飯森山を初めて登ったのは1993年11月のこと。高坂峠からの町境尾根を登ってだった。山頂が近づくとクマザサのヤブコギが続き、漸く山頂に着いたと思うとそこは飯森山南峰で、山頂へはもう一苦労強いられたことが思い出として残っている。その高坂峠からのコースを再訪したくなり、向かったのは29年後となる2022年11月のことだった。県道8号線を高坂トンネルの少し手前で離れて旧県道に入った。旧県道は舗装路で荒れた感じは無かった。おかげでスムーズに走れて無事高坂峠に着いた。峠は神崎町と多可町との境界尾根にあり、地蔵さんが置かれていた。その峠に登山口は無く、登山口は神崎町側に少し戻った位置にあった。そのそばに駐車スペースがあったので、車はそこに駐車とした。登山道に入るとごく短い時間で尾根に出た。その位置で標高は500mあり、山頂との標高差は400mだった。北へと尾根道を辿って行く。すぐに送電塔(生野線15号)が現れた。尾根は樹林帯が続くため、木々の隙間からしか眺めはなく、ときおり右手に飯森山南峰を見た。尾根道は千ヶ峰から笠形山へと長々と続く縦走路であり、「多可の天空を歩く 仙人ハイク縦走コース」の名が付いていた。尾根は始めこそ自然林だったが、左手は植林地に替わってきた。右手の自然林は常緑樹も多かったが落葉樹もあって、その落ち葉が登山道に積もっていた。593mピークを過ぎると暫くは緩やかな尾根だったが、高坂トンネルの上を通る辺りよりやや急坂が続くことになった。右手の自然林では、ときおりきれいに紅葉した木を見た。坂を登りきって着いた731mピークで四等三角点(点名・奥山)を見た。縦走コースには主要な地点に番号が付けられており、731mピークは10番で、地点名は「高坂峠北」だった。そこに着いて漸く中間地点だった。次は飯森山南峰へと長い上り坂だった。相変わらず左手は植林地で右手は自然林だった。どちらの方向も展望は無く、樹林に囲まれての登りが続いた。飯森山南峰は飯森山とほぼ同じ標高があり、遠くから見ると南峰の方がどっしりとした姿で主峰のように見えるが、その南峰の山頂は南北に長くなっており、漸くの思いでその南端に着くとどこにこの日初めてと言えるすっきりとした展望が現れた。それは多可町側の展望で、妙見山や烏帽子山をすっきりと見た。但し足を止めずに山頂を目指した。この日はピストン登山を予定しており、下山時にその展望を楽しむことにしたためだった。南峰の北端に着くと、そこにも縦走コースの標識を見た。そこは9番で「飯森山南」だった。まだ山頂まで600mほど残っていた。鞍部へと緩やかに50mほど下って、山頂へと同じく50mほど登り返す。その頃には周囲はすっかり植林地だったが、前方が明るくなり木々が減ってきた先が飯森山の山頂だった。登山口から2時間が経っていた。展望は良くないと思っていた山頂だが、北の方向は開けておりそこに大きな姿を見せていたのは千ヶ峰だった。ただ半分ほどは灌木に隠れていた。その山頂に枝が切られて登り易そうな枯れ木があったので、その木に2メートルほど登ると、展望は期待通り良くなりすっきりと千ヶ峰が眺められた。その北の方向以外はほぼ展望は無かったので、木から下りると後は休むことに専念した。けっこう落ち着きの感じられる山頂で、雰囲気は良かった。山頂で休んでいたのは40分ほど。下山は往路を引き返すのみ。その下山では少し戻った位置にあった展望地で暫し笠形山の姿を眺めた。また南峰の展望地でも休憩をとって東に広がる展望を楽しんだ。南峰を離れると、ひたすら下山に専念した。下山と言えども731mピークを越え、その先の593mピーク、590mピークを越えるので、けっこう足のくたびれることになった。結局下山も2時間かかることになり、十分に足が疲れて登山口に戻ってきた。
(2022/12記) |