TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
笛石山  ふえいしやま 894.5m No.2 宍粟
後山   うしろやま 1344.4m No.7 宍粟市
美作市(岡山県)
 
おごしき山 (大甑山) 1095m No.2 宍粟
 
1/2.5万地図 : 西河内
 
【2006年4月】 2006-25(TAJI&HM)
   (笛石山) (後山) 千種町岩野辺地区より   2006 / 1

 冬になると、やはり雪のある山に登って雪山の美しさに触れたくなる。2005−2006年の冬はシーズン始めから雪が多く、どの山も雪を早くからまとっていた。そこで晴れた日は出来るだけ雪山を目指そうと北の山に足を向けていたのだが、2006年1月下旬に植松山を登った後は、どうも休日になると北の天気は今一つ良くなかった。植松山の次は笛石山と決めていたのだが、延び延びとなっていた。そして2月の半ばを過ぎてそろそろ休日の天気も良くなるのではと思え出したときに、自身が足に怪我(左足甲のねんざ)をしてしまった。暫くはギブスを付けることになり、ギブスが外れても強い痛みが残っており、雪山はとうてい無理だった。そのため天気の安定しだした3月は、とうとう雪山には行けずに終わってしまった。ただ足の痛みは徐々に薄らぎ、足に踏ん張る力が少しは戻って来た。そこで4月に入って最初の日に、漸く笛石山を目指すことにした。例年なら4月の初めと言えば、宍粟市と言えども里にはほとんど雪は見られないところだが、3月末にまた雪があり、千種町はどの家の屋根にも雪が載っていた。3月初めではと、一ヶ月は勘違いしそうな雪の風景だった。前回の笛石山登山は、登山道の有無も分からず、地図を見て南麓側から登ったのだが、今回は板馬見渓谷側からの登山道を利用することにした。板馬見渓谷の林道を歩くとなれば、駐車地点は松ノ木公園となる。林道を歩き始めると、道の上にすぐに雪が現れた。周囲の山肌も雪をまとっており、山中はまだまだ冬の姿だった。さほど歩かないうちに、渓谷にかかる丸太橋が現れた。その橋のたもとに「笛石山登山口」の標識が立っていた。その橋を渡って登山道に入る。登山道は雪に覆われてはっきりとしていなかったが、目印テープもあって何とはなしに辿って行けた。雪も5cmほどと大したことは無かった。この登山道は笛石山の北東尾根に向かうのだが、尾根に近づくほどに雪は増え、それにつれて登山道はいっそう分かりにくくなって来た。尾根の方向は分かるので、そこを目指して適当に登ると、歩き始めて50分ほどで尾根に着いた。もう後は尾根を辿るだけである。進むほどに更に雪が増えて来たため、山頂が近づいたところで漸くスノーシューを履くことにした。その直後に猫石の標識が現れた。猫石とは初めて聞く名だったが、この日の朝、笛石山に近づいて行ったとき、その山頂の東面が広く伐採されているのが見え、その伐採地の中に一つの岩がぽつんと現れているのが見えていた。きっとその岩のことだろうと思い、展望の期待出来ることでもあり、早速向かうことにした。少し下ることになったが、2,3分歩くと伐採地に出、そこに小ぶりな岩が見えて来た。高さは2mほどか。そこに来て一気に展望が広がった。東には植松山、正面は鷹巣の山並み、その右の日名倉山は間近いだけに大きかった。猫石は雪をまとっており、遠くから見ていると登れそうには見えなかったが、近づくとちゃんと登れることが分かった。すぐに岩の上に立った。もう絶景だった。この猫石に出会えただけで十分の思いで眼前に広がる風景を楽しんだ。そのとき急に気が付いたのだが、93年に訪れたときに山頂近くで出会った岩は、どうやらこの猫石だったようである。この猫石から下りて東側から改めて眺めると、なるほど猫が背中を丸めて座っている姿に見えていた。その猫石を後にして山頂へと向かう。ほぼ山頂(と言うよりも後山の尾根の一ピークなのだが)に近いこともあって、数分も登れば山頂に着いた。前回は三角点を見て山頂と分かったが、今回は逆で、三角点は雪に隠されていたため、山名標識で山頂と分かった。ごく平凡な山頂だが、ともかく山頂に着いて一安心である。以前と同じく北の方向に少し展望があり、天児屋山から三室山にかけての尾根が眺められた。そちらの空は薄くガスがかかっており、山並みは淡い色合いで見えていた。ここで一休みとしたが、この時点でまだ10時半だった。この日、笛石山を登るに当たって別のアイデアを持っていた。それは足の具合さえ問題なければ、尾根をそのまま西へと辿って、後山を目指そうと言うものだった。冬の後山には03年2月に岡山県側から登っていたが、兵庫県側にも登山道があることでもあり、登る機会があれば登ろうと考えていた。幸い笛石山の山頂に立っても、足の状態は少し痛みがあるだけだった。歩く分には問題無しと判断して、そこで少し厳しいかと思えたが、久々の雪の感触をもっと楽しもうと、10分ほどで笛石山山頂を切り上げると、後山へと尾根歩きを再開した。2時間ほど歩けば山頂に立てるのではとの考えを持ちながら歩を進める。笛石山までのコースでも全くトレースは無かったが、その先にも当然トレースは無く、自分で一歩一歩付けていくしかなかった。尾根の傾斜は緩やかだったが、次第に雪の量が増えて来た。周囲は全く雪の世界で、3月初めと言ってもよさそうな風景だった。数日前に雪が降ったとあって雪質は軟らかく、スノーシューを履いていても30cm以上もぐることもあった。尾根は特に厳しい所は無かったが、アップダウンがあり、倒木もあって、雪質と共に徐々に疲れさせられた。笛石山を離れてより、周囲の木立に視界は閉ざされていたが、980mほどの小ピークに達したとき前方が一気に開けた。