TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨 
 
大段山    おおだんやま 966.0m 宍粟市
 
1/2.5万地図 : 神子畑
 
【2010年11月】 No.3 2010-96(TAJI&HM)
 
    上千町で作られていた市道に立って  2010 / 11

 一宮町上千町の西にどっしりと構える大段山の登山コースは、上千町集落からの東尾根コース以外に南麓のこぶしの里からのコースがあることを、ガイド本「宍粟50名山」で知った。その南尾根コースに興味を持って三度目の登山に向かったのは2010年11月の紅葉シーズンだった。ガイド本では二つのコースを周回で歩くように紹介されており、上千町集落側からのコースを登って、こぶしの里に下る左回りルートで書かれていたが、登りはしっかりと登りたく、標高差のある南尾根コースを往路として登る右回りルートとすることにした。
 この日は快晴の予報だったので、陽射しを甘受する登山が出来るものと見ていたのだが、見上げる空は薄曇りだった。但し雲の形は無く、ただ薄灰色になっていた。これは黄砂の影響のように思われた。空はうっすらしているだけで無く視界もすっかり濁っており、近くの山も薄ぼんよりと見えていた。これでは展望は全く期待出来そうに無かった。百千家満から急坂の車道を一気に登って、草木地区へ。更に東へと走り、下千町集落を過ぎて最後の集落、上千町集落へと入った。大段山が宍粟50山に選ばれたことによる登山口標識が、下千町集落の手前と上千町集落の中ほどに立っていた。駐車地点をどこにするかだったが、上千町集落の登山口に近い若一神社の前に適当な駐車スペースを見たので、そこに駐車とした。この上千町集落が最奥の集落なので、いたって静かな所と言いたかったが、登山準備をしている間にも何台かのダンプカーが前を行き来していた。どうやら千町林道の方向で工事が行われているようだった。まずは車道を戻る形で下千町の方向へと歩き出す。車道は緩い下り坂で、草木川に沿って続いていた。左手に見える千町ヶ峰の山肌はきれいに紅葉していたが、うっすらとした視界とあって煙ったように見えていた。下千町集落を過ぎて「こぶしの里」に近づくと、草木川で工事が行われていた。それを横目に今少し進んだ位置が、大段山南尾根コースの登山口だった。登り始めると、一帯は植林地になっており、始めに西の方向へと緩やかに登って行く。南尾根の位置で西からの小径と合流すると、登山道は北へと尾根の上に続くようになった。傾斜はきつくなったが、特に急坂とも言えず、期待通りにしっかりと登る感じがあった。周囲は植林地が続いていたが、そのうちに左手側が自然林に変わってきた。紅葉の木々となって、周囲は明るくなった。曇り空のために紅葉はくすんだ色になっていたが、カエデの木なのかときおり鮮やかな赤い色を目にした。傾斜のきついままに登っていると、鋭く突き出た岩に出会ったが、それは「くちばし岩」で、なるほど鳥のくちばしに見えないこともなかった。まずは周囲の紅葉を楽しみながら、ゆっくりと登った。ごく静かな山で、秋色の中を黙々と登るのは悪くなかった。登山口から50分ほど登って山上に出ると、傾斜は一気に緩やかになって、もう後は散策気分で山頂に向かうだけだった。16年前に西から登ったときは、クマザサのヤブコギをしながらこの辺りを歩いたものだが、今はクマザサは痕跡も見られなかった。北東の方向へと歩いていると、前方に山頂が見えてきた。まだ500mほど距離が残っていた。辺りは雑木林の優しげな風景で、アカマツの木をよく目にした。またクマザサの消えてしまった山で多く見る風景だが、アセビの茂る所も見られた。歩くうちには南に展望の開けた所があり、そこからは千町ヶ峰が覗いていた。そこでいっとき足を止めることにした。改めて千町ヶ峰の紅葉を眺めたが、黄砂さえ無ければ今が一番の見頃なのにと惜しまれた。山頂が間近になると少し傾斜が増して、そこを30mほど登ると辺りはまた緩やかな地形になった。この大段山の「段」は段ヶ峰の段と同じく「だるい」の意味で名付けられたと思われるが、その名の通りの地形と言えそうだった。一帯の木々は疎らで、落ち葉に埋め尽くされた地表の広がりを見るだけだった。その風景もクマザサが消えてしまってのことだが、何とも優しげな風景に見えた。その一角に三角点が置かれていた。また宍粟50山に選ばれたことで、新しい山名標柱が立っていた。その山頂に立って、北の方向の木々が一部伐られていることに気が付いた。そこから展望を得られそうだったが、黄砂の視界では近くの尾根がうっすら見えるだけだった。また伐られた木が放置されたままなので、その辺りは雑然としていた。山頂に着いたときはちょうど昼どきとなっていたので、ここで昼食とする。山頂は風は無いものの陽射しが現れないため、少しひんやりとした空気になっていた。展望は望めず、また山頂の木々は多くが落葉を終わっており、紅葉もあまり楽しめなかった。そのため長居をする気にはなれず、20分ばかり過ごすと下山を始めることにした。下山は東へと尾根を辿った。特に地図を広げる必要も無く、赤い目印テープを追って下って行く。下るうちに少しずつ紅葉の木が増えて、また明るい雰囲気になってきた。木々の空いた所では、前方に笠杉山が見えたりもした。尾根は特に急坂な所も無くスムーズな下りだった。このまま順調に上千町集落へと下りて行くものと思っていると、左手に作業道が見えてきた。そして登山道は作業道に向かう道と上千町集落に向かう道とに分かれた。作業道を歩いて林道に下りても上千町に出られそうなので、作業道に下りることにした。作業道に下りるとそこにも登山口の標識を見たが、新しく知る登山口だった。作業道はすぐに別の林道に合流した。その林道は現在工事中のようで、路面はまだ整えられていなかった。また法面工事が進められていたが、それにしても幅の広い林道で、広域基幹林道を凌ぐ立派さだった。その林道を歩いて行くが、傾斜を緩やかにするためか、大回りで上千町に近づくようで、東の方向に向かっていた。やがて舗装された完成部分を歩くようになると、車道はもう一般道と言えそうな立派な道になっていた。バスでも十分にすれ違い出来そうで、この山中になぜこのような立派な道が必要かと疑問さえ起きた。その車道を囲む山肌は自然林が多いようで、それがきれいに色付いていた。黄砂の影響さえ無ければ、これは素晴らしい景色と言えた。これまでひっそりと自然が保たれていた所に、いきなり道が付けられたためで、その美しい紅葉と車道の風景が両極端ではと思えた。道のことは出来るだけ気にせず、ただ紅葉の美しさにだけ目を向けて歩いた。その美しさは大段山の山中で出会った紅葉よりも美しいのではと思えて、この出会いを予想していなかっただけに、突然のプレゼントをもらった気分だった。ずっと緩やかなままの下りで、最後に上千町集落を抜ける市道千町線に合流した。合流点近くの林道上には工事中のため通行禁止の立て看板が置かれていた。そこには地図もあったので、それを眺めると車道の立派だったことが理解出来た。その道は林道では無く、北の国道429号線と上千町をつなぐ新しい市道のようだった。名は市道黒原千町線と書かれていた。完成後は国道429号線から楽々と上千町に来られそうだった。道路を囲む景色の良さに、更に展望もあるので、今後はこの市道を歩いて上千町に戻るのも、コースの一つになるのではと思われた。上千町集落に入ると、もう駐車地点までは500mほどの距離だった。集落の木々も色付いており、それも楽しみながらのんびりと駐車地点へと近づいた。
(2010/11記)(2018/11改訂)(2022/12写真改訂)
<登山日> 2010年11月13日 10:13若一神社の前よりスタート/10:35南尾根登山口/10:56くちばし岩/11:24山上に出る/11:53〜12:12山頂/12:43林道の登山口/13:25エンド。
(天気) 黄砂によるものか、空は薄灰色になっていた。ときおり陽射しが現れるも長くは続かなかった。気温は12〜13℃。風は無かったが、少しひんやりとしていた。視界は悪いの一言。近くの尾根でもうっすらとしていた。
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上千町まで車を進めて、若一神社の前に駐車した 駐車地点より若一神社の杜を見上げた 走ってきた車道を戻る形で下千町の方向に歩き出した 緩やかな下り坂だった 視界は霞んでいたが、千町ヶ峰の山肌はすっかり紅葉していた
こぶしの里を通り過ぎたとき、振り返った その先に南尾根コースの登山口があった 始めに植林地の中を西へと歩いた
南尾根を登り出すと次第に左手側が自然林となった 紅葉した木々が増えてきた ときおり薄い陽が射して、紅葉を照らした
「くちばし岩」はなるほど鳥のくちばしに見えた 暗さのある中で見る黄葉は鮮やかさがあった カエデの紅葉はやはり美しかった
長く続いた急坂が終わって、山上に出た 北東へと平坦な尾根が続いていた 行く手の方向に見えていたのは笠杉山のようだった
大段山の山頂が見えてきた 距離は500mほどか 一度、緩やかに下って行く そして緩やかに登り返した
登るほどに紅葉は少なくなったが、この木は目を惹いた アセビの茂る所が現れたが、狭い範囲だった 山頂が近づくと、少し傾斜が増してきた

