TAJIHM の 兵庫の山めぐり <中播磨
 
障子場    しょうじば 883.7m No.2 神河町
薬師山    やくしやま 510.4m No.1
 
 
1/2.5万地図 : 生野
 
【2009年11月】 2009-109(TAJI&HM)
 
    大山集落の播但連絡道に近い位置より  2009 / 11

 時間が空いたときは、たまに県立図書館を訪れて郷土資料を眺めることがあるが、2009年11月の某日に訪れたときに見た本が「大山の郷 いろりばた」だった。平成20年11月に神河町の大山地区が発行したものだったが、その本に紹介されていたのが障子岩だった。大山地区の最高峰は障子場とあり、その山頂より50メートルほど下にあるのが障子岩で、その上に立つと遠く峰山や砥峰高原も見えると書かれていた。また障子場の前衛峰が薬師山で、その裾野にハイキングコース「薬師山やすらぎの森」が出来ていることも紹介されていた。これを見てすぐに頭の中に計画がまとまった。まずは「薬師山やすらぎの森」を歩いて薬師山へと登り、次に障子岩を訪ねる。更に障子場まで登ってしまおうというものだった。早速の実行をと、向かったのは同じ月の勤労感謝の日だった。
 朝の神河町の空はすっきりと晴れていた。国道312号線を走って大山小学校を左手に見ると、すぐに右手に七宝寺橋が現れて、それを渡った。細い車道を走ると、すぐに七宝寺のそばに着いた。寺の南側が駐車場になっており、「薬師山やすらぎの森」の案内図が立っていた。ハイキングコースはその奥から始まっているようだった。ところでその駐車場だが、一本のカリンの木が黄色い実をたわわに実らせて目立っており、その根元には落下した実が盛り上げられていた。また駐車場は西への展望が良く、入炭山の前衛峰が正面にどんと眺められて、ハイキングを始める気分を高揚させてくれた。「薬師山やすらぎの森」のハイキングコースに入ると、雑木林の落ち葉道を西へと歩い行く。薬師山の南西尾根上に出ると、そこは卍広場の名で東屋も建っていた。展望所にもなっており、駐車場よりも広々と入炭山の尾根が眺められた。そこを起点に尾根道を歩き出すと、そこは遍路道になっており、四国八十八箇所になぞられた石仏が小さな祠に入って点々と置かれていた。遍路道は落ち葉に覆われており、それを踏みながらゆっくりと登っていたところ、途中から植林地の中を下り出した。尾根をずっと登って薬師山へ行く予定だったので、尾根道を離れてしまったようだった。その下り坂にも石仏が続いていたので、どうやら遍路道のままに歩いてしまったようだった。駐車場の案内図をよく見ていなかったため、何処に行くのか分からなかったが、遍路道の行き着く先も知りたく、引き返さずそのまま下りを続けることにした。数十メートルほど下って広場になった所に出ると、その先でコースは二つに分かれていた。一つは狐の踊石に向かう道だったが、もう一つに薬師の文字が見えたのでそちらに向かうと、その道は更に二つに分かれた。その一つに障子岩の名があったので、当然障子岩コースに入った。急斜面に丸太の階段道が付いていたが、階段はすぐに終わって、ジグザグで急斜面を登って行った。面白いのは標識で、ときおり現れる標識には障子岩までの距離が何とも正確な表現で書かれていた。「あと1326m」と書かれた位置では、一度外れた尾根コースが合流した。そこからはハイキングコースの雰囲気は消えて、植林地に付く山道をただ登っているだけの感じになった。「あと1060m」が現れて、次に「あと985m」が現れると、尾根の傾斜は緩やかになって漸くのんびりと歩けるようになった。雑木林も現れて雰囲気は良くなったが、展望は全く無かった。再び植林地を登るようになり、程なく「あと760m」に着いた。そこは小さなピークになっており、薬師山の山頂ではと思われたが、そこに三角点は無かった。そこでピークの位置を確かめようと地図を見ると、やはり薬師山のようだった。但し三角点記号は少し西寄りに付いていた。そちらへは平坦になっていたが、特に小径は見えなかった。適当に間伐材をまたいで行くと、数十メートルほど歩いて三角点(点名・宮ノ谷)の前に出た。ピークから2mほど低い位置だった。これで現在地がはっきりしたことになる。そこはすっかり植林に囲まれていた。手入れが良くて整然としているのは悪くなかったが、展望のかけらも無かった。ピークに戻って障子岩を目指して行く。尾根の方向は変わって、東へと歩くようになった。始めに緩く下って緩く登り返す。その辺りはけっこう気楽な感じで歩いて行けたが、次第に尾根の傾斜が増してきた。尾根ははっきりしなくなり道も分かりにくくなったが、目印テープが点々と付いていた。またときおり「あと275m」と標識も現れたりしたので、コースを外れる心配は無かった。ただ急傾斜はずっと続いており、その傾斜は更に増しているようだった。それだけなら良かったが、地表には枝打ちされた枝や間伐材が多くあり、それに足を取られることが多くあった。そのうちに小さな岩が見られるようになった。ときに大岩も現れて障子岩に近づいたのではと思わされたが、また純然たる植林地に戻った。距離的にもうそろそろ障子岩に着いても良い頃ではと思い出したとき、左手前方に木立の空いた所が見られて、そこに岩も見えていた。少し小さめの岩なので違うのではと思いながら近づくと、それが障子岩だった。山肌から突き出るように現れており、その上面が平らになっていた。なるほど表面に格子模様が付いており、その名の由来が頷けた。ただ6,7メートル四方の大きさからして、畳み岩の名が相応しいのではと思えたりもした。いざその上に立ってみると、やはり展望は素晴らしかった。南西には七種山、正面は入炭山、そして北西には生野高原と、遮るものの無い展望が広がっていた。視界は澄んでおり、すっきりと山並みが眺められたのは良かった。ただそこは山頂では無いので、やはり昼休憩は山頂でしたいと、長くも休まず尾根登りを続けることにした。その先も植林地の急尾根登りが続いた。間伐材だけで無く、今度はシダ類も見られるようになって、障子岩までよりも厳しい登りだった。