そして後山が堂々とその姿を現した。既に笛石山を離れて1時間ほど経っていたが、山頂はまだまだ遠くに見えていた。この頃より雪質の柔らかさのため、一足ごとに力を要し、徐々に足に疲れが出てきた。また一ヶ月半前にネンザした左足甲が再び痛み出した。どうやらスノーシューが左右に曲がることにより、足に無理な力がかかったためのようだった。次第に休憩間隔が短くなって来た。12時を回ったところで、とうてい13時には山頂に着けそうもないと分かり、小さなピークで一休みとした。そこは南の方向に少し展望があり、そこに見える日名倉山を眺めながら、手早く昼食を済ませた。また一歩一歩尾根歩きを続けて、13時を回って1253ピークに着き、南からの尾根と合流した。北方向に山頂を目指す。その尾根歩きとなって北西からの風をまともに受けるようになった。一気に身体が冷え込んで来た。周囲には薄くガスがかかっているのか、木の間から見える風景は薄ぼやけており、足がなかなかはかどらないこともあって、少しばかり不安な気持ちも起きて来た。その気持ちは、4月となって日没が延びていると考えることによって押しやり、先を目指すのみ。その山頂の見えることもあった。板馬見渓谷からの一般ルートとの合流点に着いたのは13時20分。あと330mと標識が立っていた。その先にもトレースは見られなかったが、距離が分かって気分的には楽になった。ただ雪は一段と深くなり、数十歩歩いては一休みの状態は続いた。そして山頂に着いたのはは13時40分。笛石山山頂を離れてから、ちょうど3時間が経っていた。無人の山頂だったが、そこには幾つもの足跡があり、山頂の雪は踏み固められていた。どうやら岡山側から登山者があったようだった。山頂からの視界は薄ぼやけて、すっきりとした展望は得られなかったが、そんなことよりも、とにかく山頂に立てただけで十分に満足だった。雪山の山頂に着くことは、どの山であっても達成感があって良いものである。その山頂は北西風が一段と強く、寒々としていた。それでも20分ばかりの時を過ごして、14時となったところで下山とした。下山は少し戻って一般道のルートで戻ることを考えていたのだが、雪山でもあり、どこを歩いても大して変わらないと思え、そこで東尾根を下って、おごしき山経由で下山することにした。この東尾根のルートは正解だったようで、少し下ると風の影響は受けなくなり、尾根も緩やかとあって、のんびりムードで下って行けた。ただ雪が減ってきたこともあって、所々で雪を踏み抜いて、スノーシューが少しずつ重荷になって来た。がて木立を通して大馬鹿門が見えて来た。そして40分ほどで、大馬鹿門のあるおごしき山に着いた。大馬鹿門の土台には薄っぺらな平たい石が敷き詰められているが、その上で一休みしようと腰掛けてみた。すると石は柔らかい陽射しに照らされていたためか、ほの暖かく、その上に座っていると、後山山頂に立っていたのがずいぶん前のことのように思われて来た。ただ展望は薄ぼやけた視界で今ひとつだったので、長居はせず下山することにした。このおごしき山からは尾根を辿りづらくなったこともあり、後は適当に下ることにした。もう雪は20cmほどになっていたのでスノーシューは脱ぎ、最短距離で林道に出ようと、尾根を外れて南東方向へと植林の急斜面を一気に下って行った。。
 ところで今回の登山では笛石山からおごしき山までスノーシューで登山をしたのだが、パートナーは足が重くなると言って、ツボ足のまま付いて来た。それでもあまり潜っていなかったのは身体が軽いためのようだった。やはり筋力さえあれば、雪山は体重の少ないことに越したことはないようだった。
(2006/4記)(2011/3改訂)(2020/6改訂2)
<登山日> 2006年4月1日 8:47スタート/9:39尾根着/10:12〜25猫石/10:30〜40笛石山/11:24展望ポイント/13:02[1253m]ピーク/13:40〜14:00後山/14:40〜54おごしき山/15:43林道出合/16:20エンド。
(天気) 薄晴れから薄曇りと言った空。麓の気温は10℃ほどあって、寒さは感じなかった。但し千種町内は家の屋根に雪が載っており、冬景色だった。板馬見渓谷の林道は入口から数cm程度の雪あり。登山道の雪も10cmまでだったが、尾根に出て増えて来た。笛石山山頂では少し風を受けたが、風に冷たさは無かった。雪は多くても50cmまで。視界は陽射しが少ないだけに鮮やかさは無かったが、まずまずの見え方だった。その先の1253mピークを過ぎると、俄然強い西風を受けるようになった。尾根の雪も次第に増えて、多い所は1mを越えているように思えた。後山ではほぼ曇天となっていた。周囲は薄くガスがかかっているのか、風景はうっすらとしていた。山上の気温は7℃ほど。下山で歩いた林道 は冷え込んでおり、気温は5℃ほどだった。
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鳥ヶ乢を越えて千種町に入ると、笛石山が出迎
えてくれた
板馬見渓谷の林道を歩き始めると、程なく登山道に通じる橋が現れた 登山道は植林地の中を通る道として始まった
北東尾根に着くと、そこは倒木もあって雑然と
した雰囲気だった
笛石山を目指して北東尾根を登って行く 山頂が近づくと尾根は伐採されており、展望を
楽しみながらの尾根歩きだった
猫石は広い伐採地の中にぽつんと佇んでいた 猫石を横から眺めると、名の通り猫の姿に見えた 別の角度から改めて猫石を眺めた
猫石の上からは右手に日名倉山が優美に見えていた 足下は千種町の市街地が広がる 足下は雪化粧をした集落の風景だった