(←)
山頂が間近になっ
て南東に千町ヶ峰
を見た

 (→)
  左の写真の右隅に
  見える山並みを大
  きく見る

(←)
山頂は木々が疎ら
で落ち葉が地表を
覆っていた

 (→)
  左の写真の奥に二
  等三角点(点名・
  繁盛)を見た
三角点の北側の木が伐られていた そこからは855mピーク(点名・横山)が望めた 山頂では、落ち葉の風景をただ眺めるだけだった
下山は上千町へと東尾根に入った 下るうちに、また紅葉を見るようになった 赤い目印テープを追って下った

(←)
下るほどに紅葉の
木が増えてきた

 (→)
  若木の植林帯を左
  手に見たとき、北
  の山並みがおぼろ
  げに眺められた
この尾根でも鮮やかな黄葉を見た 尾根の先に作業道が見えたので下りることにした 作業道は幅広の林道に合流することになった
この広い林道は工事中のようだった 振り返ると大段山の姿が見えていた 周囲の山肌がきれいに紅葉していた
道そばでも鮮やかなカエデを見る 林道は舗装路となり、バスも楽々すれ違えそうだった 尾根全体が紅葉している所があった
沢そばを歩くようになると、そこも紅葉が美しかった 薄暗い中で見るカエデの紅葉が目を惹いた 林道の起点に通行止の標識を見た 地図もあった
後は上千町集落へと向かった 前方に大段山を見る 植林の中に鮮やかなカラマツを見た 上千町の登山口そばでカエデの大木を見た