TAJIHM の 兵庫の山めぐり <北但馬 
 
悪谷ノ頭   わるだにのあたま 1057.0m 香美町
若桜町(鳥取県)
 
1/2.5万地図 : 若桜
 
【2005年5月】 2005-33(TAJI&HM)
 
   因幡東林道より  2005 / 5

 兵庫と鳥取を分ける県境尾根は氷ノ山を頂点として1000m以上の壁を作っており、登高意欲をかきたてられる山が点在している。この県境尾根の三角点ピークならすぐに目指すところなのだが、氷ノ山と青ヶ丸の中間点にあるこの1057mピークは、遠方から見る限りでは単なる尾根の一ピークで、南隣のピークの方が1077mと高い。またこの尾根の西側には稜線から100mほどしか違わない所に、東因幡林道が通っている。これでは登山としてどうかと思われ、姫路から遠隔地となるこの山を目指す気持ちは、なかなか出てこなかった。ただこのピークの山名を「悪谷ノ頭」としている記事も見られ、少しは気になっていた。そして登るとなると、長い林道歩きを退屈せずにすみそうな5月の季節と考えていた。新緑の美しさに山菜も楽しめそうである。
 毎年5月になると、この山のことが頭をかすめていたが、漸く2005年に目指す気持ちとなり行動に移した。5月21日のことで、五月晴れの青い空が朝から気持ちの良いほど広がっていた。またこの日は風が無く、そのため波賀町では音水湖の湖面が波を立てることも無く、周囲の山並みを鏡のように写していた。目的地は鳥取県若桜の舂米集落。この日のように澄んだ青空の日は、そのまま氷ノ山を目指したくなるところだが、その登山口の前を通り過ぎて、国道482号線を先に進む。出来れば国道を東因幡林道の起点まで進みたかったが、国道は氷山命水の近くで閉ざされていた。近くにいた地元の人に聞くと、前年の台風18号による災害箇所が有ってのこととか。仕方なく進入禁止の手前に車を止めて、そこから歩き出すことにした。国道482号線は舗装路だったが、15分ほど歩いて着いた東因幡林道は土道だった。この林道は地図では中国自然歩道とされている。この道を歩くのは陣鉢山登山以来3年ぶりだったが、やや荒れ気味の雰囲気は変わっていなかった。前回は4月下旬ということで残雪が多く見られたが、5月の下旬ともなると新緑がまぶしいばかりだった。車の来るはずも無く、本当に静かな林道歩きだった。所々でがけ崩れがあってそれを避けて通るが、そこには細い轍が付いていた。どうやらオフロードバイクは通っているようだった。林道は緩いアップダウンで続いた。好天なだけにすぐに気温は上昇し、陽射しを受けていると初夏の暑さだった。そして木陰に入ると、すっと涼しくなった。概ね展望は無かったが、がけ崩れの所では木がなぎ倒されており素晴らしい展望が広がっていた。眼下に舂米集落、それを囲むように氷ノ山から三ノ丸、そして大段へと続く尾根が空を画する壁を作っていた。約1時間半歩いて漸く陣鉢山の東尾根に着いた。そこから先は初めての道となる。そこで地図を取り出して、現在地を掴みながら歩くことにした。一息入れて歩き始めたとき残雪を見た。一帯は1000mに満たない高さであり5月下旬にもなっていたので、残雪を見るのは意外だった。また幾つかの水たまりではカエルの卵が孵化しており、水がおたまじゃくしで真っ黒に見える所もあった。そこまで歩けば、路傍には取り残された山菜をちらほら見るようになった。ともかく地図を見ながら慎重に歩き、次のカーブを回れば悪谷ノ頭が見えるのではと思っていると、期待通りに林道の先にそのピークが姿を見せた。林道との標高差が少ないため、丸みを帯びたかわいらしい山にしか見えなかった。その左には扇ノ山に青ヶ丸と高峰が顔を覗かせていた。漸く間近まで来たようだった。少し道草をしたりしていたので、歩き始めて2時間と45分が経過していた。長い林道歩きだった。まずは山頂から見て少し南の尾根に出ることにした。その辺りは林道との標高差は60mほどしかなかった。取り付き点は木々が疎らな小さな沢沿いとした。始めは登り易かったが、登るほどに急坂になってきた。途中からはネマガリダケにしがみつくようにして這い登ることになった。それでも6,7分で尾根に出た。そこからは北へと尾根を辿るのだが、クマザサにネマガリダケ、灌木もあってなかなか進んでいけなかった。ただ数十メートル歩いたとき、尾根筋より少し西側に下った所にケモノ道が尾根に平行しているのを見た。はっきりとした道では無かったが、歩く分にはずっと楽になった。そのまま山頂へと近づき、やや急坂となってネマガリダケのジャングルに突っ込んだ。それも僅かな時間で、山頂そばで登山道に出会った。そして山頂へ。てっきりネマガリダケに囲まれた山頂と考えていたのだが、そこは狭いながらも切り開かれており、中央にぽつんと言った感じで三角点を見た。東の方向には展望もあって、なぜかほっとさせられる山頂だった。この日は鳥取側からアプローチしてきたわけだが、山頂に立ってそこから見えた風景は、まさに兵庫のものだった。間近に鉢伏山から高丸山の尾根、その左手には瀞川山、そして彼方には三川山から蘇武岳、妙見山と続く但馬の高峰が並んでいる。左手には青ヶ丸も山頂を覗かせていた。上空は青空が広がっており、そして青い山々。良い風景だと思った。ただそこに陽を遮る木々は無かったので、少し戻って樹林の中で休憩とした。一休みしたところで氷ノ山を見たくなり、ネマガリダケのヤブに突っ込んだ。南へ少し下ると天然杉が見えたので、取り付いてみた。そして3〜4メートルほど登ると、期待通りに氷ノ山が見えてきた。その右手には陣鉢山も見えていた。この山頂で憩ううちに、急速に上空に薄雲が広がり出した。ほぼ薄曇りの空に変わったのを見て下山とした。下山は山頂そばで出会った小径を辿ることにした。その道は登山だけに使われている風で、いわゆる切り開き道だった。ただ赤テープが的確に付いており、辿るのは楽だった。始めは尾根を北へと向かったが、尾根から下り出すと南西方向へ、そして西方向へと変わり、10分も歩けば林道に下り着いた。その取り付き点には赤テープが5つ付いていた。そこからは再び長い林道歩きである。帰路は道草もせず、ひたすら歩くことに徹した。陣鉢山の東肩まで1時間、そして更に1時間半ほど歩いて駐車地点に戻り着いた。悪谷ノ頭は登山としてはごく簡単だったが、山頂に立ったときは達成感があり、登って良かったと思える山頂だった。
(2005/5記)(2022/5写真改訂)
<登山日> 2005年5月21日 9:10スタート/9:26東因幡林道起点/10:40〜45陣鉢山の東肩/11:56取り付き地点/ 12:24〜13:24山頂/13:34林道着/14:31陣鉢山の東肩/15:52エンド。
(天気) スタート時の気温は15℃ほど。風は無く澄んだ空が広がっていた。視界も申し分なし。時間が経つほどに気温は上がり、陽射しの中では暑かった。ただ山頂の気温は陽射しの中では25℃あり。この天気が13時を回る頃に急速に変わって来た。どんどん薄雲が広がって、青空は淡くなった。そして林道へと下りて帰路についたときは、上空はすっかり薄雲に占められていた。気温は少し下がったようだった。視界は午前と違って薄モヤがかった見え方で、風景も平板に見えていた。
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国道29号線を北
上していると、音
水湖の湖面が鏡の
ようになって周囲
の風景を映してい


