雪の到来となれば、まずは雪の感触に触れたくなるもの。この点、東山はフォレストステーション波賀が出来て登山道が整備されて以来、雪山の入門コースと言うか雪道に慣れるのに格好の山になったと思える。駐車地点までのアプローチの良さと言い、道の歩き易さ、適度なコースタイムと、気楽に雪山を楽しむには一番の山と言える。おまけに展望も良く、下山すれば東山温泉にも浸かれると、いくつもの楽しみがある。
2004年の冬は雪の訪れが遅く、12月もぎりぎりになって漸く兵庫の尾根にも本格的に雪が訪れた。そこでこのシーズン初めての雪山はまずは気軽な所でと東山を目指すことにした。訪れたのは新年となった2005年1月3日だったが、この日の空は晴れの予想を裏切って、上空はすっかり雲に覆われていた。ただ雪をもたらす雲で無く、薄い雲で淡く青空の見えている所もあった。それにしても前日が真っ青な大快晴だっただけに少々残念ではあった。雪山としての東山は3度目となるので、何の心配も無くフォレストステーション波賀へと向かった。雪は思ったよりも少なく、メイプルプラザの辺りで10〜20センチほどで、車は今少し進めて、コテージ村の管理棟そばに駐車した。どうせ前日に登られてトレースは付いているだろうとワカン類は持って来なかったが、これは正解できっちりと何人ものトレースが付いていた。東尾根コースを目指したのだが、もうこのルートを歩く分には地図は必要無く、トレースと随所にある標識で気軽に登って行けた。それによく踏まれた雪道は夏道よりも楽なもので、歩度の落ちることも無かった。主尾根が近づくと展望が良くなってきた。曇り空ながらまずまず澄んだ視界で、山々がモノトーンに見えているのも風景として悪く無かった。主尾根に出ると風が出て肌寒くなってきた。その辺りで積雪は30センチほどか。まだ多くは無かった。小さなアップダウンがあって少しずつ高度を上げて行き、徐々に山頂へと近づいた。その山頂が間近になって漸く雪が増えて来た。50〜60センチほどか。ただトレースが付いているので、雪の量は関係無く同じペースで歩けた。そして歩き始めて1時間半で山頂到着となった。そこは風が一番通り易いためか、一段と寒かった。気温は1℃だったが、体感は氷点下としか思えない寒さだった。曇り空なのも寒さを増していた。ともかくまずは展望台に上がってみた。360度の眺望と言いたいところだが、周りの木が育って、特に東の展望が悪くなっていた。そしてここに来て、北の高峰、三室山や氷ノ山がすっかり雲に隠されているのが分かった。それとは対照的に瀬戸内海は光っており、太島がその中にぽつんと見えていた。ただ展望台は風が強く、すぐに離れることにした。そして展望台のそばにある風避けシートの中で手早く昼食をとった。下山は登って来た東尾根コースで引き返すつもりだったが、下り始めて東山コースとの分岐点に来ると、そちらのコースにもはっきりとしたトレースが付いており、下山はそちらのコースを辿ることにした。ただそのトレースは下り始めてすぐに登山コースを離れてしまった。どうやら北西方向に最短ルートを目指したと考えられる。こちらはすんなりコースを下ろうと、新しくトレースを付けながら下って行った。トレースを付けると言ってもこちらのコースは木々に囲まれて雪の量は少なく、また下りとあって何ら問題なく下って行けた。ただ雪の量の少ないのが災いして丸太階段のところは何度もつまずいてしまったが。それでも登山口まで40分ほどの距離だった。そこからメイプルプラザまでは少々離れており、林道を歩いて戻らなければならなかった。積雪のある林道を黙々と戻るのみだが、20分以上は歩かなければならず、これは少しばかり退屈だった。やはり東尾根コースを往復するのが面白かったのではと思えた。メイプルプラザに着くと、冬ならでは楽しみが待っている。メイプルプラザにある東山温泉で、露天風呂に浸かって雪景色を眺めることである。目的通り冷たい外気の中で熱い湯に浸り、のんびりと雪の山肌を眺めてこの日の東山登山を締めくくった。
(2005/1記)(2022/2写真改訂) |