神河町と多可町に跨がる飯森山を麓から見る山と考えたとき、神河町側よりも多可町側からの方がすっきりと眺められるようである。その飯森山には最初の高坂峠から登ったことを別にすると、後は神河町側からしか登っていなかった。そこで多可町側から面白いコースはないかと「生野」と「丹波和田」の地図を開いた。そして興味を持ったのは山頂から南東の方向へと延びる尾根で、途中には三角点ピークも見えている。その三角点ピーク(点名・宮前奥山)までは東麓の多田集落近くから始まる林道でアプローチするのが良さそうだった。まだ歩かぬコースをイメージすると、もう後は実行するだけだった。
向かったのは2010年9月の最終土曜日のこと。雲は多いものの青空はくっきりとしており、まずまずの晴れだった。高坂トンネルを越えて多可町に入ると、松井小学校のそばを通ったが、この日は運動会のようで大勢の人が集まっていた。車道を適当に走って多田集落へと走り、その多田集落を抜けて棚釜集落へ向かっていると、左手に林道に繋がると思われる道が見えた。そちらへと曲がって進んで行くと、害獣避けゲートがあり、その先の林道へと入った。林道は舗装されており、ちょうど対向車でダンプが下りてきた。どうやらこの先で工事が行われているようだった。林道が北へと向かい出したとき、左手に支林道が分かれた。その林道を歩いて683mピークに近づくことにした。そこで分岐点そばの空き地に駐車とした。支林道はダートの道で、もう使われていないようで荒れ道になっていた。その支林道を長く歩くつもりは無く、適当な位置で左手の沢を渡ろうと注意しながら歩いて行く。そして沢との距離が縮まったとき、沢を越えてその先の斜面に取り付いた。そして南西方向を目指した。その方向に向かえば自然と尾根上に出て、三角点ピークに着くはずだった。尾根に出るまでは多少シダの茂る所を通ったが、ヤブと言うほどでも無く、まずまずの感じで登って行けた。傾斜も少しきつい程度だった。尾根を歩くようになると、植林地とあって下生えは少なく、登るのは易しいと言えた。その尾根の途中で突然、林道に出会った。まだ造成中の林道で、間近で重機が動いていた。広域基幹林道のようで、工事中の人に聞くと、南側から工事を進めているとのことで、もうその先に道は無かった。そばの法面は急斜面で登れそうもなかったので、工事の最先端部で斜面に取り付いた。再び植林地を登り出すと、すぐに別の林道に出会った。こちらは古くからの林道のようだったが、荒れており車の通った形跡は無かった。その林道も越して尾根登りを続ける。周囲は植林地で、相変わらず下生えが少ないとあって、無理なく登って行けた。ただ683mピークが近づくと間伐の倒木が多くあって、少し歩き難くなった。683mピークに着いたときは、歩き始めてから一時間半が経っていた。四等三角点(点名・宮前奥山)の位置はまずまず展望があって、前方に飯森山が見上げるようにして眺められた。左手には笠形山も見えている。ただ意外だったのは、てっきり晴れ間が広がると思っていた空が、逆に雲が増えていたことで、ときおり陽射しが現れるだけだった。そこからは60メートルほど下ると、後は山頂へと緩い尾根を辿るのみ。また植林地の中を登るようになった。このまま山頂までかと思っていると、途中からは雑木が見られるようになってきた。そのうちに陽射しが消えて周囲の暗さが増してきたので、どうも曇り空に変わってしまったようだった。683mピークを離れてから45分で山頂到着だった。登ってきた南東尾根は山頂につながっていたため、主稜に出た位置は、三角点とは数メートルしか離れていなかった。その山頂は少し木が伐られたのか、以前よりすっきりとした雰囲気だった。そして千ヶ峰が北に眺められるのは以前と変わらなかった。西も高畑山から続く尾根が見えるはずなのだが、そちらはガスがかかろうとしていた。上空を見ると黒い雲が広がっている。この日は晴れの予報だっただけにすっかり外れたようだった。