もう目印は見えなくなっていたので、適当に歩き易そうな所を探して登って行く。あまり登山をしている雰囲気では無く、単に植林地の急斜面で苦労しているだけだった。それが標高で850mを越えて、一気に緩斜面になった。尾根もはっきりしてきた。地図を開くと、山頂までそのなだらかなままに登って行けるようだった。周囲の木立は雑木林となり、また足下は丈の低いササとなって、風景も優しげな姿に変わってきた。漸くハイキングをしている気分になれた。カラマツ林も現れて、残り少ない黄葉が青い空に鮮やかに見えていた。そののどかなふんいきのまま障子場の山頂に着いた。山頂には三角点が無いので、一番高い位置を山頂と思うしかない。その頃には上空に雲が増えており、ときおり陽射しが隠されるようになったが、風は無く穏やかな雰囲気だった。陽射しが現れると、まさに小春日和だった。その中でパートナーと静かな昼どきを楽しんだ。雰囲気としては悪くない山頂だったが、ただ展望は良いとは言えなかった。木立を通して笠形山や七種山が見えるにとどまった。ところでこの障子場のことだったが、「大山の郷 いろりばた」では標高は849mとされていた。それはちょうど尾根が急斜面から緩斜面に変わった辺りとなるが、大山地区の最高点とも書かれていたので、やはりこの882mピークを指すのかも知れなかったが、どうも判断の迷うところだった。昼休憩を終えて、下山をどうするかだったが、特にコースは決めていなかった。障子場まで無難に登れるようであれば、登ってきたコースを引き返そうかと考えていたのだが、どうも植林地ばっかりだったことで面白みに欠けるきらいがった。そこで下山はコースを変えることにした。それは薬師山の北の谷を下って再び薬師山に立とうというもので、地図では谷に破線の道が描かれている。始めに北へと尾根を歩いた。すぐに植林帯に入って858mピークに立ったが、その小ピークに立ったのは単に位置を確認するためで、そこから少し戻って西方向の谷へ向かって植林の急斜面を下った。尾根からは破線の道が始まっているはずだったが、特に登山道は見えなかったので、適当に下るしかなかった。急斜面を慎重に下って谷筋に着いたが、そこにもはっきりとした道は見えなかった。倒木が多くあり、何となく荒々しさが見えるので、どうも風水害で道は消えてしまったようだった。そこで僅かな水の流れが見える沢の中を歩いたり、踏み跡程度の小径を辿ったりと、とにかく谷筋を下って行った。それを30分ばかり続けると、林道の終点に下り着いた。但しその林道は大山地区にはつながっていない。そのまま沢筋歩きを続けたかったが、その辺りから沢は急傾斜となり出したので、少し早かったが薬師山を目指して山腹をトラバースして行くことにした。その山腹は若木の植林地になっており、見た目は優しかったのだが、いざ歩き出すと残された倒木が多くあって、それを越して行くのが一苦労だった。少しずつ高度を上げて行くと、途中からは純然たる植林地になって、ぐんと歩き易くなった。但し地形が難しかった。小さな山ひだが多くあり、それを越すうちに現在地を掴みづらくなった。その山ひだの一つが尾根のようになっており、薬師山に繋がっているのではと思えたが、今少し先ではと思って南西方向に向かっていると、その先に高い位置が見えないことが分かった。やはり本命の尾根を通り越したようだった。振り返ると北の方向に薬師山らしいピークが見えている。ちょっとがっかりしてしまった。地図を見るとそのまま南西方向の谷に下れば大山地区に出ることが分かったので、もう薬師山に向かう気持ちは消えてしまった。谷筋へ向かって植林地の中を下って行く。沢に下り着くと、特に小径は見えなかったが、木立は疎らで下生えも少なかった。沢に沿って歩き易い所を選んで歩いて行くだけだった。ただ沢の傾斜が急になるときがあり、そこは高巻きにしてやり過ごしもしたので、ちょっぴりワイルドな下りだった。その沢沿い歩きの途中で林道に出会ったが、その林道も七宝寺への道にはつながっておらず、沢沿い歩きを続けた。それにしてもこんなに道の無い所ばかり歩くようなら、障子場からすんなりと登って来たコースを引き返した方がはるかに良かったのではと思ってしまったが、もう後の祭りだった。ただこれだけ体を動かして歩いたおかげで、すっかり体全体がほぐれており、全身運動をした快さはあった。その沢沿い歩きは、最後に突然のように車道終点に出た。その先にゲートがあり、そこを通ると、もう七宝寺はごく近い位置に見えていた。結局下山は、道無き所を最後まで歩いたことになってしまった。改めて地図の破線路は当てにならないことがあると、身に染みて知った日だった。
(2009/12記)(2020/9改訂)
<登山日> 2009年11月23日 9:15駐車場スタート/「薬師山やすらぎの森」を歩く/9:35障子岩コース分岐点/10:05〜15薬師山/10:58〜11:08障子岩/11:56〜12:35障子場/12:43[858m]ピーク/12:56沢そばに下り着く/13:21〜30林道終点/14:30トラバースの末に沢に下りる/14:46林道終点(その林道は歩かず沢沿い歩きを続ける)/15:02大山集落の最奥部に出る/15:09エンド。
(天気) 朝から快晴で、澄んだ青空が広がっていた。視界も良く澄んでいた。朝の気温は9℃ほど。昼が近づくにつれて雲が現れ出したが、空の半分を占めるほどでも無かった。山頂は風は無く、陽射しがあるときはぽかぽかと暖かかった。午後に入ると薄雲が広がるようになり、下山を終えたときは薄曇りの空となっていた。
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七宝寺前の駐車場に着く 黄色い実を付けたカ
リンの木が目に付いた
カリンの木の根元には落ちた実が積まれていた 駐車場からは西に展望が広がっていた 入炭山
の前衛峰が大きく眺められた
「薬師山やすらぎの森」を歩いて行く 黄色いカエデが朝日に照らされていた 卍広場の東屋を見る
 卍広場からは西に
 向かって好展望が
 広がっていた

