TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
水剣山    すいけんざん 871.8m 宍粟市
1/2.5万地図 : 山崎
 
【2010年8月】 No.4 2010-77(TAJI)
 
    長水山より  2009 / 8

 標高差と登山の厳しさはある程度は比例するが、尾根の形が緩やかだったり、登山道がきっちり整備されておれば、標高差があっても比較的容易に山頂に立つことが出来る。宍粟の山を考えたとき、水剣山は標高こそ900mに満たない山だが、登山口と山頂との標高差は600mあり、尾根も比較的傾斜がある上に、多少ヤブっぽいこともあって、宍粟の山の中では厳しい部類に入るのではと思える。それだけに山頂に立ったときは充実感があるので、好きな山の一つである。10年8月は、22日から1週間の上海出張があり、その間で少し食べ過ぎてしまった。そのため胃が疲れてしまったのか、空腹感を無くしてしまった。そこで胃をすっきりさせたく少し厳しさのある山を登ろうと考えた。遠出はしたくなく、車で1時間程度で行ける山を考えたとき、水剣山がぴったりではと思えた。ただ暑い季節なので、涼しいうちに登ってしまうことにした。
 29日は目覚めると、まだ薄暗さの残る中、すぐに自宅を離れた。この日は日曜日とあってパートナーは同行出来ず、単独での行動だった。早朝の国道29号線は空いており、南麓の大谷集落には、6時半を回った時間に着くことが出来た。集落を最奥へと進んで林道に入ると、すぐに配水池が現れた。その先に路肩スペースが現れたので、そこに駐車とした。早朝の山裾は当然涼しいと思って車から出ると、むっとする空気に包まれた。気温こそ26℃ほどながら風は無く、湿度は高めだった。その空気のためか、出発準備中にヤブ蚊やアブにまとわり付かれたのは面倒だった。林道は朝の光が届いておらず、薄暗い中を歩き出した。始めは舗装路だったが、途中からダート道に変わった。少し荒れており、轍が掘れていた。この日は運動として登るのが目的なので、ガイド本「宍粟50名山」を参考にして登ることにした。ガイド本では東尾根コースを往路として、西尾根コースを復路として書かれていたが、それを逆回りで歩くことにした。歩き出して5分ほどで、登山口標識が二つ現れた。手前が西尾根コースのもので、十メートルほど先が東尾根コースのものだった。手前の西尾根コースへと入った。小さな沢を渡ると、山腹を横切るようにして西の方向に歩いた。周囲は雑木帯で風は通らず、すぐに大汗となった。道幅は狭く、ときにはっきりしない所もあったが、赤い目印テープが点々とあったので、特に地図を広げなくとも歩いて行けた。やがて尾根を登るようになると、傾斜がきつくなってきた。振り返ると、木立を通して長水山が大きく見えていた。また朝日が届くようになって、辺りが明るくなってきた。急坂とあってまだまだ汗をかくことになったが、この一所懸命に登る感じが、水剣山の好きなところである。どんどんと高度を上げていると、一度尾根が緩やかになって、この西尾根の一つのポイントとなる送電塔の前に出た。周囲は雑木が囲んでいたが、北に水剣山の頂が見えていた。その先は今少し平坦な道が続いたが、雑草が道を隠し気味になっており、少しヤブっぽくなっていた。そのヤブは短い距離で、尾根の斜度が増すと、周囲はまた適度な雑木林に変わってきた。一度西に展望が現れて、スプリング8が小さく見えていた。再び樹林に囲まれた中を登ったが、この西尾根は植林があまり無く、雑木林が続くようだった。登るうちに風が現れて、少しは暑さを和らげてくれた。この尾根の次のポイントは766mピークで、尾根の小さなこぶになっていた。1時間半かかっての到着だった。雑木林に囲まれた狭いピークで、その木陰に涼しい風が渡っていた。そこからは鞍部へと下って行く。「屏風の背」の大きな岩場のそばを過ぎて鞍部まで50mほど下ると、後は山頂まで270mの登りを残すだけだった。途中で西方向に展望があり、日名倉山が姿良く見えていた。始めは緩やかだったが、「明延ピーク」の標識を過ぎると、尾根の傾斜は増してきた。そしてその急坂が続いた。山頂はまだかまだかの思いで登るが、登るほどに風に涼しさが出てきたので、特に厳しいと言うことは無く、ただ一所懸命に登るだけだった。ときに木に掴まったりしながら、漸くの思いで山頂となる中央ピークに着いた。山頂は一段と風が涼しく、暑い盛りの登山としては、何とも有り難いことだった。その山頂の狭さは以前と変わらなかったが、新しい山名標識が立っていた。