TAJIHM の 兵庫の山めぐり <西播磨編
 
一山    ひとつやま 1064.6m 宍粟市
1/2.5万地図 : 音水湖
 
【2009年2月】 No.4 2009-28(TAJI)
 
    鳥ヶ乢につながる車道のそばより  2009 / 2

 雪の季節に白くなる山を考えたとき、播州ではこの一山がまず思い浮かんでくる。山頂は笹地が広がっているとあって、冬の季節にはそこがすっかり雪に隠されるので、その白さが周囲の山から目立っているのが一山だった。その一山を雪の季節は高野峠からしか登っていなかったので、一度、阿舎利集落側からも登ってみたいと考えていた。2009年に入って播州は雪の降る日が少なかったようで、2月に入っても後山や三室山を除くと、千メートル峰と言えども黒い姿だった。一山も山頂はまだらになっており、例年に見ない雪の少なさだった。その一山の姿を残念に見たのは2月15日に登った三室山の山頂からだった。それが次の週に入って急に冷え込み、播州北部は雪に見舞われたようだった。そこで一山も白くなっているのではと思ったとき、その週末に登ろうと決めた。天気予報では土曜日は朝のうちに天気は回復するとなっていたので、その土曜日に期待した。ところが土曜日が来てみると、朝の空はどんよりとしており、どうやら回復は遅れているようだった。日曜日はどうなのかと改めて天気予報を見ると、午前が晴れで午後からはまた天気は悪化するとなっていた。そこで日曜日の午前中に登ってしまおうと決めた。結局、土曜日は近くの赤穂の山で過ごしたが、翌日曜日に一山を登りたい希望をパートナーに伝えると、あっさり断られてしまった。連日登るほどヒマではないとのこと。それでも登りたい気持ちは変わらず、そこで前週の三室山に続いて単独で登ることにした。
 一宮町に入ると、一週間前には見られなかった雪を道そばに見るようになった。阿舎利集落への道に入ると、雪の量は増えてきた。但し除雪されていたので、走行に問題は無かった。と思ったところ、朝の冷え込みで路面の凍っている所があった。ブレーキをかけないように慎重に車を進めた。そして阿舎利山の登山口に着くと、その先の林道も除雪されていた。どこまで除雪されているのか分からなかったが、予定として阿舎利山登山口から林道をひたすら歩いて行くと決めていたので、すんなり阿舎利山登山口とある標識のそばに車を止めた。そしていざ歩き出してみると、思わず滑りそうになった。路面は濡れていたのだが、それがすっかり凍りついてつるつる状態になっていた。両ストックを使わないと、すぐに滑ってしまいそうだった。その林道を歩いて行くと、すぐに阿舎利集落の最奥の家並みが現れた。その家並みを見ながら林道を進むと、最奥の家のそばから始まる枝林道に標識が立っていた。一山登山口と書かれている。そのままずっと林道を歩くよりも登山コースを歩くに越したことはないので、その枝林道を進むことにした。思えば初めて一山を登った15年前も、林道を使わず谷沿いを登ったのだが、それが登山コースとなっているようだった。その登山コースは最初からすっぽりと雪に覆われていた。雪の量としては20センチほどだったが、ツボ足で歩くよりはスノーシューの方が楽ではと思えて、すぐにスノーシューを履くことにした。その登山コースと言うか枝林道に入ってもその先にまだ別荘風の家があり、そこまでが支林道の範囲だった。その先からは登山道となるも、すっかり雪に覆われていた。普通ならどこを歩いて行くか考えることになるのだが、助かることに分かり易い標識が付いていた。また適確に赤テープもあり、それを目印に進めるのは、気分的にずいぶん楽だった。雪は多くなったと言っても30センチ程度ではと思えたが、新雪だけにスノーシューは一歩一歩で10センチは潜っていた。やはりツボ足では厳しいようだった。上り坂となったが、そのまま尾根を登ることは無く暫くは沢沿いを歩いた。周囲は植林の風景だったが、雪がその単調な景色を少しは風情のあるものに見せていた。沢を横切る所でも目印はしっかりありその先もずっと目印は続いたので、とにかく歩くことに集中した。漸く尾根を登るようになると雑木も見られるようになり、周囲が少し明るくなってきた。上空を見ると、青空なのだがはや淡い色に変わろうとしていた。午前中は澄んだ空が続くものと思っていたのだが、天気の変わりが早まっているようだった。登るうちに北に展望が現れて、阿舎利山の堂々とした姿が眺められた。その上空はもう薄雲が広がろうとしていた。その辺りからまた植林の尾根となったので、やはり一山は樹木に関しては面白みは少ないようだった。その尾根道が途中で途切れた。そこが林道の終点位置だった。当初の考えではそこまで歩くことにしていたのだが、やはり登山道を歩く方が楽しいので、登山道のあることは有り難いことだった。その先はまた尾根を歩くことになり、従来からの登山コースに入ったことになった。その尾根も植林地で、早く抜け出したい思いで登って行った。