画した。糸井の大カツラへの道が分岐する地点を起点に、糸井の大カツラコースで東床尾山へと登り、後は尾根を南へと辿って鉄鈷山へ、そして鉄鈷山の支尾根を下って戻ってくるというものだった。その実行日を5月26日と決めていたところ、その日の夕方に用事が出来てしまった。そこでこの計画を別の日にしてもよかったのだが、どうも東床尾山と鉄鈷山の両山を登りたい気持ちが消えず、別のコースで登ることにした。いわゆる短時間で登ってしまおうと言うもので、変更したコースは林道床尾線を市境尾根の峠の位置まで車で行き、そこより二つの山をピストンすると言う、どちらの山も最短距離となるコースだった。そして最初に向かったのが東床尾山だった。その尾根歩きの様子は下の写真帳で見ていただくのが分かり易いので、ここでは詳しくは記さないが、尾根の一部で少しヤブっぽい所があったものの、ごくスムーズな登りだった。そして新緑の美しさを十分に楽しむことが出来た。その尾根歩きで気になったのは、全くクマザサが見えないことだった。他の山でも起きている変化が、ここでも着実に起きていた。まずクマザサが鹿の食害にあって枯れ、次に裸地になる。その後は鹿の嫌う植物が生育するというもので、アセビをよく目にするだけで無く、至る所にウリハダカエデのヒコバエを見た。またイワヒメワラビが育とうとしており、イワカガミの艶やかな葉が辺り一面に広がっている所もあった。どうやらイワカガミも鹿の食べない植物のようだった。ゆっくりと登ったのだが、やはり峠からの尾根コースは一番速い東床尾山へのコースのようで、1時間きっかりで山頂に到着した。まだ10時を回ったばかりとあって、山頂には人影は無かった。おかげでパートナーと二人きりの静かな山頂だった。山頂の佇まいは以前とあまり変わっていないものの、一帯に広がるキンシバイは生育範囲が前よりも広がっているのではと思えた。この日の空気は湿気を十分に含んでいるのか、白っぽい視界になっており、周囲の山並みはうっすらとした見え方だった。また西の空は雲が多く、高い峰はその雲に隠されていた。それでも三岳山や粟鹿山も眺められて、山頂展望としてはまずまず楽しめた。ピストン登山とあって、下山は登ってきたコースをごくあっさりと引き返して、11時台には登山終了となった。歩く時間としては物足りないと言えるが、新緑の尾根は十分に楽しめた。
(2012/6記)(2020/6改訂) |