雲須山は点名でもあり「兵庫丹波の山」でもその名で紹介されているが、調べるとどうも正しくは雲頂山のようで、古い資料には雲頂山の名を見ることがあった。ただ雲頂山では仏教臭が強く感じられ、雲須山の名の方が気に入っているので、こちらの名が定着すればと思っている。その雲須山には1996年に畑林道を利用して登っていたが、黒川温泉側からも登ってみたいと思っていた。それを実行したのが初登山から22年後の2018年6月のことだった。
この日の天気予報は晴れだったが、それは神崎町までで生野峠が近づく頃には上空はすっかり曇り空に変わっていた。銀山湖のそばを走っていると、雨粒のぱらつくときもあった。それでもいずれ晴れてくるだろうと思って気にせず黒川温泉に向かった。黒川温泉は黒川ダムの間近にあるが、更に近い位置に黒川自然公園センターがあり、そこの駐車場に車を止めた。薄黒い雲が広がる空を眺めながら、まずは黒川ダムへと近づいた。ダムには階段が付いているいるものの、敷地内は立入禁止になっていた。そこでダムの下を通る道を東へと歩くと、ダムの東側斜面に遊歩道が作られているのが分かった。ほぼ階段道だったが易しく登ってダムのそばに出た。曇り空とあって湖面は暗かった。その広い湖面を挟んで北西の対岸には青倉山が見えていた。その黒川ダムからは東の湖岸道路に入って北へと歩いた。左手に湖面を見ながらだった。そのうちに東へと歩くようになった。湖岸道路を離れたのは雲須山山頂から見ると南西の位置で、ダム湖が大きく東へと切れ込んでいる位置だった。尾根を目指して適当に斜面を登った。一帯は若木の植林地でイバラが多くあってやっかいだった。それもすぐに造林用の作業道に出会えて、それを歩くようになって楽になった。作業道は斜面につづら折れの道として付けられており、易しく尾根に出た。尾根にも作業道は続いておりそれを辿っていたところ、ネットが現れてそれに沿って歩くようになった。一度ネットを越えて別の登山道に入ったが、尾根筋から次第に離れ出したので、ネットのそばに戻ってきた。後はずっとネット沿いを歩いて山頂に近づいた。そして山頂が見えてきたときのことだが、前方に鹿を見るときがあった。当然ネットから離れて逃げるものと思っていると、何とその鹿は軽々とジャンプしてネットを越して別の方向に逃げてしまった。その辺りのネットの高さは1.5m程度とやや低かったのだが、その程度の高さでは鹿は防げないようだった。山頂に着くと、ネット越しに三角点を見た。どうやってネットを越そうかと思ったが、よく見るとネットには繋ぎ目があって、それを解いて中に入った。そこは植林地に囲まれてほとんど展望は無かった。その辺りよりネットはダム湖の方向へと続いていたので、そのネット沿いに西へと歩くと、ネットの南側は若木の植林地とあって一気に展望が広がってきた。また天気も一気に変わって瞬く間に青空が広がってきた。始めに南の方向の展望が現れて千ヶ峰が青空の下にすっきりと望まれた。更に西へと歩くと今度は黒川ダム湖が足下に現れ、その背後には遠く三室山が望まれた。氷ノ山の方向も見えていたが、そちらはまだ雲が広がっていた。まずはダム湖を見る位置で昼休憩とした。休むうちにすっかり快晴となり、氷ノ山も姿を現してきた。その好展望も一帯の植林が若木だったためで、いずれ生長すれば展望は閉ざされるものと思われた。その雲須山からの下山は西南西の方向に延びる尾根を下ることにした。その尾根がダム湖への最短距離であり、尾根にはネットが続いており細々とながらネット沿いに小径が付いていた。その小径を歩いて尾根を下った。途中まではずっと足下にダム湖を見ながらで、悪くないコースだった。途中から植林地に入って視界は閉ざされたが、歩き易さは変わらずスムーズに湖岸道路に下り着いた。後は湖岸道路を歩いてダムに向かった。快晴となって湖面は明るく、周囲の山並みも明るかった。その風景を眺めながらとあって退屈はしなかった。ダムに着くと天端を歩いてダムの西側に回り、そちらに建っていた展望台から雲須山を眺めたりもした。そして駐車地点の黒川自然公園センターへと戻った。この地に来れば黒川温泉に立ち寄ったのは言うまでもない。
(2018/7記) |