その植林帯を抜けるとその先はすっかり白い斜面だった。漸く一山らしい風景となった。そこをすたすたと行きたかったが、新しい雪でありまた雪の量は少ないため、ササの上にふんわりとしか積もっていない所ではスノーシューでも大きく潜ることがあった。出来るだけ雪の多そうな所を選んで登って行った。上空はすっかり薄雲が広がっており、また植林帯を抜けたことで北西の風を受けることになった。その冷たい風を受けながら、スノーシューのヒールリフター機能を使って急斜面を登った。前方に広がる雪面にはたくさんの小動物の足跡が付いていた。なぜかほとんどがウサギの足跡のようだった。漸く山頂かと平坦に見えた所に着くと、その先でもう一段登ることになった。そして駐車地点から1時間半での山頂到着となった。雪山を登山口からこの時間で登れるようでは、一山は東山と並んで兵庫の冬山としては入門コースと言えそうだった。その山頂は雪ですっかり白かったが、雪の量は少ないようで、多くても30センチどではと思われた。また暖かい日が続けば、すぐに消えてしまいそうだった。それでもその白い風景を前景に大展望を楽しめることになった。上空はまた薄晴れ程度になっており、ほの明るい山頂からの視界は悪くなかった。北の氷ノ山はこの一週間でまた一段と白くなっていた。西の三室山には雨雲がかかろうとしていた。そして東は須留ヶ峰から暁晴山までの尾根が広がっていた。この大展望に出会えるのが一山の楽しみだが、白い中での眺めは格別だった。山頂ではあまり動き回ることはせず、軽い食事をとりながら30分ばかりを静かに過ごした。その間に上空はまた暗くなり、西の空ははっきりと雨雲に隠され出した。雨の来ぬうちにと、下山を開始した。下山は氷ノ山を眺めながらだった。始めは山頂に雨雲が近づいていると見ていたのだが、数分と経たないうちに山頂は雲に包まれてしまった。後は下山に集中することにした。雪山の下山はいつものことながら速かった。自分で押さえた雪の上を歩くとあって、どんどん下って行くと、1時間とかからず下りてしまった。まだ昼には30分ほど時間があり、そのあっけなさに、一山は半日で楽しめる雪山ではと思ってしまった。空はすっかり曇り空になっており、いつ雨が降ってもおかしくなかった。昼前でこの空になるようでは、短い時間で山頂に立てたことに感謝すべきではと思い直した。そして山頂での展望を思い出しながら帰路についた。
(2009/2記)(2021/11改訂)
<登山日> 2009年2月22日 8:36阿舎利山登山口スタート/8:40一山登山口/8:50登山道に入る/9:33〜35林道終点/10:06〜32山頂/10:54〜58林道終点/11:10沢を渡る/11:26一山登山口/11:30エンド。
(天気) 朝の空はまずまず晴れていた。ただその色は薄かった。登るほどに空の青さは更に薄くなって、薄晴れになる。西の空には雨雲が見え、それが足早に近づいていた。山頂に立ったときは上空はまだ薄晴れから薄曇り程度で、東の空には青空も見られたが、次第に曇り空に変わってきた。山頂では少し冷たさのある北西風を受ける。気温は3〜4℃。視界は西の方向を除いて悪くは無かった。下山を終えたときは今にも雨が降りそうな暗い空になっていた。
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阿舎利林道はすっかり凍っていた 集落の外れに一山登山口の標柱があった 登山コースは最初から雪に包まれていた
登山道は雪の下だったが的確な標識があった 登山コースには赤テープが続いていた 鹿の足跡が暫く続いた
登山コースは沢沿いを通るようになった 周囲は植林の風景で倒木も目立った 沢を渡る地点に標識を見た

 尾根歩きとなって
 木立の切れる所が
 現れた

   左の写真の位置か
   らは北に向かって
   展望が開けていた
尾根の途中で林道終点に出会う 尾根歩きを続ける 植林の多い風景だった 標識がよく付けられていた
二羽のウサギが並んで歩いたようだった 山頂が近づいて雪原の広がる風景となった 山頂に着く 白くなっていたが雪は少なかった
山頂に立って北西から北、北東へと広がる山並みを見る 上空は曇り空になっていた

 氷ノ山を大きく見
 る

   更に氷ノ山の山頂
   を拡大して見る
赤谷山を大きく見る 三久安山を大きく見る 藤無山を大きく見る
山頂より東の方向を見る 左の写真の千町ヶ峰から北の山並みを大きく見る
山頂より西の方向を見る 左の写真の三室山から北の山並みを見る
暁晴山を大きく見る 山頂から南には木立を通して東山を見る 少し西に下った位置より山頂を振り返った
雨雲が後山の上空に広がろうとしていた 下山を始めたときは空はすっかり暗かった 氷ノ山が雲に包まれようとしていた
下山は自分の踏み跡を辿るだけだった 自分の蹴散らす雪が渦巻きを作っていく 林道終点位置から東に須留ヶ峰を望む