   尾根コースは遍路
   道になっていた 
   八十八ヶ所になぞ
   られた祠が点々と
   置かれていた
遍路道のままに歩いて行くと、下り坂になって
護摩道場に下り着いた
障子岩コースが現れた 急坂をジグザグで登っ
て行く
コースには障子岩への方向を示すへ文字標識が
点々とあった
尾根コースと合流する 尾根を歩くようになっ自然林も現れた 薬師山の山頂はすっかり植林地だった
山頂近くにあった三角点(点名・宮ノ谷)を見る 三角点の周囲も植林が取り囲む 薬師山山頂に戻って、次に障子岩を目指す
ずっと植林地を歩くが、次第に傾斜が増してきた パートナーが間伐で倒された木をまたいでいる 急斜面を登っていると大きな岩が何度か現れた
ひたすら植林地を登る 漸く障子岩が現れた 障子岩のそばに立つ 上面は平らになっていた
障子岩の表面は名の通りに障子模様になっていた 岩の上からは西に向かってすっきりと展望が広がっていた
右上の写真の暁晴山方向を大きく見る 上の写真の生野高原方向を大きく見る
ウリュウドの方向を見る 足下に大山小学校を見る 障子岩の地点は標高800mとなっていた
尾根歩きを続ける シダがはびこり出した ときにヤブコギ状態になった 急坂を登り切って、尾根が緩やかになった
木立を通して障子場の山頂を見る 植林に替わって自然林が見られるようになった 足下には小さなササが広がっていた
落葉したカラマツ林を見上げる 良い雰囲気のままに山頂に近づいた 山頂は陽射しがくると小春日和と思える暖かさだった
山頂の木に登って南に笠形山を見る 山頂から木立を通して南西に七種山を見る
山頂を離れて主稜線を北へと向かった 858mピーク手前より谷に向かって植林地を下る 沢そばに下り着く 沢は荒れていた
沢沿いを下って行く 途中では害獣除けネット
に沿って歩いた
沢そばを歩いていると傾斜のきつい所があり、
滝になっていた
林道に下り着いたが、この林道は沢から離れる
だけなので歩かないことにする
薬師山に向かうべく、伐採された山肌に取り付く 厳しい倒木地を越すことになった 次第に歩き易くなる 但しずっと植林地だった
薬師山につながる尾根に思えたが通り越してし
った
結局、薬師山に戻ることを諦めた 後は沢沿い
を歩いて大山集落に向かった
林道に出たが、この林道も大山地区につながら
ないため沢沿い歩きを続けることにした
沢の風景を楽しむ 突然のように舗装路に出た もう七宝寺は目前だった