舂米集落に着いて
北に陣鉢山を眺め

東因幡林道の起点に着いたとき、東山の方向を眺めた 東因幡林道を歩き始めると辺りは新緑の盛りだった 新緑のブナを見上げる

(←)
林道からは展望の
広がることがあり
氷ノ山の尾根が望
めた

 (→)
  赤倉山と氷ノ山の
  並ぶ姿を大きく見
  る
林道歩きを続ける やがて陣鉢山が姿を現した 新緑の尾根を眺める
陣鉢山の肩を越すと扇ノ山の南西尾根が見えてきた 林道上の水たまりが黒い色になっていた 黒い所は総てオタマジャクシだった
北に扇ノ山を望めるようになった 長い林道歩きの末に、漸く悪谷ノ頭が見えて来た

悪谷の頭を正面に
見るようになった

林道から扇ノ山を
見る
取り付いてから30分で山頂に着いた 三等三角点(点名・諸鹿)を見る   山頂からは東に展望があって、但馬の高峰が広がっていた

右上の写真に写る
鉢伏山を大きく見


立つ位置を変える
と、青ヶ丸も望め

三川山を大きく見る 瀞川山を大きく見る 氷ノ山を見たくて南に下ると、陣鉢山が望めた
氷ノ山を見るには木に登る必要があった 3〜4mほど登って漸く氷ノ山にお目にかかれた 氷ノ山を少し大きく見る
下山は往路を戻った 北側から陣鉢山を眺めた また展望地で氷ノ山を見る すっかり曇り空だった 桑ヶ山を見る位置まで戻ってきた