兵庫の雪山で入門コースと言えば東山。雪山に登るとなれば天気の良い日に登りたいものだが、東山なら多少雪がちらついて視界が悪くなっていても、無理なく登れる山なので、雪の感触を味わうことを目的とするときは、好都合の山と言えそうだった。その考えで向かったのは2012年2月の最終日曜日のこと。パートナーは用事があって、単独で向かった。但馬は大雪となっていたが、波賀町南部は少し雪が見られる程度だった。フォレストステーションまでの道も、雪はほとんど見られなかった。但し山の方向はまだまだ雪が残っていた。メイプルプラザの駐車場に着くと、3割程度は埋まっていた。辺りを見ると、小さな子供を連れたファミリーがソリ遊びを楽しんでいた。天気は曇り空で小雪がちらついており、展望は期待出来そうになかったが、どうやら雪は締まっているようで、登る苦労は少なそうだった。雪の季節にこの東山に来ると、いつも尾根コースを登っていたので、この日は変えることにした。山頂への最短コースとなる東山コースで登る考えだった。始め車道に雪は無く、スノーシューはザックに付けて歩いて行った。途中からうっすら雪が現れると、そこに多くの足跡が付いていた。どうやら先にグループが歩いているようだった。メイプル1号線が分岐する位置に着いたとき、コースを変えることを思い付いた。グループの付けたトレースを歩くよりも、自分でトレースを付けたいと考えたからである。グループの足跡は東山コースに向かっており、こちらはメイプルロード1号線に入った。車道はうっすらながら雪に覆われており、足跡は付いていなかった。暫く登ると雪は20センチほどになり、靴が潜るようになった。そこでスノーシューを履くことにした。その先で一度雪は少なくなったが、かまわずスノースシューのまま歩くと、そのうちに車道はすっかり雪に覆われるようになった。雪は表面が固くなっており、スノーシューで踏むと、割れる感じで数センチ沈んだ。つぼ足では苦しいが、スノーシューでは楽に歩けるので、絶好のスノーシューハイキングと言えそうだった。歩くうちに空の雲が薄くなって、ときおり陽射しが現れることがあり、そのときは雪面がまぶしかった。メイプル1号線は尾根には達しないので、途中で右手に分かれた作業道に入った。その作業道は山腹を巻くようにして、山頂方向に向かっていた。ずっと雪の車道歩きだった。雪は20〜30センチ程度で続く。車道のため急坂は無く、ただ黙々と登るのみ。始め周囲は植林地のため展望は無かったが、伐採地が現れると次第に展望が広がってきた。それは西の方向で、始めは小雪のためにごくうっすらとしか見えなかったが、登るうちに少しずつ視界が良くなって、黒尾山から荒尾山までが眺められるようになった。主尾根が近づくと、一帯はすっかり伐採地で、そこには新たに苗木が植えられていた。その苗木の一本一本に鹿の食害防止のための囲いが付けられていた。主尾根に着くと、作業道は尾根を越えて尾根の東側へと続くが、こちらは作業道コースを離れて尾根コースに入った。尾根コースにはつぼ足の足跡が一人分だけ付いていたが、それは前日以前のものだった。少しの距離で右側から東山コースが合流した。そこには多くの人で歩かれたトレースが付いていた。登山を開始した直後に見た雪面に足跡を付けていたグループは、東山コースを登って先に山頂に着いているようだった。後は山頂までの200mを、トレースを見ながら歩を進めた。ブナの混じる林を抜けて行くと、山頂に建つ展望台が見えてきた。また周囲の裸木がうっすら霧氷を付いているのが見られるようになった。山頂到着は歩き始めてから歩き始めてから1時間40分ほどと、少し長くかかったようだった。これは車道がくねくねとしていたため、他のコースと比べて歩く距離が長かったためかと思われる。山頂には10人ほどのグループがいたが、こちらが山頂に着いて数分もしないうちに山頂を離れた。後は一人だけ。ひっそりとした山頂は冷たい風が吹いており、気温は−2℃だった。相変わらず小雪が舞っていた。展望はうっすらと西の山並みが見えるだけだった。山頂の霧氷風景を漠然と眺めていると、うっすらとながら陽射しが現れてきた。空を見ると、ごく薄く青空も見えている。それでも小雪は舞っていた。展望台の上に立つと、着いたときよりも視界は良くなっており、三室山の手前の尾根もうっすらと見えるまでになっていた。そのうちに明るくなっていた山頂が、再び厚みを増した雲のために薄暗くなってきたので、それをしおに下山とする。下山はグループが登ってきた東山コースを下ることにした。その分岐点まで来ると、グループは尾根コースに向かったようで、そちらに太いトレースが出来ていた。こちらは東山コースに入る。はっきりとしたトレースを踏むだけなので、いたって楽だった。はじめは自然林の中を下り、途中から植林帯へと入った。植林帯の雪は少なく、スノーシューはほとんど必要なさそうだった。その植林帯を下る途中で、軽く昼食とした。そして下山を続ける。小雪はいつの間にか止んでいた。下るうちに地肌の見えた所が現れ出したので、スノーシューを脱ぐことにした。そうすると今度は雪の凍った所で滑りそうになった。そのためスノーシューを脱いでも、歩度を上げる訳にもいかなかった。そしてずっと周囲は植林が続くので、どうも東山コースは少々退屈なコースと言えた。登山口に着くと、そこからは右手の方向に林道(作業道上東山下環状線)を歩いて行く。その林道はメイプルプラザの手前までは緩やかな登り坂が続くので、これも気分的に楽しいとは言えなかった。メイプルプラザが見えてくると、辺りで雪遊びをするファミリーの姿が眺められた。その頃には一時止んでいた小雪が再び舞い出しており、その中をメイプルプラザへと近づいた。
(2012/4記)(2020/9改訂) |