また南側の木が少し切られたようで、そこに開いた空間から明神山や大蔵山が眺められた。汗の退いたところで、北への展望がある北東ピークに移動した。前回来たときの北東ピークは伐採直後とあって、あっけらかんと北に展望が広がっていたが、この5年で少し変化していた。アセビの木があちらこちらで茂るようになっていたことで、クマザサは痕跡程度になっていた。但し展望の良さは変わっていなかった。西に日名倉山、正面に黒尾山、そして峰旗に暁晴山と、北半分が一望だった。この展望を期待していたので満足すべきだったが、残念なのは前日ほどの好天では無いことで、この日の北の空は雲が多かった。後山の山稜はすっかり雲に隠されていた。氷ノ山も最初は雲に隠れていたが、こちらは休む間に姿を見せてくれた。この北東ピークで展望をゆっくり楽しみたかったが、三角点のある中央ピークと違って全く風が無かった。陽射しが雲に隠されているときは良かったが、陽が当たるともう真夏の暑さで、30℃以上はありそうだった。一通り展望を楽しんだところで、山頂を離れることにした。東尾根コースでの下山を目指す。まずは808mピークまで吊り尾根を歩くことになる。この尾根を歩くのは初登山の94年以来となるが、分かり難い取り付き地点には目印テープが付いており、方向を気にすることも無く、問題無く下って行けた。また途中のヤブも無くなっており、けっこうスムーズだった。この吊り尾根には露岩部があり、そこからは長水山が見下ろすようにして眺められた。808mピークが近づくと、急坂登りとなった。そしてマイクロウェーブ反射板が建つ808mピークに出た。前回にここを通ったときはまだ反射板は無く単なる通過点だったが、一帯は裸地になっており、ちょっとした展望地になっていた。東に向かって雪彦の尾根が一望だった。またうっすらとながら、瀬戸の島も眺められた。ここまで来ると、もう後は東尾根をどんどん下るのみ。尾根筋ははっきりしており、目印テープも相変わらずきっちり付いていたので、足の下りるままに休まず下って行った。この東尾根にも標高570mの位置に送電塔が建っていた。そこを過ぎるとプラ階段もある巡視路を下ることになった。巡視路は尾根を離れて右手の谷筋へと向かうのだが、道としては少し荒れ気味になっていた。土砂が流れて、その小石が巡視路を隠している所もあって、行く手に注意しながら下った。やがて植林帯へと入り、斜面を下りきって林道に下り着いた。朝は薄暗かった林道も、昼が近いとあって明るくなっていた。もう駐車地点までは300mほどの距離だった。
 登山コースとしてはマイナー感を否め無い水剣山だが、予定通りに十分な汗をかいてしっかりと登れた。お腹の調子も、朝と昼を抜いたおかげで、夕方には空腹感が戻っていた。
(2010/9記)(2018/5改訂)(2020/10改訂2)
<登山日> 2010年8月29日 6:53スタート/6:58登山口/7:41〜47西尾根の送電塔/8:24〜26[766m]ピーク/9:01〜06山頂(三角点ピーク)/9:10〜43山頂(北東ピーク)/10:16〜21[808m]ピーク/10:45〜55東尾根の送電塔/11:22登山口/11:27エンド。
(天気) 朝の空は雲の多い晴れ。スタート時は早朝にもかかわらず気温は25℃以上あった。風も無く、朝から蒸し暑かった。尾根を登るようになると、少し風を受ける。風は南からの風で、標高が上がるにつれて強くなり、山頂では快いばかりの風を受けた。その山頂から見る南の空は良く晴れていたが、北東ピークから見る北の空は雲が多く、ガスのかかる山も見えた。また北東ピークは風が無く、陽射しを受けたときは、けっこう暑かった。視界はまずまず良し。下山中に雲の多い空は快晴へと変わってきた。風は少なくなり、30℃を越える厳しい暑さだった。
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配水池の先の路肩スペースに車を止めた 林道はまだまだ薄暗かった 西尾根登山口に着く 少し先に東尾根登山口も見えていた
小さな沢を渡って西の方向に歩いて行く コースは分かり難かったため、目印テープを追って登
った
朝の光が、周囲の木々に当たり出した
コースは巡視路のようで、プラ階段を登ることが多か
った
木に写る木の葉の影を見る 緩やかな尾根を歩くようになった そこが西尾根だっ
西尾根の途中で送電塔に出会った 西に見える白い建物は、大撫山の天文台だった 南西方向の上牧谷集落は、田圃が少し色付いていた
送電塔のそばからは山頂が望まれた 山頂を少し大きく見る 送電線が延びる西の方向を眺めた

