この日はこれ以上は無いと思える秋晴れの日だった。それをなぜか笹原山という日名倉山の東向かいにある、あまり登られることのない山を登っていた。極上の空を見て、もっと展望の良い山から展望を楽しみたいと急に思い付いた。近くの千メートル峰でごく簡単に登れるとなると、日名倉山しかなかった。それもベルピール公園からのコースである。思い立つとすぐに下山し、日の高いうちにと大急ぎで車を岡山県側へと走らせた。そしてベルピール公園の中心、愛の鐘近くまで車を進めた。すぐにハイキング開始とする。日名倉山は5回目となるが総て兵庫県側から登っており、ベルビール公園からは初めてだった。これまではコースが簡単過ぎるように思えて、登山対象とは考えていなかった。そして突然の思いつきで登り出したのだが、当然コースの知識は持って無かった。それでもすぐ分かるだろうと、愛の鐘の背後の遊歩道を登り出した。すぐに平らな所に出たが、そこから先に道は見えなかった。てっきり登山道につながっていると思っていただけに少々面食らった。一度戻ってコースを捜すのも面倒なので、適当に右の方向に進むとまた道が現れ、それは土道ながら林道となって、緩やかな上り坂となった。どうも登山道では無いと分かったが、その林道も西の山腹を巻きながらも山頂方向に向かっていたので、何とかなるだろうの気持ちで歩き続けることにした。周りはカヤトが取り巻いており、途中でそのカヤトを刈る人にも出会った。ともかく林道をひたすら歩くと、20分ほどで林道は終わった。その先はカヤトの荒れ地で、更に先に憶えのある兵庫県側の一ノ丸辺りの風景が見えていた。けっこう山頂に近づいていたようである。そこからは左手の植林地に取り付いた。そして東の方向を目指して登って行くと、植林は切れてカヤトの原に突っ込んだ。そこを無理やり登ると、兵庫県側の登山道に出た。もう二ノ丸は間近であった。そしてそこより5分ほどで山頂に着いた。少し時間がかかったようでも歩き始めて30分で山頂に着いたようだった。要するにベルビール公園が既に標高850mほどにあり、登山道を歩かずとも山頂に立つのにそう時間はかからないということなのだろう。午後も遅いことでもあり、山頂には他に1名の登山者を見るのみで、いたって静かだった。快晴の空は午後になって少し淡い色になっていたが、それでも十分な澄みようで、ほとんど雲は見られなかった。北向かいの後山から駒の尾山の尾根、三室山、植松山、黒尾山などなど千種町を取り巻く山々が一望だった。ただ山頂の風景を作っているカラマツ林がその一部を隠しており、それを見て毎度思うことだが、今少しカラマツが切られれば更に素晴らしい展望になるのにと、少々残念だった。下山はベルビール公園に通じる登山道を、すんなり下ることにした。いたって楽なはずなのだが、下り始めて植林地に入ると、けっこう大きな木が幾本も倒れて道を塞いでいた。どうやら最近の台風で倒れたようだった。そのため道を辿るのが少々難しく、すぐに外れそうになった。ただそれも長くは続かず、植林地を抜けるとまた楽な登山道となり、展望もあって楽しくベルピール公園へと戻って行けた。
(2004/12記)(2024/6写真改訂) |