紅葉の山の探し方として確実なのは、一つの山に登ったときに、その山から眺めて色付きの良さそうな山に次ぎに向かうとする方法があるが、2011年の紅葉の季節は、まず11月3日の文化の日に笠ヶ城山を登ったのだが、10月に暖かい日が続いたためか、モミジ谷はほとんど紅葉していなかった。少し拍子抜けする思いで笠ヶ城山の山頂に立ったところ、そこから見えた一山がまずまずの色付きをしていた。そこで一山を登ってみようと思い付いたものである。
向かったのは9日後の土曜日で、朝から快晴の空が広がっていた。紅葉見物には絶好の日と言えそうだった。一山に登るには幾つかコースがあるが、色付いていたのは南の斜面のため、国道429号線の高野峠から歩き始めるコースを選んだ。その高野峠に着くと、伐採作業のために何台もの車が止まっていたが、峠は広いため、車を止める場所には困らなかった。峠の地蔵さんに挨拶して登り始める。始めに植林地を登り出すが、すぐに伐採地が右手に広がった。その伐採地を囲むようにネットが尾根沿いに張られており、そのネット沿いを登って行く。すっかり展望が良くなっており、東の方向だけで無く、振り返ると東山がすっきりと眺められた。尾根の東側は伐採地だったが、西側が自然林になっており、紅葉はと見ると、もう半分ほどは散っているようで、残った紅葉もあまりきれいとは言えなかった。緑から黄色となっておらず、緑からいきなり茶色になっている木が多いようだった。10月に暖かい日が続いたことで、きれいな紅葉にはならなかったようである。それでも探せば色付きの良い木もちらほら見られた。ネットが尾根から離れて東に続き出すと、尾根歩きを続けるべくネットを離れた。また植林地を登るようになり、小さなピークに着いた。そこには四等三角点(点名・馬見塚)が置かれていた。その先で尾根の向きは北東方向となり、鞍部へと下った。その鞍部の辺りから周囲に自然林が広がり出した。ここも半分は落葉しており、また紅葉も茶枯れたような色が多く見られたが、ここはカエデの木が多いのか、けっこう赤い色が目に付いた。その赤も鮮やかさがあって、良い感じの紅葉だった。足下には落ち葉が積もっており、サクサクと音をたてながら紅葉の森を歩いた。その自然林の中で濃い緑を見せるのがアセビで、ここもクマザサに替わってアセビが増え出そうとしていた。クマザサがごく疎らになったことで、以前よりもずっと歩き易くなって気楽な感じで登って行く。自然林を抜けると、もう山頂は間近だった。その辺りは伐採の跡地で、今度はススキが広がっていた。それを横目に山頂に着く。空は快晴で、雲はほとんど無く、そして澄んだ視界が広がっている。まさに登山日和だったが、山頂は他に人はおらず、パートナーと二人で過ごすことになった。山頂は展望に関しては文句無く素晴らしい所なので、まずは展望を楽しんだ。この季節は色付いた自然林と、緑濃い人工林がはっきり区別出来るので、どこが紅葉の尾根かがよく分かった。特に紅葉が鮮やかに見えたのは三久安山で、山頂一帯が黄と赤に染まっていた対照的に阿舎利山はほとんど緑色だった。山頂では早めの昼食を済ませると、少しばかり昼寝も楽しんで、好天の一山を満喫した。この日は紅葉を楽しむのが目的なので、一時間ばかり山頂で過ごした後は、往路コースをすんなり引き返して、再び自然林の森を楽しんだ。一週間前は雨の赤谷山で紅葉を楽しんだのだが、澄んだ青空の下で見るカエデの鮮やかさはやはりきれいだった。自然林が終わって植林地へと入ったとき、振り返ると一山の上空は雲が広がろうとしていた。どうやら曇り空になるように見えたので、晴れているうちに紅葉を楽しめたようだった。紅葉を愛でるだけが目的なら寺社の森の方が手入れが良いだけに洗練された紅葉を楽しめるが、こうして山の空気をいっぱい吸いながら自然林の不揃いな紅葉を味わう方がずっと楽しいと思いながら、登山口へと下りて行った。
(2011/12記)(2021/7改訂) |