高峰は宍粟市一宮町の中央部となる三方町の東に佇む山で、三方町からはその端正な姿を仰ぎ見ることが出来る。三方町には古代遺跡を再現した家原(えばら)遺跡公園があり、古代の人も高峰を朝な夕なに眺めて暮らしていたことであろう。この高峰は地元では高峰山とも呼ばれているようだが、この山は周囲の山より高いわけでは無い。その東には大段山から段ヶ峰、千町ヶ峰があり、西には東山に一山と、いずれも高峰よりも高い山ばかりである。その中にあって高峰と呼ばれたのは、麓からすっくと立つ姿を仰ぎ見られてのことだろうか。この高峰を初めて登ったのは95年5月のことで、このときは山頂との標高差の一番少ない草木地区からのコースだった。この下山後に思ったことは、やはり高峰の名に相応しく、西の県道側から標高差のある登山をしたかったことだった。また季節を変えても面白いのではとも思った。
二度目は10年以上経ってしまったが、06年1月で、考えていたとおり雪の季節だった。前年の12月に宍粟市は大雪に見舞われており、その雪がまだまだ残っているのではと考えていたのだが、三方町辺りは路肩や田畑には雪は見られるものの、車で走る分には何ら問題は無かった。どうやら1月に入って雪の降らない日が続いたためであろう。高峰は揖保川と草木川に挟まれており、北東から南西へと延びている山だが、その南西端に近い所より始まる林道で登ることにした。林道入口からだと標高差が600mあり、じっくりと山頂までの登山を楽しめそうである。県道6号線を走って三方町に近づき、前川集落の手前より始まる林道に入った。民家のそばを過ぎると、すぐに雪が現れた。そこを乗り越してその先の駐車出来るスペースまで車を進めようとしたが、雪が固く凍りついており、タイヤがスリップをしてしまった。仕方なくそのそばの路肩に駐車とした。但し雪が有るのはその辺りだけで、その先の林道には雪は付いていなかった。その様子といい、遠くから見た山頂の姿からも雪は少ないと判断して、冬靴は止めて3シーズン靴で歩くことにした。歩き始めると、所々に残っている雪に車の轍が見られた。中腹に見られる無線塔にでも向かっていたのだろうか。暫くは雪を踏むことも無く登っていたが、少しずつ雪が増えて来た。そして路面はすっかり雪に覆われ出した。それでも積雪は3センチほどだった。その雪が増えるのと比例するように、林道からの展望が良くなって来た。西への展望だが、波賀町との境を作る東山から一山、そして藤無山といずれも1000mを越す峰々が眺められた。ただ北にも展望が開けたことで、冷たい北風も受けることになった。標高にして500m辺りまで登ると二つの無線塔が現れ、更に100mほど登ってNHKの中継局に着いたところで林道は終わっていた。その辺りでもまだ地表の現れている所も見られらた。林道終点は山頂から南西に延びている尾根の上まで来ていたので、後はひたすら尾根を辿れば山頂に着くことになる。尾根の様子を見ると、尾根の木立は空いており、雪で分かりにくいが、どうやら尾根道が続いていそうだった。歩き出すと、赤テープが点々と付いていた。はっきりとした尾根なので、その赤テープがむしろ煩わしく感じられた。木立は雑木林とあって裸木が多く、その枝越しに山頂の見えることがあった。尾根歩きとなって、一段と北風が強くなったようである。ときおり倒木地があり、一度南西方向に、生栖行者山と少し離れて黒尾山が望まれた。登るほどに雪は徐々に増え、山頂が近づいて急坂となる辺りでは、10センチほどになって来た。そこでようやくスパッツを付けることにした。その頃より尾根の南面に伐採地が広がり出した。どうやら山頂そばまで伐採地は続いているようだった。その伐採地は陽をよく受ける関係からか、ほとんど雪が付いていなかった。急坂が終わって緩やかになると、尾根はもうすっかり冬姿で、僅かながらも霧氷も見られた。その緩やかなままに山頂に着いた。山頂でも積雪は15センチ程度だった。前回の記憶として山頂の三角点周囲は木立に囲まれているものと思っていたのだが、辺りは倒木が多くあり、少々雑然としていたが、展望も現れていた。倒木越しに北の方向が見えており、藤無山や遠くには但馬の妙見山も覗いていた。そして木立を通してだが、高峰に近い大段山や千町ヶ峰が北東から東の方向に見えていた。山頂はすっかり雪のため、休めそうな所が見当たらない。そこで少し戻ることになるが、雪の無い伐採地に入って休憩することにした。伐採地は南面だけに、尾根から数メートルも下れば北風から離れることが出来た。うっすらと陽射しもあって、暖かささえ感じられた。但しイバラがはびこっているのが難点だった。伐採地だけに視界を遮るものは無く、草木川を挟んで向かいの尾根がすっかり見えていた。本当はそこに最高点として暁晴山が見えても良かったのだが、高峰が低いことと、暁晴山の前衛峰として1050mピークがあって、暁晴山山頂は見えていなかった。まずはのんびりと1時間ほどの休憩をとり、そして尾根に戻った。再び山頂へ、そして山頂を越して北東方向に尾根なりに下って行く。そのまま下ると草木集落へと前回と同じコースとなるので、100m近く下って北西への尾根が分かれると、そちらを下ることにした。その尾根は木立が幾分空いており、やや傾斜がきついこともあって、北の方向に一度展望を得た。この尾根はまずまず楽に下っていけるものかと考えていたのだが、植林地では倒木があり、また雑木林では間伐された木が放置されたままとなっており、それを何度もまたいでいかなければならず、けっこう手こずらされた。間伐された木さえ無ければ、良い感じの尾根と思えたのだが。その尾根を下りきると草木集落につながる車道に出た。もうそこは県道6号線に近く、後は県道を歩いて駐車地点へと戻って行った。登山の後の冬の楽しみは温泉に入ること。この高峰には麓の家原遺跡公園に「まほろばの湯」があるので、車に戻るとすぐに向かそちらにった。そして熱い湯に疲れた身体を浸らせた。
(2006/1記)(2012/9改訂)(2018/8写真改定) |