夏の登山は当然涼しい所へ登りたくなるが、長時間歩行は避けたいものである。その考えで選んだのが笛石山だった。向かったのは2012年8月のまっただ中、18日も土曜日のことだった。晴れと言っても雲の多い空で、さほど気温は高くなかったが、別の心配があった。どうも高い山は雲に隠されていた。国道29号線から見える黒尾山も大甲山も、山頂はガス状の雲に包まれていた。少し心配しながら鳥ヶタワトンネルを通って千種町へと入る。まず植松山と後山が現れたが、どちらも雲に包まれていた。笛石山はと気にしていると、程なく現れた笛石山は山頂を見せており、一安心と言ったところだった。車は松ノ木橋のそばの松ノ木公園に止める。行者霊水の汲める所だった。そこから板馬見渓谷沿いの河久保林道を歩いて行く。空は雲が多いとは言え、林道は陽射しを受けていた。不動明王の小屋のそばに小橋が沢に架かっていたが、その先でも小橋が現れた。橋の入口に笛石山の登山口標識が立っていた。小橋を渡って登山道に入ると、暫くは板馬見渓谷の支流沿いを南西へと歩くが、湿った所も現れていかにもヒルが出そうであったが、ときおり見る登山靴にヒルは付いていなかった。笛石山はまだヒルの被害から免れているようだった。登山コースは沢そばを離れると、山の斜面をつづら折れの道となって尾根へ向かい出した。周囲はすっかり植林地になっていたが、手入れは良さそうだった。尾根に出ると、害獣避けネットが尾根に沿って続いていた。登山道はそのネット沿いでは無いものの、付かず離れずで続いていた。登るうちに周囲は自然林となり、伐採地が現れた。伐採地は鹿の嫌うイワヒメワラビが繁茂していた。登るほどに周囲の木立が空いて展望が現れるようになり、三室山の方向が開けた。但し、うっすらとした視界の上に、三室山はガス雲に隠されていた。展望は良くなったものの陽射しを受けるようになったので、その陽射しを避けようと、尾根の途中で二度ほど木陰で休憩をした。登るうちに南にも展望が現れたて、千種町の町並みが眺められるようになった。山頂が近づくとまた樹林に入ったが、コースが二手に分かれた。真っ直ぐ登れば山頂で、左手の巻き道を進めば猫石のある伐採地に出る。ここは真っ直ぐ山頂に向かった。その位置からだと数分で山頂だった。山頂は北側に展望があるものの、そちらは薄ぼんやりとしており、しかもガス雲が尾根を隠していた。見えるのは天児屋山辺りだけだった。笛石山で好きなのは猫石から見る千種町の風景なので、小休止を終えると、そちらに移動した。数分で猫石に着く。猫石の周囲は伐採されているので、猫石だけが目立っているが、久しぶりに見る猫石は、石に付いた灌木が育っており、猫に毛が生えたように見えていた。着いたときは陽射しが現れていたので、少し離れた木陰で休んでいたが、少し経つと上空は曇り空となったので、猫石の上に上がることにした。岩の上は平らになっており、一人だけなら寝ころべそうだった。実際にパートナーは岩の上で横になってしまった。こちらは岩の上からの展望を楽しむことにした。左手には植松山で、右手には日名倉山が間近にあり、その間に千種町南部の山並みが広がっている。そして千種町の家並みが眺められた。この日は涼しい南風が吹いており、その風のおかげか、植松山の山頂を隠していた雲が次第に消えて、猫石の上に立つうつに山頂が眺められるようになった。猫石では50分ほど過ごして、山頂に戻った。山頂は一段と涼しい風が渡っていたので、その風に誘われて、こちらも眠気を催してきた。そこで暫し昼寝とした。ぐっすりと寝込んでいたようで、目覚めると40分ほど経っていた。その間に空はすっかり曇り空に変わっていた。但し北の山並みを見ると、稜線にかかっていた雲は消え出しており、三室山が姿を現そうとしていた。結局、猫石での休憩を併せると山頂では2時間以上も過ごして、よいやく下山とした。下山はすんなりと登ってきたコースを引き返した。この下山では風が止まってしまったため、涼しさはさほど感じなかったが、曇り空の下なので、厳しさは無かった。沢筋が近づくと、左手に小さな水流が見えたので、その水を飲んでみると、意外な冷たさにちょっとうれしくなった。すたすたと下ったので、駐車地点の松ノ木公園までは山頂から55分だった。これぐらいが夏の季節には良いのではと思いながら笛石山を後にした。
(2012/8記)(2020/6改訂) |