2009年は10月の終わりより、兵庫の西を限る山で紅葉を楽しんだ。氷ノ山、三室山と登ると、次は後山となるのだが、そこを飛ばして日名倉山を目指したのは11月の第3日曜日だった。この日の天気予報は但馬は曇り、播州は晴れとなっており、後山よりも日名倉山の方が天気が良いのではと、また前日の午後にもハイキングをしており、軽めの山が良いとも考えての日名倉山だった。そしてコースは兵庫側からの一般コースとなる千種町室からの登山道をすんなりと登ることにした。日名倉山には何度か登っているが、このコースは7年ぶりとなり、その変貌ぶりにも少し興味があった。
鳥ヶ乢トンネルを越えて千種町に入ると、天気予報と少し違って、日名倉山も後山も上空には薄雲が広がっていた。但し今少し南の空は青空なので、良くなってくるとも考えられた。前日に半日ばかりのハイキングをしていたので、足の疲れを考慮して車を出来るだけ林道の奥まで進めようと考えた。雛倉集落を抜けると林道の入口にはゲートがあり、それを開けて車を進める。林道は車一台分の幅で続いており、けっこう急傾斜だった。途中には道のくずれかけた所もあり、大きめの車には厳しいように見えた。車を止めたのは「山頂まであと3km」の標識が立つ地点より少し手前にあった路肩スペース。そこより薄暗い植林地に囲まれた林道を歩き出す。その先の林道は荒れ気味になっており、四駆以外は無理かと思えたので、先ほどの駐車地点は正解のようだった。林道は10分ほど歩くと終点となり、その先は小さな沢に沿って登山道が始まっていた。本来はごく普通に歩けるはずなのだが、豪雨禍に見まわれたようで、所々で寸断されていた。沢の中を歩いたり高巻きする所があり、けっこう荒れている印象を受けた。それも峠が近づく頃には普通に歩けるようになった。沢とは離れて害獣避けネット沿いを歩くようになると、背後に展望も現れて、三室山と竹呂山が並んでいるのが眺められた。峠の位置に着くとそこには林道と言うか作業道が来ており、登山口へはその作業道を右手の方向に歩いて行く。その辺りは少し地形が複雑なようで、程なく別の作業道が左手から合流した。また一帯の木立は雑木が多いようで、色付いた木立が多く見られるようになった。作業道を5分ほど歩くと、奥海越えの登山口に着いた。登山口の標識が立っており、そこからは登山道が真っ直ぐ北へと山頂まで続く。周囲は植林地となったり自然林となったりで、自然林のときはその紅葉の木立を楽しみながら登って行けた。緩やかに登山道は続いており、のんびりと歩けたが、ときおり倒木が道を塞いでいた。また周囲の木立にも数本がまとめて倒れている所があり、それも豪雨禍にようようだった。そのまとめて倒れた所の一つが好展望地になっており、西に向かって広く開けていた。その頃には上空は青空が広がっており、その明るい空の下に千種町の町並みが広がっていた。背後の山並みもくっきりおり、その背後に植松山が大きく見えていた。それを眺めながらひと休みした後、尾根登りを再開すると、アセビの木が見られるようになり、すぐにススキが茂り出した。そこが一の丸で、ススキをかき分けるようにして進むが、どうも以前よりも荒れてきているような印象を受けた。前方に二の丸が見えていた。その二の丸もススキがすっかり辺りを占めており、ちょっとしたススキのヤブコギだった。一度下って登り返すと、程なくススキ帯を抜け出した。と言うよりもススキが小さくなって、ようやく普通に歩けるようになった。もう山頂は目前になっていたが、その手前は以前からの展望地で、ここに来て後山から駒ノ尾山の尾根が大きく眺められることになった。この雄大な眺めが好きで、暫しこの展望を楽しむことにした。その右手には三室山が少し小さく見えており、また三室山に隠れるようにして氷ノ山の山頂が覗いていた。その展望が以前よりもずっと良くなっているようなので、なぜかと見回すと、すっかりクマザサが消えていることに気が付いた。以前はクマザサの少ない所から展望を得ていたのだが、クマザサに変わって小さなススキが繁茂していた。そこより二十メートルも歩けば山頂だった。山頂には一等三角点があり小さな祠がある。またカラマツの林がありベンチの置かれた休憩場所のある風景は変わらなかったが、それもよく見ると、クマザサがすっかり減っていた。僅かに残るクマザサもほぼ枯れようとしていた。クマザサはかじられているようで、どうもシカの食害かと思われた。ここもそれに変わってススキが繁茂しようとしていた。どうも山は年月と共に変わりゆくようだった。山頂には他に3名のハイカーがいるだけで、ひっそりとしていた。少し冷たさのある風を受けながら、ベンチに座って昼休憩とした。クマザサが減っただけでなく、南の視界を塞いでいた木立も減ったようで、ベンチに座りながらも後山の尾根が眺められて、良い感じの昼休憩だった。後山の眺めが良いだけで無く、少し立つ位置を変えると、西に那岐山もすっきりと見えていた。以前はさほど展望が良いとは思えなかった日名倉山だったが、どうも展望を楽しめる山に変わってきたようだった。山頂には50分ほど過ごして下山とする。下山はすんなりと登って来たコースを引き返すだけ。展望を楽しむよりも、最後の輝きを見せる紅葉を楽しみながら奥海越えの登山口へと戻って行った。下山を終えてもまだ13時過ぎの時間。帰路に「ちくさ温泉」の湯を楽しんで、この日の日名倉山登山の余韻に浸った。
(2009/12記)(2016/2写真改訂) |