須留ヶ峰の主な登山コースとして田淵コース、宮本コース、餅耕地コースの三つがあるが、宮本コースは冬季に歩いたため変則なルートを歩いてしまい、まだコース通りに歩いたことは無かった。そこで宮本コースを正しく歩いてみたくなった。向かったのは2016年7月中旬のこと。まだ梅雨は明けていなかったが、この日の天気予報は晴れ後曇りで、雨の心配は無さそうだった。早く登山口に着こうと、大屋町へは冨土野峠を越えるルートでは無く、播但道を朝来ICまで走り、その先は八代坂トンネルを抜けてカカナベ峠越えで大屋町に入るルートを選んだ。峠道は細いながらも対向車は無く、スムーズに走れた。峠を越えて大屋町へと下り出すと、真新しい林道が左手より分岐した。須留ヶ峰林道とあり、まだ工事中のようで通行禁止になっていた。それを横目に今少し下ると、登山口の標識が現れた。そこが宮本登山口だった。数台分の駐車スペースを見たので、そこに駐車とした。壊れかけた小橋を渡ってコースに入ると、大きな案内図が立っていた。それを眺めたもののあまり参考にはならなかった。すぐに斜面を登ると、作業道に合流した。その作業道は南へと沢沿いに続いており、緩やかな道だった。もう廃道となっており、路上は雑草が茂っていた。右手の沢では砂防ダムをときおり見かけた。雑草をヒザで押し退けながら歩くのだが、前夜に雨があったのかけっこう濡れていた。そのためズボンの裾はすぐに濡れてしまった。雑草の多くはイワヒメワラビで、段々と茂り方が半端でなくなってきた。それをかき分けるようにして進むため、歩度は上がらなかった。更にやっかいなのは鋭いトゲを付けたジャケツイバラが混じり出して、それを切りながら進むことになったので、更に歩度は落ちてきた。近くで建設中の林道を走るダンプの音が聞こえたので、沢を離れて林道に上がろうかと思ったが、沢沿いを歩ける所まで歩くことにした。廃道は土砂崩れで埋まっていたり、崩壊によって消えている所も現れる始末で、全く悪路と言ってよさそうだった。沢には点々と砂防ダムが作られていたが、沢の先が急斜面になり出した所でも現れて、そこより廃道は右手の斜面に移った。その頃には単なる山道になっていた。廃道は沢から離れるようになり、一部で崩壊している所が現れた。そこは斜面を適当に登って廃道の続きに出た。廃道歩きを続けていると、標識が現れた。そこには須留ヶ峰まで3.5kmと書かれていたので、まだまだ歩かなければならないようだった。山の斜面を横切る形で南へと向かって行くと、真新しい林道に合流した。工事中の須留ヶ峰林道だった。そこまで歩き初めてから一時間半が経っていた。ずいぶん歩度は遅かったようである。その須留ヶ峰林道が廃道を寸断しており、廃道の続きが見えなかった。そこで林道を歩いて宮本コースの続きに向かうことにした。須留ヶ峰林道は立派な舗装林道で、北に向かっての展望が良く、端正な姿の御祓山が眺められた。林道を歩いているとコンクリート舗装された作業道が左手に分かれたが、それを気にせず直進してしまった。その作業道が実は宮本コースの続きだった。やがて林道は未舗装路となり、その先は工事中だった。そこまで来るとコースを離れてしまっていることに気付いた。先ほど見た左手から分かれた作業道が気になったが、左手の急斜面を登って尾根の方向に向かうことにした。始めは小さな沢に沿って歩き、そして急斜面に取り付いた。登り易そうな所を選びながら登るも、けっこうな急斜面とあって木に掴まりながら登ることになった。何とか宮本コースとなる廃道に着いたときは、林道を離れてから20分ほどが経っていた。もう後は廃道を終点まで歩くだけだった。廃道は尾根に対してつづら道になっていたので、緩やかに登ることになった。これで楽に登れるかと思っていると、廃道だけに雑草や灌木に覆われた所があって、やはり楽には歩けなかった。小石も煩わしかった。それも登るほどに減ってきた。その廃道は大杉山の北尾根に付いているのだが、地図では尾根の途中に三角点記号が付いていた。そこに立ち寄ろうと注意しながら歩くと、ごく小さなピークが右手に現れた。そこで廃道を離れて尾根筋を登ると、小さなピークに四等三角点(点名・倉谷)を見た。その三角点から廃道に戻ると、程なく廃道は終点となった。その位置で大杉山まで500m、須留ヶ峰まで1.5kmだった。その先は目の前の尾根を適当に登ることになった。漸く登山らしくなったが、そこまでで十分に足を使っていたため、一歩一歩が重かった。それでも特に急斜面でもなかったので、ゆっくりとながら休まず登った。大杉山に着いたのは廃道の終点から34分、歩き始めてからなら3時間20分が経っていた。やはり悪路にかなりの時間を使ったようだった。大杉山の山頂はなだらかになっており、展望もあって休むには良い所だった。東の方向はまずまず遠くまで見えていたが、北の空はガスがかかっているようで、氷ノ山はガスに隠されていた。それでも妙見山は姿を見せており、それを眺めながら昼休憩とした。まだ須留ヶ峰まで1kmあったが、昼を済ませると予定通り須留ヶ峰に向かった。この尾根はいつ来ても感じの良い尾根で、山上のプロムナードと言った雰囲気でだった。但し以前に比べると、イワヒメワラビなど鹿の嫌う植物が増えていた。緩やかな下りの後に緩やかに登り返して1020mピークに着くと、その先も緩やかな下りと上りがあり、大杉山を離れてから30分ほどで須留ヶ峰に到着となった。前回もアセビが増えたことに驚かされたが、そのアセビは更に増えたようで、展望はほとんど無くなっていた。但し大杉山と同様に休むには良い所で、落ち着いた雰囲気があった。それにしても夏の須留ヶ峰を登る人は少ないようで、ここまで誰に会うこともなく須留ヶ峰も静かな山頂だった。暫時の休憩を済ませると大杉山へと引き返した。その間に北のガス雲が広がっていたようで、大杉山に戻ってみると、北の風景はガスに閉ざされていた。いずれこちらにも広がってきそうに見えたので、すぐに下山に移った。下山は往路を引き返す。この下山では標高860m地点から始まった廃道をずっと歩いたのだが、最後はコンクリート舗装となって真新しい林道に合流した。やはり往路でこれではと思った作業道が宮本コースだったようである。後は谷筋の廃道には下りずに新しい林道をずっと歩いた。舗装林道とあって歩き易かったが、陽射しを受けることになった。それでも林道からは展望があり、御祓山を眺めながら歩けることになった。その林道を最後まで歩くと沢筋から離れて駐車地点からは遠くなってしまうので、途中で林道を離れて登山口に近づける尾根に入った。ヤブ尾根ではなかったので気楽に下って行けた。それでも最後は急斜面を下ることになり、慎重さを要した。尾根なりに下って下り着いた所は、登山口にごく近い作業道だった。もう駐車地点は目の前だった。この日の登山を終えて思ったことは、次に宮本コースを登るのなら沢の廃道は歩かず、新しい林道を車で進んで尾根の作業道が始まる位置から登山開始するのが良さそうだった。そこからなら大杉山まで1時間少々で登れそうなので、須留ヶ峰登山としては最短コースになりそうだった。
(2016/7記)(2020/4改訂)(2023/7写真改訂) |