猫石の上に立って
東の植松山を眺め


猫石を離れて山頂
に向かった 山頂
の三角点は分から
なかったが 、山
名標識でそこを山
頂と見た
山頂のそばから北の尾根を眺める  立つ位置を変えて、左の写真の右に続く風景、北東から東にかけてを望む 
尾根歩きを再開すると、木立を通して前方に後山が見えてきた 小さなピークを越すと後山がすっきりと現れたが、まだまだ遠かった
1253mピークが近づくと、南の日名倉山が
よく見えるようになってきた
新雪にスノーシューが潜って、なかなか歩度は
上がらなかった
13時が近づいてきたので、昼食は尾根の途中
に座り込んで、そこで手早く済ませた
1253mピークを過ぎると、山頂から西に続
く尾根も望まれ出した
日名倉山をバックに最後の登りにかかる 山頂は無人だったが、岡山側から来ていたのか
多くの足跡で雪は踏み固められていた

 山頂より西へと続く
 山並みを見る


     東に見える植松山
     はうっすらとして
     いた

 北の空は更にうっす
 らとして、三室山は
 おぼろげにしか見え
 なかった


   南に日名倉山を見る
 
後山山頂からは東の尾根を下って行く 緩やかで歩き易い尾根だった 後山から40分ほど下ると大馬鹿門が見えて来た
薄暗い中、大馬鹿門が存在感を持って立っていた  視界は薄ぼんやりとして、県境尾根から北の山はモヤの中だった
大馬鹿門のそばから東に植松山を見る 右手に見える笛石山の尾根は、風倒木が雪で強調されていた  振り返って後山の方向を見る