何度か登っている大甲山だったが、山頂からの展望は楽しめても、植林地を歩くことが多くあってか、登山としては十分に楽しめたとは言えなかった。その大甲山は宍粟50山に選ばれており、ガイドブック「宍粟50名山」に紹介されている。その「宍粟50名山」を改めて眺めたところ、紹介されているコースをまだ歩いていないことに気付いた。そうなると一度は歩いてみたいと思うようになってきた。
向かったのは2014年10月の最初の土曜日のこと。パートナーは用事があったため、単独で向かうことになった。播州南部の空は良く晴れていたのに、一宮町に入って東市場を過ぎた辺りより、上空に雲が増えてきた。そして大甲山が見えると、その頂は雲に隠されていた。ただ空全体としては徐々に良くなっているようで、波賀町に入ったときに安賀地区辺りから大甲山を眺めると、ガス雲は消えており、その山頂に陽射しが当たるまでになっていた。その大甲山の登山口までは、ごく簡単に行くことが出来た。前地カンカケ林道にある登山口へは国道429号線から齋木集落内を抜ける細い車道に入るのだが、その分岐点に大甲山登山口と書かれた大きな看板が立っていた。おかげで迷うこと無く枝道に入ることが出来た。集落を抜けると車道は林道へ変わったが、少し進むと害獣避けゲートが道を塞いでいた。ゲートを開けて更に進むと、別の林道に合流した。その位置に標識があり、そこから行者山に登って行けるようだった。こちらは大甲山が目的なので、左に折れた。林道は山襞なりに続いており、程なく大甲山の行者コース登山口が現れた。その辺りに駐車スペースは無かったものの、少し進むと路肩スペースが広くなった所が現れたので、そこに駐車とした。登山口に入ると、小さな沢に沿って細々とした登山道を登ることになったが、目印があってこそ登って行ける道だった。そんな感じで道が続くのかと思っていると、長くも歩かず作業道に合流した。どうやら登山口からの小径は、作業道に出るためのショートカットの小径だったと思えた。後は緩やかに続く作業道を歩いた。作業道は既に廃道になっているようで、すっかり草の伸びている箇所もあった。更に崩壊している所も現れた。その崩壊地の先で作業道は終点となり、そこより登山道が始まっていた。自然な感じの道で、程なく現れたのが行者堂だった。小さな祠で、登山コースからは僅かだが離れていた。コースに戻って登りを続ける。植林地の多いコースではと考えていたのだが、そのようなことは無く、自然林の中を登って行けるコースだった。上空は再び雲が広がったために、樹林は少し薄暗くなっていたものの、自然林の美しさを十分に味わえた。道としても適度な登り易さで、良い感じのハイキングだった。そのコースの途中で現れたのが、行者岩だった。岩を越えると展望地になっており、南の風景が一望出来た。深山の尾根の奥に黒尾山の頂が覗いていた。空はまだ雲が広がっていたものの、陽射しも漏れていた。行者岩を離れた後も自然林は続き、山頂が近づいて植林地に変わった。コースには案内標識が的確に立っていたが、植林地内にもそれはあり、気楽に登って行けた。植林地を抜けた所が山頂だった。その頃には天気は良くなってきており、山頂は陽射しを受けて明るかった。前回に登ったときと佇まいはあまり変わっておらず、適度に開けた山頂は展望もあって、休むには良い所だった。ただ時間はまだ9時過ぎだった。登山口からここまで70分ほどで来たこともあって、まだ歩き足りなさもあり、そこで大甲山は小休止にとどめて、荒尾山まで足を延ばすことにした。その荒尾山へと歩き始めたとき、右手より「お滝さんルート」が合流した。北側からのコースも整備されているようだった。再び自然林の中を歩くようになったが、少し雲が減ったために陽射しを受けることが多くなった。ごくゆったりと自然林の雰囲気を味わいながら歩いていると、一度右手に展望が現れて、三久安山から一山へと続く尾根が眺められた。少しずつ上り坂になり、荒尾山の北東尾根に合流する手前は、少し斜度が増した。北東尾根に出ると、そこから南へと歩いた。そして大甲山を離れてから40分で荒尾山に到着した。そこは雰囲気としては悪くなかったが、展望は植松山が少し見える程度だったので、北西尾根に入って今少し歩くことにした。荒尾山から距離にして200mほど離れた小ピークが好展望地だったはずなので、そこを目指した。緩く下って上り返すと、数分で小ピークに着いた。そこで目にしたのは四等三角点(点名・岩野辺)だった。前回来たときは、雪に埋もれて気付かなかったようである。さてその小ピークからの展望だが、けっこう木立が視界を妨げており、やはり雪の季節よりは劣るようだった。それでも北西の三室山から北東の段ヶ峰まで広く眺められた。ただ氷ノ山が山稜を雲に隠されていたのは残念だった。一通り展望を楽しむと、荒尾山に引き返した。このとき分かったことは、大甲山周辺よりも荒尾山の方が、僅かに紅葉が進んでいることだった。ほんのり色付きだした木立が、ちらほら見かけられた。荒尾山に戻ると、引き続き下山を続けた。往路コースをすんなり引き返すのだが、もう空は晴れと呼べるまでに回復しており、大甲山に戻って来ると、上空は青空が広がっていた。確か天気予報では午後は曇ってくるはずだったので、天気予報は外れたのかと思っていると、大甲山にいたときが天気のピークだったようで、その後は雲がまた増えてきた。そして登山口に戻ってきたときは、雲の広がる空に戻っていた。この日に歩いた行者コースは自然林の中を歩くことが多くあり、大甲山を登るのなら、このコースが一番ではと思えた。
(2014/10記)(2019/3写真改訂) |