3度目の雪の東山を訪れたのは、2003年1月に入ってのこと。あの展望台に立って冬の360度の眺望を楽しみたいとの思いからである。フォレストステーション波賀への道は除雪されていたが、朝はまだ一部凍っていたので慎重に車を走らせた。車はコテージ村の管理棟そばに駐車した。この日の東山の空は良く晴れており、雲はほとんど見られなかった。但し、少しモヤがかった淡い空の色だった。コースとしては東尾根コースを登って行くことにした。登山口に向かうメイプルロードの入口には雪が積まれて、四駆車が入られないようにしていた。その先は10センチほどの積雪で、はっきりトレースが付いていた。始めはそのトレースを踏まずに、別に足跡を付けて歩いていたが、途中より雪が深くなってきたので、トレースを辿ることにした。登山口からは丸太の階段道が始まるが、よく踏まれたトレースが付いており夏道よりも気楽に登って行けた。何も考えずに周囲の雪景色を愛でながら登って行くと、やがて右手に東山山頂が現れた。程なく主尾根に合流する。尾根の積雪は30センチほどあったが、はっきりとしたトレースのおかげで相変わらず気軽な登りだった。左手に一山も見えるようになった。南に向かうようになると植林帯へと入った。暫くはほぼ平坦な尾根歩きが続いた。晴れてはいたが展望に関しては悪かった。東山の山頂が近づくと、少し尾根の傾斜が増してきた。その辺りでコースは右手方向に緩やかにカーブするのだが、真っ直ぐに登ってみることにした。そこよりこの日初めてトレースを付けることになった。ひざ上までのラッセルだった。足への負担を感じながら一歩一歩と登って行く。そのラッセルも数十メートルで再びトレースの付いたコースに合流して終わることになった。もうそこから山頂までは僅かな距離だった。山頂に着くと、その辺りで積雪は70センチ程度だった。山頂には誰もおらず、展望台のみが悠然と建っていた。すぐに展望台の上へと上がった。この日は晴れてはいたが、視界はうっすらモヤがかっており、風景が淡くなっていたのは残念だった。氷ノ山はごくうっすらとした姿だったが、仕方がないと思いながら眺めた。ただ風景をいっそう良く見ようと、危なっかしかったが展望台中央の支柱の上に立ってみた。そして今回にして初めて東の方向の眺めを堪能することが出来た。左手の須留ヶ峰から笠杉山、千町ヶ峰、暁晴山と播磨の尾根を暫し眺めていた。西も当然良く見えていた。黒尾山から植松山、三室山、氷ノ山と。展望を楽しんだ後は、展望台の上で昼食をとった。この好天にもかかわらず、この昼食が終わるまで誰一人来なかったのはもったいない限りである。下山は往路と同じく東尾根コースを辿った。この帰路で漸く二人の登山者と出会った。そして下山が終わると、メイプルプラザにある東山温泉に浸かったが、何か小旅行をしたような贅沢な気分になれた。
(2004/1記)(2010/2改訂)(2022/3写真改訂) |