西尾根の登りを続
ける

  登るうちに南の方
  向が開けるときが
  あった
右上の写真に写る新龍アルプスを大きく見る スプリング8の方向を大きく見る
白旗山を大きく見る 766mピークは樹林に囲まれて薄暗かった 東向かいの808mピークを望む
766mピークの先で「屏風の背」のそばを通る 尾根の木立は空いていた 西に展望が開けたとき日名倉山が望めた
日名倉山を大きく見る ごく小さなピークに「明延ピーク」の名があった 振り返ると、766mピークが眺められた
緩やかな尾根だったが 山頂へと急坂が続いた 東に808mピークを見る
漸く山頂が目前になった 山頂には新たに山名標柱が立っていた 三角点は以前と比べて赤の色が薄れていた
周囲の樹林を眺めた 山頂からは南東から南にかけて展望が開けていた
左上の写真に写る明神山を大きく見る 山頂からも新龍アルプスが眺められた 三角点ピークを離れて北東ピークに向かった
北東ピークはアセビが茂っていた 北面の伐採地もアセビが増えようとしていた 北の空は雲が多かったが、視界は悪くなかった
北東ピークは以前と変わらぬ好展望地 北半面が一望だった 後山は山頂を雲に隠されていた
黒尾山を大きく見る 峰旗を大きく見る 左の写真に写る暁晴山を大きく見る
         

植松山から大甲山
の尾根を大きく見


  荒尾大和大甲山を
  大きく見る

氷ノ山は始め雲に
隠されていたが、
休むうちに姿を現
した

三室山は山頂をチ
ラリと見せていた
北東ピークを離れて東尾根に向かう 下るうちに吊り尾根を歩くようになる 露岩地が現れる 南に向かって展望が開けていた

露岩地からは長水
山が見下ろす形で
眺められた

  長水山を大きく見
  る
808mピークが近づくと急坂になってきた 808mピークに立つ そばに反射板が見えていた 反射板の位置から808mピークを見る

808mピークか
ら東の風景を眺め


  東尾根を下って行
  く
東尾根の登山道は無理のない道だった こちらの尾根でも送電塔と出会った 送電塔のそばからは長水山が眺められた
南東方向に見えるのは宮山だった 送電塔の先で大岩が現れて、そこから長水山が望めた 尾根道は緩やかになった
尾根を離れてプラ階段の巡視路を下って行く この巡視路は荒れている部分も多かった 下るうちに植林が増えてきた
林道に着いて、東尾根コースの登山口標識を見る 後は林道を戻るのみ 昼となって少し明るかった 駐車地点が見えてきた