兵庫の千メートル峰で易しく登れる山の一つに生野高原の杉山があるが、杉山だけでは物足りないので笠杉山や段ヶ峰と組み合わせて登られることが多いように思われる。その杉山を単に易しく登れるとの理由で向かったのは2018年9月の秋分の日だった。夏頃からずっと右膝痛が続いており、痛みを和らげるには膝を休めるのが一番なのだが、この日もなっぜか標高のある山を登りたくなった。そうなると易しく登れる山を選ぶことになり、それに叶ったのが杉山だった。杉山は宍粟50名山に選ばれてガイドブックに紹介されているので、その紹介コースで歩いてみることにした。
この日は晴れの天気が予想されていたが、それは播州南部だけのようで、宍粟市を北へと向かうにつれて雲が増え、一宮町の空はすっかり曇り空だった。上千町集落に入り千町林道を走るまでは良かったが、登山口の様子はガイドブックとは違っていた。少し辺りを走って分かったことは森林基幹道「千町段ヶ峰線」が出来きたことによりコース形態が変わっていたことだった。ただ登山コースは短縮される形になっていたので、千町段ヶ峰林道を走って、どうどう橋の手前から歩き出すことにした。そこで車は橋の近くに出来ていた真新しいバイオトイレの近くに止めて、そこを起点に歩き始めた。林道をどうどう橋に向かって歩くと、すぐに作業道が右手に分かれた。その作業道に入らず通り過ぎると、どうどう橋の前に出た。その手前に杉山、段ヶ峰の小さな登山口標識を見た。そこより少しヤブっぽい小径が始まっており、その小径に入ると程なく宍粟50名山の登山口標柱が現れた。そこには先ほど見た作業道が来ていたので、作業道を歩いても良かったようだった。そこからは遊歩道と呼べそうな易しい登山道が始まっていた。すぐに現れたのは「くじら石」だが、似たような岩を他にも幾つか見た。また樹林の中に展望台が作られていたので訝しく思ったが、展望台は岩塊流を見るためのものだった。登山道はその先で二手に分かれたので、左手のコースに入った。その登山道が尾根に近づくと少し不確かになってきたが、目印を追うと無理なく尾根筋に出た。そこより北に向かえば笠杉山で南の方向が杉山、段ヶ峰だった。当然南へと向かって行く。尾根はごく緩やかで、自然林の中を良い雰囲気で歩けた。その自然林に次第にアセビが茂り出した。本来なら歩き難くなるはずだったが、登山道はそのアセビ帯の中を通っており、アセビにひっかかることもなく歩けた。そのアセビが少し疎らになって岩が点在する風景と調和がとれた所があり、山上庭園の名が付いていた。その先で小さなピークに付いた。ピークと言うよりも丘だった。そこは山頂とほぼ同じ高さがあり、地図では1088mの標高点が付いていた。山頂は次のピークで少し先に見えていた。山頂もごく緩やかな丘の姿だった。1088mピークには高い木は無いとあってそこは展望地になっており、段ヶ峰だけでなく、北東には粟鹿山も望めた。そこより緩やかに下って緩やかに登り返すと、先ほどのピークから10分で山頂到着となった。そこは更に樹木が少なく、いっそうの好展望地だった。段ヶ峰の方向以外にも西には三室山、北には氷ノ山も望めた。但し氷ノ山は山頂部を雲に包まれていた。曇り空のためか気温は22℃と低めで、風は肌寒さを感じるほど涼しかった。そこで山名標柱のそばでポツンと立っていたアセビの陰で休憩とした。涼し過ぎる山頂だったが、それでも一時間ほど休憩した後に下山に移った。下山はガイドブックに示されていた1088mピークの近くから真っ直ぐ西にに向かう登山道を下ることにした。そこで標識に注意しながら引き返したのだが、標識は見えず山上庭園まで来てしまった。そこで往路のままに下山することにしたのだが、アセビ帯が終わって樹林に入ったとき、千町小屋を示す標識を見たのでそちらのコースに入った。そのコースはくじら石近くでで分岐したもう一つの登山道で、同じく遊歩道状になっており、楽々と下って行けた。そして往路コースと合流しクジラ石のそばを通ると、もう登山口が見えてきた。この下山は一時間もかかかっていなかったので、予定通りごく軽い登山として杉山を楽しめたようだった。
(2018/11記) |