そのうちに千ヶ峰にもガスがかかり出すと、程なく小雨が降ってきた。そして周囲はすっかりガスになってしまった。その中で手早く昼食を済ませた。その後はうっすらとガスのかかる視界を眺めながらぽつねんと佇んでいた。もうこれで下山するかと思い始めたとき、雨が止んで空が明るくなってきた。そして周囲のガスが消え出すと、再び千ヶ峰が現れてきた。その千ヶ峰にかかるガスが消えてくると、次はその上空に青空が広がってきた。何とも急な変わりようだった。もうこのまま晴れてくるのではと思えたので、そこで展望地に移動することも兼ねて下山を始めることにした。下山ルートは、まず多田坂峠へと下りて、峠まで来ている林道で駐車地点方向を目指す考えだった。2008年の千ヶ峰登山は多田坂峠からのルートだったが、そのときは林道工事が進められている最中で、神河町側は出来ていたものの、多可町側は峠から数十メートルの位置までしか出来ていなかった。その林道が車を止めた林道につながっているのではと期待しており、多田坂峠からは林道を歩いて下山する考えだった。多田坂峠までは200メートルほど下ることになるが、その途中にある展望地が次の目的地だった。そこは伐採地で、以前はそこに立って胸のすく展望を楽しんだものだが、着いてみると、一帯はすっかりススキが繁茂していた。ススキの波と言った感じで、そのため伐採地には入らず、登山道から展望を楽しむことにした。但しその頃には再び空は雲が増えようとしていた。そこで展望地での休憩は少時でとどめて、下山を続けることにした。多田坂峠が近づくと、空はいっそう暗くなって、また雨が降り出した。本当にきまぐれな天気である。多田坂からは道幅が十分にあり過ぎる林道を多可町側へと下って行く。新しい林道は周囲の木立が伐られているためか展望が良く、遠く丹波の山並みも眺められたが、そちらは快晴のようだった。その林道だが意外と工事は進んでおらず、数百メートル歩くと、延伸工事の最中だった。工事の人からはもうこの先に道は無いと言われたが、進むしかなかった。ブルドーザーで積み上げられた土砂を越え、切り倒された木を越えた先は、小径すら見えなかった。そうなると朝に通った林道がある方向へと狙いを定めて斜面を進むしかなかった。小雨の降る中、やや急斜面を登って近くの尾根出た。そこには害獣除けネットがあり、そのネットに沿って尾根を下って行く。少しヤブをこぐ感じだが、仕方が無い。尾根の方向は東だったため、その尾根を下ってばかりでは意味が無いので、適当な所で林道の有りそうな方向へと、灌木の急斜面を下ることにした。もう木に掴まりながらの下りで、完全にヤブコギだった。ただ長くも下らず、足下に林道が見えてきたので、考えは正しかったようだった。ただ林道が目前となって、足下の法面が切り立っていることが分かった。数メートルの崖になっており、迂回しなければならなかった。漸く下りられそうな所を見つけて下りて行くと、最後の2メートルほどが崖になっていた。それでも足をかけられそうな岩も見られたので、慎重に下って行くことにした。それが岩が濡れていたため、途中で呆気なく滑ってしまった。1メートル以上はすとんと落ちてしまい、最後に右足のくるぶしを強打してしまった。ころばずに林道に下り立ったものの、足の痛みはかなりのものだった。後から下りてきたパートナーは、何とか介助して無事に林道に下ろした。後は林道をただ歩くだけなので、コースにはもう問題は無かったが、痛む足には辛かった。我慢しながら歩くこと40分。漸くの思いで駐車地点に辿り着いて登山靴を脱ぐと、右足は見事なぐらい腫れていた。
その日は帰宅した後も何とか歩けていたが、翌日起きてみると、足は更に膨れており、もう全く立てない状態になっていた。当然、整形外科に行くことになったが、結果は強打による腫れだけで、骨に異常が無かったのは何よりだった。
(2010/10記)(2021/8改訂) |